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イランとその代理勢力による好戦的な行動は、ガザの殺戮から注意をそらしている

2024年1月13日、バグダッドのタハリール広場でさまざまな旗を振る親イラン派の支持者たち。(AFP)
2024年1月13日、バグダッドのタハリール広場でさまざまな旗を振る親イラン派の支持者たち。(AFP)
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16 Jan 2024 01:01:59 GMT9
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ガザ紛争の霧が地域に立ち込める中、国際原子力機関(IAEA)の査察団は、イランがウラン濃縮度を3倍に増やし、爆弾級に近づけたと警告している。

フランスの国連大使、および米国の情報当局は、イランが核兵器3発分の濃縮ウランを生成する最終段階に至るまで「数週間程度」だと警告している。これは、米国がイランと、濃縮を抑制する合意に達したと安心していた数カ月前の状況とは劇的に異なる。

イランはその一方で、地域の代理勢力を使って紛争を悪化させている。2年前に出版された拙著『民兵国家(Militia State)』の中で私は、イランが支援する多国籍派閥について、バブ・アルマンダブ海峡、ホルムズ海峡、地中海東部、アラビア湾源流といった世界経済の主要な要衝に準軍事組織が設立される危険性を警告した。フーシ派による船舶攻撃の結果、紅海の貿易はおよそ3分の1にまで落ち込み、アラブ諸国を含む世界経済に深刻な影響を与えている。

バイデン政権によるフーシ派のテロリスト指定解除は、長年にわたって同国政府の対応を誤らせてきた戦略的思考の欠如の証である。西側諸国による報復は大部分が象徴的なものであり、フーシ派の地域的な存在感を高めるために利用されている。海上輸送の保護とフーシ派の脅威に対抗するために、多国籍軍が結成された。オブザーバーの地位を持つ唯一のアラブ参加国はバーレーンであり、同国は長年にわたりアメリカ第五艦隊を受け入れてきた。

先週、イラクのカタイブ・ヒズボラ派のジャファル・アル=フセイニ報道官は、湾岸地域全域の米軍基地を攻撃すると脅迫した。民兵組織「ハシュド・アル・シャアビ」はすでにイラクとシリアで米軍基地に対する攻撃を数十回行っており、米国の報復行動はエスカレートしている。ホワイトハウスのジョン・カービー報道官は、「我々はいかなる紛争にも興味がない」と述べた。しかし、米国とその同盟国は、好むと好まざるとにかかわらず、すでに中東紛争に巻き込まれている。シリア、イラク、レバノンにおけるイスラエルとアメリカの空爆によって、コッズ部隊、ヒズボラ、準軍事組織の指導者を含む数十人の構成員が殺害されている。

フーシ派、ダーイシュ、イラン、ハシュドによるこうした自己顕示的なパフォーマンスは、ガザでの殺戮から注意をそらしているだけだ。

バリア・アラマディン

イランが支援する巨大な準軍事組織が存在する根本的な理由は、米国、および地域におけるイランの敵に対抗するためである。もしハシュド民兵が米軍をイラクから撤退させるという目標を達成すれば、すでにガザでの流血を残酷に利用して新兵を募集し、世界的な存在感を再び確立しつつあるダーイシュにとって拡大の機会となるだろう。

先週ダーイシュは、カメルーン北部でキリスト教徒を虐殺する戦闘員を撮影した残虐な動画を発表した。動画では、ダーイシュの司令官が死体の上に立ち、「ガザのイスラム教徒の復讐」のために「ユダヤ教徒とキリスト教徒」に対するさらなる残虐行為を扇動している。これは、ガザとの「連帯」キャンペーンの一環として同グループが主張する、世界中で100を超える攻撃の一つに過ぎない。

フーシ派、ダーイシュ、イラン、ハシュドによるこうした自己顕示的なパフォーマンスは、ガザでの殺戮から注意をそらしているだけだ。ここ数カ月で初めて、ニュース速報はイエメンと地域の地政学に焦点を当てており、ガザ市民の悲惨な苦しみは報道されなくなった。イスラエルにとってこれ以上ない状況だ。

イランが最近、軍事核能力を獲得しようと躍起になっていることは、この紛争がどれほど悪化しうるかを改めて思い起こさせる。核による報復が現実的なシナリオとなった場合、米国はイランとその代理勢力に脅威を示す勇気があるだろうか?イスラエルも核戦力を有しているため、どちらかが窮地に追い込まれた場合、そのような恐ろしい兵器の使用を容認する者も存在する。実際、10月7日のハマスによる攻撃直後、イスラエルの法務大臣は紛争の解決策として、ガザへの核爆弾投下という恐ろしい提案を口にした。

戦争が始まって100日以上が経過し、国際司法裁判所において南アフリカが提出したジェノサイド(大量虐殺)の訴えは、詳細かつ説得力のあるものであった。イスラエルによる2000ポンド級爆弾の無差別投下によって、2万3000人以上のパレスチナ人が大量に殺害され、約8000人ががれきの下に埋もれた。約1万人の子どもが死亡し、6万人以上が負傷し、あるいは障害を負うことになった。ガザ地区のすべての住民は強制的に移動させられ、すべての都市や難民キャンプが破壊され、すべて病院が機能不全に陥った。南アフリカの訴えはまた、家族を失った無数の負傷した子どもたちがケアやサポートなしに放置され、栄養失調や病気の影響は言うに及ばず、大きな心理的影響と想像を絶するトラウマを抱えていることも浮き彫りにしている。この戦争は、ハマスにより被ったいかなる損失よりも、罪のない人々を無限に傷つけているのだ。

最終的な法的判断がどうであれ、イスラエルがジェノサイドに関する確固たる法的根拠に基づいてこの法廷に提訴されたという事実は、イスラエルの国際的な評判を計り知れないほど、そして恒久的に損なっている。これまで、この国は外交的に手がつけられないと見なされていた。

米国とイランはどちらも、ガザでの流血を終結させ、紛争の地域化を防ぐことを望んでいると主張している。しかし、の行動の多くは危険なほど逆方向に動いている。米国はイスラエルに対して莫大な影響力を持っており、それはイスラエルの暴走を止めるための「究極の切り札」となる。もしイランが、この紛争の火種が自国に及ぶことを望まないのであれば、好戦的な代理勢力を緊急に制御する最大限の努力を払うべきである。核活動を進めるのではなく、イスラエルを含め、この地域から核兵器を完全に撤廃することを最優先で提唱すべきだ。

これ以上の憎悪、暴力、死者は誰の利益にもならない。少なくとも、この数十年にわたる紛争をさらに長引かせているイスラエルにとってはなおさらである。だからこそ、多くの人が、少なくとも交戦停止を要求する法的権限を国際司法裁判所に求めているのだ。イスラエルとイランの代理勢力による相互挑発が、計り知れないほど悪い事態を引き起こす前に、殺戮はすぐに終わらせなければならない。

  • バリア・アラムディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。
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