



ドバイ:ドバイを拠点とする教育技術のスタートアップ企業が、サウジアラビアの研究者達向けにデジタル図書館を立ち上げた。中東と北アフリカ(MENA)では、こういった学術文献を扱いサブスクリプションを基本とする初の図書館である。
学術文献は大抵、高額な有料コンテンツの壁に隠されている、もしくは大きな組織に所属している者以外には閲覧が制限されている。Knowledge Eにより開発されたZendyでは、利用者達に世界中の学術研究作品への手頃なアクセス手段を提供している。
王国のサウジビジョン2030の開発目標と、研究や革新、起業家精神の文化を育むその取り組みと歩調を揃え、Zendyは学生、専門家、愛好家達に向けて何千もの記事や電子書籍、学術資料へのアクセス手段を提供する。
Zendyではオンラインで学術書を入手するという、しばしば面倒な過程を合理化する狙いだ。(AFP通信)
「Zendyはこの地域のあらゆる人々が利用可能な巨大なオンライン図書館です、」とKnowledge Eの創立者でCEOのKamran Kardan氏がアラブニュースに語った。
「学術的なコンテンツや本、専門誌、そしてそれに関連する文献を手にする手段の現状に目を向けると、これが非常に面倒なのです」と彼は言った。
「より大きな団体や大学であったり、保健省のような組織か、または実際そのコンテンツの利用が賄える場所の一員である必要があります。そして全ての団体が世の中に複数存在する出版社全ての利用分を賄えるわけではありません」
Zendyの目的は、個々人が世界最新の研究や文献に手頃な費用でアクセスできるようにすることで、学術的発見への障壁を打ち砕く事である。これは音楽とテレビ消費の進化から着想を得た。
「アイデアそのものはネットフリックスやアイチューンズ等といった、エンターテインメントや音楽業界に発生している事から来ていて、それを学術的なコンテンツに適用することで、手頃な価格にしたのです、」とKardan氏は述べた。「なので全体的な考えとしては、月額か年額のサブスクリプションで全てのコンテンツを開放して手が届く価格にすることでした」
イギリスにあるオックスフォード大学出版局で出版業の経験を持つKardan氏は、自由なアクセスの推進と、さまざまな事業体制を通じて高等教育機関が新たな研究戦略の発見ができるよう支援する事を使命として掲げた。地域全体の大学や企業、コンソーシアム間での学術的なアクセスを推進する為、彼は15年前にドバイへ移った。
「2006年に移ってきた頃は印刷から電子化への転換期の始まりでした、」と彼は言った。「当時図書館の大部分は棚一杯の本や雑誌で、何かを探している研究者を想像してみればわかりますが、手に入る様々な資料のインデックスを全て調べ尽くすのは、大変な労力でした」
「実際探している関連情報を全て見つけるというのは、それそのものが課題でした」
Knowledge Eの創立者でCEOのKamran Kardan氏。(提供)
その後の数年間、全国レベルで学術的コンテンツへのアクセスを提供するべく、Kardan氏はヨルダン、サウジアラビア、エジプトのコンソーシアムと手を組んだ。「多くの大学は当時それほどコンテンツへのアクセスができていませんでした、」と彼は語った。
「クウェートのとある大学で、一流出版社の一つが手掛けた専門誌の最も完璧なコレクションの一つを入手し、その全てをオンラインへ移行させる転換作業を経験したのを思い出します。地域に対してより多くのデジタル図書館を提供するというのが当時の目的でした。」
デジタルインフラ自体の進化だけでなく、多くの人々が紙形式の本を単にその質感や匂いという美学を含む様々な理由で好み続けることで、出版業は歩みの遅い文化的変化の主要因とならざるを得なかった。
現状Zendyのコンテンツの大半は英語のみで提供されているが、近い将来の言語の多様化を目的に、一部はフランス語やその他の言語でも提供されている。
「一人一人が指先に総合的なオンライン図書館を持つという考え方です、」とKardan氏は言った。「金銭的な余裕が無い事はもう問題にはなりません、どこに居ても、大きな団体の一員ではなかったとしてもです。私達が対象とするのは団体ではなく個人です」
Zendyではオンラインで学術書を入手するという、しばしば面倒な過程を合理化させる狙いだ。(AFP通信)
2019年にヨルダンで発表された後、Zendyはアラブ首長国連邦、アルジェリア、モロッコ、チュニジア、バーレーンに広まり、今月からはサウジアラビアでも利用できるようになる。オンライン図書館はこれまでアラブ地域全体で何千という利用者達を着々と獲得してきており、30,000点以上の専門誌と30,000点以上の電子書籍を含む120,000点以上の出版物が掲載されている。
Zendyではユーザーが検索を保存したり、引用をエクスポートしたり、資料の種類、主題、出版物の題名、言語などによって簡単に操作することもできる。
Kardan氏は「検索して記事を見つけ、PDFをダウンロードして何度でも使いたいだけ使う事ができます、」と述べた。
「私達は更に出版社を増やしたいと考えており、これはまだ成長を続けている物です。世界中の出版社の中でも上位5位の内3社を所有しており、想像できると思いますが、様々な組織と既存のビジネスモデルがある出版社にとって、全てに個人がアクセスできるように移行するというのは難しい事なのです」
「故に出版社にとっても素晴らしい一歩なので、私達はこの障壁を壊したいと考えています」
コンテンツにアクセスする為には、利用者は月間もしくは年間でのサブスクリプションを選択する前に無料お試し期間に登録する。Zendyのビジネスモデルは使用状況に基づいた出版社との収益分配に基づいている。 そしてKardan氏の理想通り、一部のコンテンツは全員に無償で提供され続ける。
「無料コンテンツの一部は、数か月以内に世界中でオープンアクセス形式にて利用できるようになります、」と彼は述べた。「なので無料のコンテンツで満足な方はそのまま内容を持って帰っていただけますし、更にプレミアムコンテンツにアクセスするには、利用者たちは現在利用可能となっているZendy Plusに登録する必要があります」
Zendyではオンラインで学術書を入手するという、しばしば面倒な過程を合理化させる狙いだ。(AFP通信)
Kardan氏はZendyがMENA地域の国々に大きな影響を与え、多様な知識ベースの社会と経済の構築に一役買う事を望んでいる。誰でも利用できるよう、情報に簡単にアクセスできる手段を提供する事が、この目標を達成する方法の1つであると彼は確信しているのだ。
「私達はその構築に携わる他の方法として、学界でのワークショップの実施により能力を向上させるという立ち位置からも関わっています、」と彼は語った。「どれだけ自分が小さくても、変化を生み出すことはできます。会社として何をするにしてもその変化と影響を生み出そうと心がけますし、Zendyはそういった世界的な影響をもたらすことができる可能性を秘めていると考えています」
サウジアラビアではまだ導入の初期段階ではあるが、利用登録者には起業家や医師や看護師といった医療従事者達も含まれている。Kardan氏の目標はプラットフォームを世界的な運営規模まで拡大し、世界中のより多くの人々がコンテンツに簡単にアクセスできるようにする事だ。
今後は動画や本の要約、雑誌等を掲載する予定もある。
「これは実際にこれら全ての分野で読者層を増やし、この文学の世界というのをオンラインに移行させる為です、」と彼は述べた。「私にとって成功とは、最終的に振り返って自身の周囲の人々や社会にどのような影響を与える事ができたかを見る事なのです」