アミン・アッバス
ドバイ:天心流兵法の11代目師家である井手柳雪氏が、日本の古武術である天心流の着想を語る。
天心流兵法は、剣術、槍術、なぎなた術、やわら手(柔術)、宝蔵院流影派十文字槍術など、永禄(1558-1570)の頃に創設された多様な武術を扱う日本で最も伝統ある流派の1つである。
これらの多様な武術のおかげで武士たちは、いかなる時でも民や領土を守るべく、常に万全な備えができていた。
天心流兵法11代目師家の柳雪氏は、アラブニュース・ジャパンの独占インタビューに応じ、天心流兵法の着想について語ってくれた。「ご想像の通り、私も含め多くの人が子どもの頃から漫画やアニメの影響で刀が好きで、いつかカッコよく刀を振ってみたいとずっと思っていました。そんな折、大学生の時に友人から『日本の伝統武術(古武術)を一緒に習わないか』と誘われたんです。調べてみると、家の近くに天心流の道場があったので、そこに体験に行きました」
柳雪氏にとって、天心流と日本文化全般から得た、日常生活に活かすことのできる最も重要な学びは、礼儀作法と礼節だという。
また柳雪氏は、天心流兵法にまつわる苦労についても話してくれた。「大学生の頃は稽古に行く時間がありましたが、社会人になると仕事で全く稽古に行けないこともありました。また地方に住んでいたため、家から横浜の道場まで片道3時間かかっていました。あの頃が一番辛かったと思います。もうひとつは、古武術を教えるだけではなかなか食べていけないという現実を突きつけられたことです。他の先生方と協力して、ITツールを使ってオンラインで海外の人に天心流を教えるシステムを作り、やっと生計を立てられるようになってきました。次の世代の師家には私と同じ苦労をさせたくないので、きちんと家庭を持ち、安心して指導に専念できる環境を整えることが私の役割だと思って注力しています」
また、柳雪氏はソニーのプレイステーション用ゲーム『Ghost of Tsushima』の制作に携わっている。
ソニーから依頼を受け、ゲームに必要な技術や、ゲームに取り入れる武術本来の無反応の動きを実演した。
さらにUAEでも天心流兵法のセミナーを開催している。
先日もアジュマンの武士館道場で4回目のセミナーを行い、引き続きUAEで天心流兵法を教えたいと考えている。
アラブニュース・ジャパンの独占取材の中で柳雪氏は、「当面は具体的なプロジェクトはありませんが、新型コロナによる混乱がようやく収まったので、来年にはUAEで正式に天心流兵法の実演、セミナー、そして指導も始められたらと思います。
それと、他のGCC諸国でも同じようにできれば嬉しいですね」と語ってくれた。