
トロ部分が多く、高級すし店なども扱う冷凍のクロマグロがこの年末は値下がりしている。海外産の養殖物が豊富に出回っているためで、量販店には手頃な特売品が並び、人気を集めている。
12月中旬の東京・豊洲市場(江東区)マグロ売り場では、競りで売られる冷凍の天然クロマグロの中心値が1キロ当たり約2800円と、前年同時期より2割近く安かった。主な理由について卸会社の担当者は「(天然物と)競合する地中海産養殖物の国内在庫が過剰にあるため」と説明する。
この養殖物は、地中海で生け捕りされた大型魚を、沿岸各国のいけすで餌を与えて太らせたトロ部分の多いマグロ。近年は豊漁による順調な生産が続き、2022年の輸入量は前年比2.8倍の782トンと過去10年間で最多だった。23年も生産は好調だが「日本の冷凍庫がいっぱいで入らない」(輸入商社)ため、輸入が抑えられたほど。
豊富な供給を受け、取引価格は今夏から下がり始めた。12月中旬の豊洲市場の卸値は、「ロイン」と呼ばれる四つ割りに加工された冷凍切り身が1キロ当たり2500~3500円と前年同時期より3割以上値下がりしている。
店頭価格も安くなり、大手スーパーのイオンでは首都圏などの各店で、モロッコやスペイン産の養殖マグロのさくや刺し身を昨年より約3割値下げして販売中。12月中旬現在、中トロが100グラム当たり800円前後。売れ行きも好調で、来年の3月ごろまではこの価格帯での販売を続けるという。
脂の乗った上質なマグロがしばらくはお手頃価格で食べられそうだ。
時事通信