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日本人アーティスト久門剛史が中東・南アジアで初となる個展「丁寧に生きる」開催

アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
アラブ首長国連邦ドバイのジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史氏の展覧会「丁寧に生きる」の作品(提供)
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01 Jun 2023 04:06:08 GMT9
01 Jun 2023 04:06:08 GMT9

アラブニュース・ジャパン

日本人アーティストの久門剛史氏が、中東・南アジアでは初となる展覧会「丁寧に生きる(英題:Polite Existence)」を開催した。展覧会は、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイのジャミール・アーツ・センター(Jameel Arts Centre)で、5月4日から9月24日まで開催される予定だ。

アート・ジャミール(Art Jameel)と国際交流基金の共同企画である「丁寧に生きる」は、従来の芸術の枠を超えた大規模なコンセプチュアルアートにおける久門氏の卓越した技術を紹介するものだ。音、光、コンピュータ・プログラミング、彫刻、線画をシームレスに統合したこの展覧会は、来場者に空間と時間を超えた魅惑的な旅を提供し、深く考察させる。

アンナ・ベルニス・デロス・レイエス(Anna Bernice delos Reyes)氏と井関悠氏がキュレーションを担当した「久門剛史:丁寧に生きる」は、2022年の日本とアラブ首長国連邦とのキュレーター交流の成果だ。国際交流基金と共同でアート・ジャミールがプロデュースする本展は、アラブ首長国連邦と日本の外交関係樹立50周年(2022年)に合わせて開催されている。

「湾岸諸国と日本の交流を促進することは、アート・ジャミールの使命のひとつだと考えています。ジャミール家は75年もの間、慈善事業に携わり、日本と湾岸諸国の文化交流を促してきました。なので、今回のような活動は私たちにとって必ずしも新しいことではありません。いわば、私たちにとって関心のある事を長期的に続けているということです。2018年にジャミール・アーツ・センターがオープンしたとき、日本人アーティストの塩田千春さんの作品は、最も規模の大きかった作品のひとつでした。当時私たちは、いつか日本で活躍する新しいアーティストや、日本の新しいスターを特集し、このセンターで紹介しなければならないと考えました。ですので、ジャミール・アート・センターの設立5周年の節目に、フロア全体を久門氏の大規模な個展に充てました」と、アート・ジャミールのディレクター、アントニア・カーバー氏は説明する。

アラブ首長国連邦のドバイにあるジャミール・アーツ・センターで開催された日本人アーティスト久門剛史の展覧会「丁寧に生きる」からの作品(提供)

アンナ・ベルニス・デロス・レイエス(Anna Bernice delos Reyes)氏と井関悠氏がキュレーションを担当した「久門剛史:丁寧に生きる」は、2022年の日本とアラブ首長国連邦とのキュレーター交流の成果だ。国際交流基金と共同でアート・ジャミールがプロデュースする本展は、アラブ首長国連邦と日本の外交関係樹立50周年(2022年)に合わせて開催されている。

「アート・ジャミールでは、国際的な活躍が期待されるアーティストたちの中でも、中東や南アジア、あるいは出身国以外ではまだ大きな個展を開催していない方と一緒に仕事をすることが多くあります。久門剛史氏はその好例です。久門氏は日本ではとても有名ですが、海外ではあまり展示を行う機会がありませんでした。この地域では一度も展覧会を行ったことがないのですが、彼の考えは独創的で素晴らしいです。私たちが注目するアーティスト像は、革新的かつダイナミックでありながら、誰もが理解でき興味を持てるような普遍的なテーマについて語り、かつ、芸術の技法や出身地の思想に精通しているような方です。久門氏は、まさにそれにあてはまります。彼の作品はここで展示するのにとてもふさわしいと思います」と、アート・ジャミールのディレクター、アントニア・カーヴァー氏は語る。

