アミン・アッバス

UAEの作曲家イハブ・ダルウィッシュ氏が、アラブ・ニュース・ジャパンのインタビューに答えた。内容は、彼の音楽に対する情熱や、クラシックとコンテンポラリーなスタイル、伝統と現代性、大きな愛国的テーマと個人的な内容を組み合わせ、メロディックで映画的なオーケストレーションでまとめあげる自身の才能などに及んだ。

ダルウィッシュ氏は幼少時から音楽が大好きで、様々なジャンルからたくさんのアーティストたちの楽曲を聴いてきたという。

自身が生まれ育った街について、ダルウィッシュ氏は次のように語る。「アブダビは、短い期間に世界で最も速く、最も発展した都市のひとつとなりました。都市開発で限界を打ち破り、文化のるつぼとなり、そこに住むすべての人々に平和と安全をもたらしています。アブダビは知識、教育、未来的な進歩に優先的に力を入れつつも、伝統と豊かなアラブ文化を保っており、それが私の音楽に反映されています。3年前、ファーストアルバムに『Abu Dhabi Renaissance, Beyond Limit』という、アブダビに捧げる曲を収録しました。これはアブダビの成長を象徴する曲です」

ダルウィッシュ氏によると、彼のキャリアは9年前に始まったという。バーチャル・インストゥルメント（仮想楽器）の使い方を自己流で学んで実験を始め、自宅のスタジオでフルスケールの交響曲を作曲した。

「そこから1段階上のレベルに行こう、つまりプロとしてレベルを上げようと決意しました。自宅のスタジオをアップデートして、この素晴らしい音楽の旅を始めたんです。活動を続ける中で素晴らしい人々と出会える恩恵に預かってきました。そして今のチームと出会うよう自分は運命づけられているのではないかと常に感じてきました」彼はそう説明する。

ダルウィッシュ氏は2018年にファーストアルバム『Waves of My Life』をリリースし、アブダビ・フェスティバルで初コンサートを行った。

ファーストアルバムのレコーディングは2017年から2018年にかけて行われた。ダルウィッシュ氏は、その2年間が自身の音楽的成長において重要な時期だったという。

「そこで初めて、私の曲が140名を超えるベートーヴェン・アカデミー管弦楽団によって演奏されました。アルバムは2018年の早い時期にリリースされ、ユニバーサルミュージック MENAによって各種デジタルプラットフォームで世界中に配信されました」ダルウィッシュ氏はアラブ・ニュース・ジャパンに対してそう話す。

ダルウィッシュ氏はサミー・クラーク氏（『グレンダイザー』のアニメシリーズに起用されたアラブ人歌手）との、新たな『UFOロボ グレンダイザー・メドレー』で知られている。このプロジェクトについて、ダルウィッシュ氏は次のように語る。「グレンダイザーは、魔法のような懐かしい子ども時代を思い出させてくれます。私たちにとって、グレンダイザーというキャラクターはずっとヒーローです。アニメーション、音楽、声、そういったものが私たちの心に喜びと幸せを運んでくれました。サミー・クラークは私たちの子ども時代の思い出と結びついているヒーローの1人で、彼のパワフルな歌声には独自の存在感があり、このアイコニックな日本のアニメと、最高だった当時を思い出させてくれます」

さらにダルウィッシュ氏は、世界最大の記録を打ち立てた噴水を祝福するプロジェクトにおいても、作曲を担当している。

「ザ・パーム・ファウンテンから依頼を受け、ソニックブランディング、そしてシグネチャーミュージックとして公式ソングとなる『Aim for The Sky』を作曲しました。このプロジェクトはシンプルに素晴らしかったです」とダルウィッシュ氏。

「この曲はUAEの多様な人々や文化へのトリビュートであり、同じ空の下でのあらゆる文化の団結を示すために、クラシック、湾岸風、オリエンタル、エレクトロニックといったスタイルを注ぎ込んだ音楽的対話なのです。定期的に演奏が行われています」ダルウィッシュ氏はそう付け加えた。

