
ラーシド・ハッサン
リヤド:日・サウジ合作の映画が、オランダのセプティミウス映画祭で最優秀エクスペリメンタルシネマ賞を受賞した。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が所有する「MiSK財団」子会社のマンガプロダクションズが制作したこのアニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』が、サウジアラビア映画、アラブ映画として初となる国際映画祭の実験映画賞を受賞した。
発表は7日、オランダの首都アムステルダムで開かれた同映画祭のセプティミウス賞(Septimius Awards)のセレモニーの場で行われた。
マンガプロダクションズCEOで、本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めたイサム・ブカーリ博士は、「サウジと日本の合作映画ジャーニーは、メイド・イン・サウジ・ウィズ・ジャパンにより両国の文化と創造性を合わせてこのような作品を作ることができました。ジャーニーは長いジャーニー(旅)の第一歩であり、これからも東映アニメーション始め日本のパートナーと多くの作品を作っていきたいと思います。またこの受賞は我々の作品が世界的に評価されたことであり、大変誇りに思っています」と述べた。
「今回の受賞は、サウジ文化のクリエイティブなコンテンツが世界の中で競い合えることを示し、私たちマンガプロダクションがサウジの才能ある人々をさらに育成し続けることを後押しするものです。これは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下から学んだことです。若者を力づけることこそが重要であり、私たちの大志は無限なのです」
マンガプロダクションズのマーケティング、配給および事業開発担当ディレクターであるアブドルアジーズ・アル・ナグモーシュ氏は、「『ジャーニー』のセプティミウス賞の実験映画部門賞受賞は新たな喜びです。サウジの才能ある人々の育成に尽力した成果です。私たちは彼らのような人材を常に探し求め、支援し、コンテンツ産業における彼らのスキルセットを向上させてきました。彼らは、この映画の制作に直接、関わっています」と述べた。
さらに同氏は、次のように続けた。「この喜びは、『ジャーニー』の公開のために注がれた努力の証でもあります。この映画はヨーロッパ6ヵ国、アジア15ヵ国以上に配給されます。私たちは映画の放映に向け、大手放送局とも契約を結んでいます」
また、同氏は、『ジャーニー』がアメリカにおいて、世界最大の配信コレクションを有するアニメ配信会社クランチロール(Crunchyroll)を通して視聴可能になると説明した。加えて、日本の20以上の配信プラットフォーム、中東のアラビア語のコンテンツストリーミングプラットフォームであるシャヒード(Shahid)でも公開されるとした。
マンガプロダクションズのアニメーション担当マネージャーであるサラ・ムハンマド氏は、「この映画の成功は、サウジの若者の創造性、そして当社と東映アニメーションとの協力関係に対する世界からの贈り物です。この映画を通して、私たちは自分たちの遺産や文化の一部を世に示しました」と述べた。
マンガプロダクションズと東映アニメーションの協力関係により、この映画にはサウジ、日本両国の経験値や方法論をブレンドしたものが加味された。水彩画法や伝統的な日本画の手法、ファン・ゴッホの画風といった異なる芸術様式が、アニメ映画に初めて採り入れられた。
『ジャーニー』は、実験映画部門の最終候補にノミネートされた8作品の一つだった。この賞は、ユニークなアートスタイルを用い、今までにない優秀な表現力を持ち合わせた作品に授けられる。
セプティミウス映画祭の最終選考に進んだ作品には、国際的な映画が数多く含まれており、そうした作品が複数のカテゴリーで競い合った。
セレモニーには、著名なケヴィン・ウィルモット監督や、アメリカの俳優トーマス・ジェーンなど、オスカー(アカデミー賞)やグラミー賞といった国際的な賞を受賞した映画人や著名人が参加した。
セプティミウス映画祭は、『創造的で刺激的、かつ高品質な作品』を支援することを目的としている。
『ジャーニー』のストーリーは、アラブ世界史の核心からインスピレーションを得ている。日本の映画製作者である静野孔文氏が監督を務めたこの作品では、アラビア半島を舞台にした壮大な物語が展開される。主人公はメッカの陶工であるアウス。彼は、メッカにあるカアバ神殿を破壊しようとする冷酷な侵略者から自分たちの都市を守るため、武器を持って立ち上がる。
マンガプロダクションズは、優れたコンテンツを通じて、サウジアラビアの文化を世界に伝えることを目的とし、アニメーションやビデオゲームの制作に意欲的に取り組んでいる。同社は、サウジアラビアやアラブの若者の才能を育成し、若い世代に良い価値観や道徳観を根付かせるため、色々なテーマに焦点を当ててコンテンツをプロデュースしている。