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ミレニアル世代が不朽のアラビア文学の再発見へと招待される

この本は、イスラム教出現以前に作られた、アラビアの古詩の傑作を代表する不朽
この本は、イスラム教出現以前に作られた、アラビアの古詩の傑作を代表する不朽
この本は、イスラム教出現以前に作られた、アラビアの古詩の傑作を代表する不朽
この本は、イスラム教出現以前に作られた、アラビアの古詩の傑作を代表する不朽
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13 Mar 2021 01:03:49 GMT9
13 Mar 2021 01:03:49 GMT9
  • この本は、これらの古詩の人的・美的・哲学的価値について新世代を教育することを目的としている

ジッダ:アラブ・イスラムの歴史において、多くの芸術家や詩人が不朽の名作を作ってきた。

他の文学と同様、アラビア語の著作は虚空から生まれたのではない。詩を使って記録された、人間としての経験、感情、知識、世界観の集大成だ。

詩は、アラブ人の間で名高い地位を誇っており、その価値は、時代を言葉で描写する記録資料の役割を超えている。詩の保存は若い世代に対する義務であり、その役割はアブドゥルアジーズ王世界文化センター(Ithra)が引き受けた。

Ithraは最近、サウジアラムコの雑誌Al-Qafilahと共同で、『ミレニアル世代のためのムアッラカート』を出版する1年がかりのプロジェクトを完了した。この本は、イスラム教出現以前に作られた、アラビアの古詩の傑作を代表する不朽のオード10編を、アラビア語・英語圏の読者に紹介する。

この本では、詩と、詩の文学史が解釈され、詩人の人生と作品がアラビア語と英語で紹介されいる。サウジアラビアと外国の学者、アラビア文学・詩・翻訳の専門家9人から成るチームが協力して作ったものだ。

「文学の衰退は国の衰退を示している」と、ドイツの詩人・批評家ゲーテは言った。アラブ・イスラム文明の言語・文学の基礎として、コーランと同様に、アラブ人がムアッラカートを忘れることは、英国人がシェークスピアを捨てることに似ている。

プロジェクトマネージャーでAl-Qafilah編集長のBander Al-Harbi氏は、「我々の望みは、この本によって、全人類に共通する特質を描写するアラビア文学の基礎の始まりを示すことだ。このプロジェクトの目的は、シェイクスピアやホメロスの作品と同じスケールで影響力のある文学作品を、全ての人が楽しめる現代的な方法で紹介することだ」とアラブニュースに語った。

1500年前に書かれた詩は、アラビア文学と世界文学の傑作とされており、過去数世紀にわたり、多くの本や翻訳によって研究されてきた。しかし、このプロジェクトが他と違うのは、これらの古詩の人的・美的・哲学的価値について新世代を教育し、現代の読者がアクセスしやすい方法で、それらの意味や主題に関する知識を共有するという目的がある所だ。

500ページに及ぶこの本は昨年、「国連アラビア語デー」である12月18日に出版された。COVID-19による困難にもかかわらず、国際的学者らがこのプロジェクトに参加した。

「我々が作った本は、文化や言語の違いに関係なく、新世代にアラビア語詩を新たに紹介することを目的としている。これらの不朽のテクストに書かれた、人類の教訓と芸術的な独創性は、言語芸術を楽しむ全ての人にとって魅力的だ」と、このプロジェクトで内容と国際コミュニケーションの監督・査読を担当したHatem Al-Zahrani博士は話した。

ムアッラカートを書いたのは、天下を失った父の復讐のためにアラブの地を旅し、詩も書いた、6世紀の詩人で戦士でもあった、「放浪王」として知られるイムルー・アルカイスをはじめとする、イスラム教出現以前の優れた作家たちだ。

アルカイスは、彼の後に続いた詩人が従った多くの決まり事やテーマを確立したため、アラビア語詩の父と言われている。野営地の跡を訪れて最愛の人をしのぶ人物を描写する場面の行から作者が書き始める「荒廃の詩」の創始者だ 。

他の有名な詩人には、享楽的なタラファ、哲学的なズハイル、黒装束の騎士でロマンチックな英雄であるアンタラ、100歳のラビード、悲嘆に暮れた騎士アムル・イブン・クルトゥムがいる。

Al-Zahrani氏は米国のさまざまな学術機関で10年間過ごした後、世代や専門の異なる学生が心から関心があるのは、詩を含む独創的なアラビア文学の全文献だという結論に至った。

