
レベッカ・アン・プロクター、 ダーラン
ダーランにあるキング・アブドゥ ルアズィーズ世界文化センター(Ithra)の新たな展示会は、サウジアラビアの様々な地方の伝統を取り扱っており、サウジアラビア独特の文化的景観が はっきりと見えてくる。
『Being Saudi』は2021年いっぱいまで開催され、4つの「部門」を通してインタラクティブで楽しい文化の旅を来場者に体験させてくれる。これらの部門はそれぞれ音楽、柄模様、国民衣装、詩歌といったサウジアラビアの文化遺産における4つの異なる側面に焦点を当てている。
「私たちはインタラクティブなギャラリーという方式でこの展示会を開催することにしました。訪れる人たちとできるだけ密接に関わりたいと考えたからです」と同センターのLatifa Al-Moghanam館長がアラブニュースに語った。「展示物がショーケースに収まっているといった従来の展示方法にとどまらず、サウジアラビアの多様な文化遺産を学ぶ方法としてテクノロ ジーを取り入れたいと考えました。詩歌、ファッション、そして音楽はサウジアラビア社会の最も重要な側面であり、これらの側面をサウジの国民のみならず他国の人々とも共有したいと思っています。」この展示はサウジアラビアの全ての地方の文化や伝統を取りあげている、と館長は強調した。
[caption id="attachment_7445" align="alignnone" width="533"]Al-Moghanam館長は、柄模様の部門が特に気に入っているという。「この部門ではサウジ文化独特の一面を浮き彫りにしています。それぞれの地方に独特の柄模様があるのですが、それは各地方の環境や多様な景観にも関連しています」と館長は説明する。使用されている顔料や素材はその地方で手に入るものによって地方ごとに異なっている。多種多様な柄模様は、古くからの家屋(特にアスィール州)の壁や、様々な伝統衣装にも描かれている。この展示の来場者たちは自分なりのデザインを作り出して、そのデザインを後から壁に投影することもできる。
ハイテクを駆使した展示会というのは文化や伝統遺産の展示会としては珍しく、特にアラビア湾岸諸国ではあまり見られない。『Being Saudi』はサウジアラビアの豊かな歴史的要素を、現代の急速に開発が進んでいるテクノロジーと巧みに融合させている。この展示会は多くの方法を通して、サウジアラビアの急速なデジタル国家への進展ぶりも強調している。
例えば、来場者は会場内で終始『Being Saudi』と書かれた黒い円形ディスクを持ち歩くことになっており、その円盤が訪れた各部門で学んだ情報を記録する。最終的にそのディスクにはこの展示会に関する情報がすべて記録保存されるという仕組みだ。
[caption id="attachment_7446" align="alignnone" width="533"]展示会がうたっている様に、サウジアラビアは古代の重要な通商ルートの中心に位置し、そのためサウジの歴史は多岐にわたる文明によって色彩豊かなものとなっていった。その逆もまた同様だ。 紀元前3千年来、アラビアの商人たちは地中海、エジプト、南アジアまで広がった一大通商網の一部を担っており、アラビアの通商ルートは極東、インド、ビザンチン帝国、地中海を結ぶ生命線となっていた。サウジアラビアの文化的伝統はこのようにして外部の民族やアラビアの原住民族らの影響を受けてきたのだった。
詩歌はこの典型的な例である。書かれたものであれ語られてきたものであれ、詩歌は長い歴史にわたってアラブの文化生活の重要な側面となっている。古代、ベドウィン族が頻繁に行き来していた頃、詩歌は主として語りによる伝統となっていた。詩人たちが武勇伝、恋愛、戦争、騎士道精神、歴史的出来事などの話を口頭で語り継ぎ、そうした語り言葉による詩歌がサウジアラビアの文化遺産を特徴づけるものの一つとなっていた。
[caption id="attachment_7447" align="alignnone" width="800"]詩歌は余興でもあり、同時に歴史や伝統、社会的価値観を保存する方法の一つでもあった。人々が詩人たちに耳を傾けたのは、その詩歌の美しさゆえのみならず、そうした歴史的伝統や価値観を学ぶためでもあったのだ。聖典コーランがアラブ民族の詩歌や言語に対する愛をさらなる高みへと高めたのは言うまでもないが、コーランはいまだに現代のほとんどのアラブ詩歌に大きな影響を及ぼしている。
『Being Saudi』の詩歌部門では、来場者たちはサウジアラビアの最も重要な詩人たちの作品に出会うことができる。Ghazi Al-Qusaybi、Jaasim Al-Suhayyih、Muhammad Al-Thubayti、Muhammad Jabr Al-Harbi、Muhammad Ibrahim Ya’qoubなどの作品である。
[caption id="attachment_7448" align="alignnone" width="800"]自らの作品を通してこれらの詩人たちは数知れない社会的・国家的話題に取り組んできた。来場者たちは「詩歌マシーン」を使って各詩人の作品からの抜粋文を読むことができる。注目に値するのは、現代詩人Hayfa Al-Jabriの作品だ。彼女の最も印象的な詩の一つは『The Corner』というもので、ヤシの木とアラビア女性たちの間の類似性を描いている。この詩人が自分自身をどう見ているかということの一例だけでなく、他国の女性たちと比較してサウジの女性たちが自分自身をどう見ているのか、について模索している。この詩は自由律韻文のスタイルを とっているが、半話術的形式が見られる。ところどころ散文調に近いものがあり、サウジアラビアの詩歌の新たな潮流を示している。
ファッション部門では、サウジアラビアの伝統衣装について学ぶことができる。服装は着る人の社会的地位を表すことが多く、出身地によっても違いがある。例えば、東部地方は世界最大規模のアルハサオアシスで知られているが、ここでは一般的な女性の服装はMusarrahとよばれ、東部地方やナジュド地方で特別な機会に着用される。
[caption id="attachment_7449" align="alignnone" width="800"]伝統衣装には、頭と顔を覆う布に加えてDira’aとAbayasがある。来場者たちはこれらの作り方、様々な装飾、切り込み、生地について学び、自分が一つ選んだものをインタラクティブスクリーン上で着てみることができる。
サウジアラビアが「ビジョン2030」や他の一連の改革を行いながら前進していく上で、『Being Saudi』は同国の独特の文化遺産を再認識させてくれる。その文化遺産は、国家が未来へ向かって加速していく中で、今まで以上に一層忘れてはならない重要な遺産である。