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パンデミックが起こった今、資本主義は再考を要する

5月にニューヨーク、マンハッタンの金融街ウォール街にあるニューヨーク証券取引所前に設置された、PPEマスクを付けたクリステン・ビスバルによるブロンズ彫刻「恐れを知らない少女」。(AFP/資料写真)
5月にニューヨーク、マンハッタンの金融街ウォール街にあるニューヨーク証券取引所前に設置された、PPEマスクを付けたクリステン・ビスバルによるブロンズ彫刻「恐れを知らない少女」。(AFP/資料写真)
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19 Oct 2020 09:10:05 GMT9
19 Oct 2020 09:10:05 GMT9

第2次世界大戦終結以来、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ほど世界に多大な影響を与えた出来事はなかった。今回のパンデミックは、数世代見られない規模の公衆衛生と経済の危機を引き起こし、不平等や大国の姿勢といったシステムの問題を悪化させた。

このような危機に対する唯一の容認できる対応は、我々の経済・政治・社会の「グレート・リセット」を推し進めることだ。実際、パンデミック以前のシステムの、批判の的にしてはならなかったものを再評価する時であり、長年持ち続けてきた価値を守る時でもある。我々が直面している課題は、過去75年間の成果をより持続可能な形で維持することだ。

第2次世界大戦後の数十年で、世界は、貧困の撲滅や子供の死亡率の低下、平均寿命の延長、識字率の向上などに向けて、これまでにない進歩を遂げた。

これらの戦後における改善および他の多くの人類の進歩の施策を推進した国際協力や国際貿易は今日、維持されなければならず、その功績に対する新たな懐疑論から守られなければならない。

同時に、世界は、パンデミック前の時代の決定的な問題、すなわち第4次産業革命や数え切れないほどの経済活動のデジタル化にも焦点を合わせたままでいなければならない。最近の技術の進歩により、ワクチンや新しい治療法、個人用保護具などの急速な開発などを通し、我々が現在抱える危機に立ち向かうために必要な手段を我々は獲得した。我々は、研究開発、教育、イノベーションへの投資を継続すると同時に、技術を悪用する者への対策を講じる必要がある。

新しいタイプの資本主義に対する根本的なニーズと、ますます広まる需要の両方がある。

クラウス・シュワブ

しかし、グローバルな経済システムの他の時代遅れなアイデアは、先入観を持たずに再評価する必要がある。その主なものは、新自由主義的なイデオロギーだ。自由市場原理主義は労働者の権利と経済の安定をむしばみ、底辺へと向かう規制緩和の競争と破滅的な税競争を引き起こし、大規模な新たな世界的独占が起こることを可能にした。

数十年にわたる新自由主義の影響を反映する貿易・課税・競争のルールは今、見直さなければならない。さもなければ、既に動き出しているイデオロギーの振り子が、完全な保護主義やその他の双方が共に損をする経済戦略に戻る可能性がある。

具体的にいえば、我々が知っているような「資本主義」への集団的なコミットメントを再考する必要があるだろう。当然、我々は成長の基本エンジンを捨ててはならない。過去の社会的発展のほとんどは、起業家精神と、リスクを取って革新的で新しいビジネスモデルを追求することによって富を生み出す能力のおかげだ。特に気候変動のような問題に取り組むとなると、資源を配分し、財やサービスを効率的に生産する市場が必要だ。

しかし、金融資本、環境資本、社会資本、人的資本のいずれであろうと、それが何度も繰り返されるときに「資本」が何を意味するか再考しなければならない。今日の消費者は、手頃な価格で物やサービスの量が増えたり質が高まったりすることを求めていない。むしろ、企業が社会福祉や公益に貢献することをますます期待している。新しいタイプの資本主義に対する根本的なニーズと、ますます広まる需要の両方がある。

資本主義を再考するには、企業の役割を再考する必要がある。新自由主義の初期の主唱者でノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンは、(カルビン・クーリッジ元米大統領の言葉を引用し)「ビジネスの本分はビジネスである」と考えていた。だが、フリードマンが株主第一主義を主唱したとき、株式公開企業が単なる営利主体ではなく社会有機体でもあるとは考えていなかった。

さらに、コロナ危機により、長期的な活力を高めるのに投資した企業は、危機をうまく切り抜けるための準備がより備っていることが分かった。実際、今回のパンデミックにより、コーポレート・キャピタリズムのステークホルダー・モデルへの移行は加速している。これは、米国のビジネス・ラウンドテーブルが昨年このコンセプトを取り入れたことを受けたものだ。

しかし、社会や環境に配慮したビジネス慣行を続けるためには、企業はより明確なガイドラインが必要だ。このニーズに応えるために、世界経済フォーラムの国際ビジネス評議会は一連の「ステークホルダー・キャピタリズム・メトリクス」を開発し、企業が価値とリスクを評価する際に共通の理解を持たせるようにした。

コロナ危機が我々に何かを示したとすれば、それは、政府、企業、あるいは市民社会団体が単独で行動しても、グローバルなシステムの課題には対処できないということだ。我々は、これらの領域を分離させている垣根を取り払い、官民協力のための制度的基盤を構築し始める必要がある。

同様に重要なのは、それは本質的に遠い将来に関するものなので、若い世代がこのプロセスに関わらなければならないということだ。

最後に、あらゆるレベルの市民の間で背景・意見・価値観の多様性を受け入れる取り組みを拡大する必要がある。我々はそれぞれ、自身のアイデンティティを持っているが、我々は皆、共通の利害と絡み合う運命を持つ地域社会、専門家コミュニティ、国民共同体、さらには国際社会に属している。

グレート・リセットは、取り残された人々が声を上げられるようにし、未来を「共に形作る」ことを望む全ての人がそうできるようにするべきだ。我々が必要としているリセットは、革命や新しいイデオロギーへの移行ではない。むしろ、より回復力があり、より団結力があり、より持続可能な世界に向けた現実的な一歩だとみなされるべきだ。グローバル・システムの中心となっているもののいくつかは取り替えられ、他のものは直されたり強化されたりする必要があるだろう。共に進展を遂げるために、繁栄と健康は、それ以上、もしくはそれ以下の何も必要としない。

  • クラウス・シュワブは、世界経済フォーラムの創設者で会長。©Project Syndicate
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