同氏は、アラビア語詩に関して2カ国語で書かれた本が必要なのは、一般の読者だけではないと考えている。特に必要なのは、最も重要な詩を英語訳で楽しむだけでなく、アラビア語の学習にも熱心な、アラブ・イスラム学を専攻する学生だ。

過去の取り組みでは10編のオードの全ては入っていなかったが、この新訳では、初めに全て入っている。「この本はまた、10編の『保留されたオード』を、完全に母音符を付けた校正版で紹介しており、英語の部分と同じ量の、アラビア語で書かれた新たな注釈と前書きがある。この本は、アラビア語と英語、東洋と西洋の市民文化的対話を紙の上で体現している」とAl-Zahrani氏は話した。

彼はムアッラカートの多言語翻訳の需要が高まっていることを強調した。最近の作品の一つは、2020年に出版された、Mehmet Hakkı Sucinによるトルコ語訳だ。

「非アラビア語話者にとって、ムアッラカートの魅力の一つは、その背後にある伝説だ。イムルー・アルカイスによる、父が殺されたことに対する復讐の追求や、アムル・イブン・クルトゥムとハーリス・イブン・ヒッリザの仲裁条約だ」と、ブリガムヤング大学アラビア文学科助教授で、このプロジェクトに貢献しているKevin Blankinship博士は話した。

Blankinship氏は続けて次のように述べた。「詩が非アラビア語話者を引きつけるもう一つの理由は、時間と文化の距離だ。アラビア語詩の舞台は、恋愛や陰謀、殺人は言うまでもなく、戦争や苦難が日常生活の一部となっている砂漠の社会だ。ギリシャ悲劇の劇的緊張があり、魅力の一つとなっている」

Blankinship博士は10編のオードのうち、アンタラ・イブン・シャダード、ズハイル、アムル・イブン・クルトゥム、ハーリス・イブン・ヒッリザの4編を翻訳した。同氏はこの本の他の部分の編集に関しても意見を述べた。

「アラビア語を母語としない、アラビア古典文学の専門家として、アラブの文化遺産を、より多くの英語話者や、ムアッラカートを全て読んでいないかもしれない一部のアラブ人にも届ける機会を持った」と彼は話した。「このプロジェクトが重要なのは、ムアッラカートは、その豊かさが1世代より長く続く作品についての熟考を続けるよう誘い、何度も再考する必要があるからだ」

一般の読者がテクストを読めるようにするために、Blankinship氏は翻訳において、専門家に話すときに使う言葉よりも柔らかい言葉を使うというアプローチを取った。

「英語を音やリズムのレベルでアピールしたいとも思っていたので、韻律と押韻を大まかなものにした。これらの詩を楽しいものにしているものの一つは細部なので、可能な限り鮮明に描こうとした」と同氏は述べた。

このプロジェクトはアラビア文学を、古代アラブ人を単なる砂漠・戦争文化の一部として描く、東洋学者の固定観念から守るためのものだと、Ithraの館長であるTariq Khawaji氏はアラブニュースに説明した。

「アラブ人には、世界に関する具体的な考え・哲学・ビジョンがないかのように思われている」とKhawaji氏は述べた。「ムアッラカートは、こうした固定観念が全て真実ではないという証拠であり、人生、存在、勇気、恐怖、感情に関する哲学的問題を含む、人間の思考の構成要素を全て見つけることができる。全てそこにある」

Al-Zahrani氏は、アラビア文化の洗練を守り、「西側諸国で広まっている、アラブ人やアラブ文化、特にアラビア半島に関する、偏見に基づく誤解を解く」必要性についてKhawaji氏に同意した。

「東洋と西洋がより洗練された対話をするには、双方の文化の相互理解を深める必要がある。我々ムアッラカート・チームは、このプロジェクトがその努力に貢献できことを願っている」とAl-Zahrani氏は語った。

「このプロジェクトは、アラビア語のビジュアル・音楽・文字コンテンツをさまざまな分野で充実させようとするIthraによる、より幅広いイニシアチブの一部だ」とKhawaji氏は話した。

同氏は、アラビア文学を振興する、より多くのプロジェクトが現在進行中だと補足した。この本の公式PDF版は1月に一般公開されており、以下のURLで入手できる。 https://www.ithra.com/files/6516/1042/9658/compressed.pdf

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