ダルウィッシュ氏は交響曲作品である『Hekayat: Symphonic Tales』の作曲とプロデュースでも知られる。この作品は13曲構成で、日本を含めた20カ国から128人の音楽家たちが演奏に参加している。

ダルウィッシュ氏は、「Hekayat」は「物語」という意味を持つと語る。そのことは、音楽が普遍的で、文化をひとつにするものだということを示している。

ダルウィッシュ氏は10歳の頃から音楽を演奏してきた。広告とアートデザインを専攻した彼は、作曲家としての評価される存在になるために、キャリアの中でイメージと音の融合を追求してきた。

2017年、ポーランドでのベートーヴェン・アカデミー交響楽団との協力がブレークスルーとなった。ファーストアルバムの『Waves of My Life』が2018年にリリースされ、ユニバーサルミュージック MENAの国際展開によってオーディエンスを獲得した。交響曲作品のお披露目となる『Waves of My Life: Every Real Story Begins with a Note』が、2018年のアブダビ・フェスティバルにて権威あるエミレーツ・パレスで演奏された。この演奏は観客を魅了し、ダルウィッシュ氏のさらなる成長を期待させるものとなった。

2018年3月、ダルウィッシュ氏はベートーヴェン・アカデミー交響楽団「初のゲスト作曲家」という名誉を与えられ、Euro Mediterranean Music Academy – EMMA for Peaceへ、大使としての参加招待を受けた。同年、フィリップ・ジャメル・ラシッド氏によるアワード受賞歴もあるドキュメンタリー『She』（2018）の作曲も担当している。また、よりユニークなコラボレーションとしてはUAE初のフィギュアスケート選手であるザーラ・ラリへの楽曲提供があり、この曲をバックに彼女は世界各地で演技を行っている。

2019年には、UAE教育省との共同で、Dragoneプロデュースによる歴史舞台『Voice of Tolerance』にも参加している。これはドバイで行われたLe Perleで上演された。同年ダルウィッシュ氏は、第48回UAEナショナルデー記念式典のメイン作曲家に起用された。この起用は『Legacy of Our Ancestors』と呼ばれるショーのためのもので、UAEの指導者たち、王族、国際的な要人らを含む1万4,000人を超える観客の前で、彼の楽曲がロンドンを拠点とするロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団によって演奏された。

2020年、ダルウィッシュ氏は世界最大の噴水としてギネス世界記録に認定されたザ・パーム・ファウンテン（UAE、ドバイ）からの依頼を受け、ソニックブランディングおよびシグネチャーミュージックとして公式テーマ『Aim for The Sky』を作曲した。この楽曲は、UAEの文化へのオマージュであり、ドバイのコスモポリタニズムが表れている。2020年12月1日からは、ドバイのザ・ポアントにあるザ・パーム・ファウンテンで、定期的に演奏が行われている。

2021年、ダルウィッシュ氏は交響曲作品である『Hekayat: Symphonic Tales』をアブダビ・フェスティバルで演奏した。世界を股にかける本作は13曲構成で、日本を含めた20カ国から128名の音楽家が参加して演奏を行った。5大陸の音楽的伝統と文化を表現した本作は、UAE出身のアーティストによる演奏としては初めてのものであり、歴史に残るものとなった。音楽家、パフォーマー、オーケストラが世界各地の21都市でそれぞれに撮影を行ったこの交響曲は、675回ものZoomを使ったセッションと、のべ8万6,600時間のプランニングおよび製作期間を経て完成した。それぞれの演奏はデジタルに同期され、バーチャル3Dモデルによるステージ上に登場した128名のアーティスト全員の演奏に、革新的なポストプロダクション技術が使用された。このバーチャルコンサートは世界的に放映され、視聴回数は400万回を超えるものとなった。このアルバムは、ユニバーサルミュージック MENAからリリースされた。

同年、ダルウィッシュ氏はMohamed bin Zayed Majlis for Future Generationsに講演者として招待を受けた。このイベントは、2021年3月21に行われたUAE Education Interface Exhibition内において、UAEのより良い未来を形作るため、同国の若者と指導者たちを繋ぐという目的で行われた。