国際交流基金は、外務省所管の行政機関として、芸術、海外における日本語教育、日本研究など、さまざまな分野で国際的な文化交流を推進する機関だ。今回の「丁寧に生きる」展は、文化的な対話と理解のための場としての意義を持つ。国際交流基金が展覧会に関与していることは、その色をさらに強めている。

展示室内を歩くと、時間が止まっているようでもあり、絶え間なく流れているようでもある、幽玄な雰囲気に包まれる。久門氏の作品は、気に留めないことも多い微細な体験を主題とし、考察を促すことで、従来の認識を覆しうるものだ。

「丁寧に生きる」の展示の中にいると、心地よい感覚があふれてくるだけでなく、好奇心も掻き立てられる。コンピュータ・プログラミングと彫刻の要素を伝統的な芸術的媒体と融合させた久門氏の学際的アプローチからは、芸術表現の境界を押し広げて進化し続ける現代アートの本質がうかがえる。

日本人アーティスト久門剛史氏の作品『Force』(アラブ首長国連邦、ドバイ、ジャミール・アーツ・センターで開催された「丁寧に生きる」展より)(提供)

「丁寧に生きる」展で注目すべき作品のひとつが、音と映像の組み合わせで見る者の感覚を刺激する『Force』だ。ギャラリー全体に広がる壮大なスケールと、緻密に配置されたパーツが、鑑賞者の感覚をさらに研ぎ澄まさせる。このインスタレーションでは、印刷用のトレイを模したアルミニウム製の装置がいくつも壁面に取り付けられている。このトレイからは、白い紙が雪のように優雅に舞い降りる。電球の断続的な照明が紙を照らし、影を落とし、没入せずにはいられない魅惑的な光景を作り出している。

 

日本人アーティスト久門剛史氏の作品『Force』(アラブ首長国連邦、ドバイ、ジャミール・アーツ・センターで開催された「丁寧に生きる」展より)(提供)

『Force』は、風、稲妻、雷鳴のモチーフを巧みに組み合わせたインスタレーションだ。低周波音が空間を満たしており、轟く雷や大気の乱れが連想させられる。何かが力強く動いている、という印象を受ける。微妙なバランスで成り立っている個人という存在は、巨大で無形の力によっていともたやすく乱される、ということを示唆している。このメタファーは、予測不可能で制御不能な力に直面した人間の生命の儚さを強く印象づけるものであり、さまざまな背景を持つ鑑賞者の心に深く響くものだ。

日本人アーティスト久門剛史氏の作品『Force』(アラブ首長国連邦、ドバイ、ジャミール・アーツ・センターで開催された「丁寧に生きる」展より)(提供)

この展示の前方には、傾いたガラスの長方形があり、その周囲を断続的に光る電球が取り囲んでいる。雷雨を思わせるリズミカルな光は、意図的に配置されたスピーカーから発せられる音声と調和し、世界観を作っている。

「Forceは、一見安定していて、信頼できるように見える世界が、実は傾いており、崩壊寸前である、と恐れてしまう心理を表している。作者にとってはそうである」と、『Force』に添えられた説明文は、作品に込められた作家の意図を的確に表現している。

この示唆に富むインスタレーションを通して、久門氏は鑑賞者に、自己の不安と向き合い、自己の外の世界を取り巻く不確実性について熟考するよう促している。

久門氏は阪神・淡路大震災と東日本大震災での被災など、個人的な体験に深く影響されながら作品を制作してきた。久門氏は自然の破壊的な力と出会ったことで、宇宙を支配する法則への深い尊敬の念を抱くようになったという。この「丁寧に生きる」では、久門氏はアートの力を借りて、広大な宇宙の中での私たちの居場所と、大きな力に直面したときの私たちの弱さについて探求している。

アート・ジャミールと国際交流基金のコラボレーションにより実現した「丁寧に生きる」は、文化交流と芸術的対話が、大きく離れた2つ地域の距離を縮めうるという証だ。この展覧会は、久門氏の優れた才能を紹介するだけでなく、中東や南アジアの文化的文脈の中で日本の現代美術をより深く理解し、鑑賞することを促進する役割も果たしている。

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