Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • ビジネス
  • 女性の価値、ビジネスに解き放つチャンスは今や遅し

女性の価値、ビジネスに解き放つチャンスは今や遅し

女性の就業をはばむ雇用障壁がある場合、失業率や貧困率が高まり、生産や経済成長にも悪影響を及ぼしうる、との研究がある。(Shutterstock)
女性の就業をはばむ雇用障壁がある場合、失業率や貧困率が高まり、生産や経済成長にも悪影響を及ぼしうる、との研究がある。(Shutterstock)
Short Url:
08 Mar 2020 07:03:36 GMT9
08 Mar 2020 07:03:36 GMT9

ラーニヤー・ナッシャール

【リヤド】ビジネスに女性を取り込むことは、今すぐにでも行動に移すべき重要な社会経済的な結果をともなう世界的な問題だ。

関連する問題として、職場におけるガラスの天井、起業を目指すうえでの難関や障害、STEM(科学・技術・工学・数学)はじめその他さまざまな産業への参入率が女性の場合低い、といった個別例も挙げられる。

女性の雇用率とGDPの成長率の間には強い相関関係があることが各種研究から示されている。女性のいる職場ではビジネス上の成果が高まるのだ(生産性や収益性、イノベーションなど)。

女性の就業をはばむ雇用障壁がある場合、失業率や貧困率も上昇する。また、生産や経済成長にも悪影響を及ぼしうる。

OECDの調査では、ジェンダーギャップによる経済の損失はGDPの15%程度と試算されている。不平等・不公正な賃金は、女性を苦しめやる気を殺ぐ格差の最たるもののひとつだ。

アクセンチュアの調査によれば、女性の収入は世界的に見てなお男性の63%以下という。

社会経済的な観点に立つと、賃金が不公正・不平等であることで、すでに根深い社会的不平等はさらに深刻になる。放置すれば、消費者・事業者双方にとっていっそうの悪影響となりかねない。

未来を先取りした職場に女性の姿はあまり見られない。世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダーギャップ報告2020」では、STEM分野では珍しくない女性のいちじるしい不在に加え、クラウド・エンジニアリング・データ・AIといった産業分野でも女性は20%以下の参入率だと指摘している。

雇用条件・雇用文化といったものも女性の離職につながりがちで、子育てや親の介護といった理由で職場を離れる女性は少なくない。あたら仕事のスキルや能力をもつ人材プールがあるというのに雇用者が活用できる機会が減っている。

例を挙げると、アクセンチュアの試算では、子育て・介護といった無償労働の総時間は世界全体でその73.2%が女性によるものだという(男性の3倍以上)。世界のGDPの39%までが女性による無償労働によることになる。

多様性と平等のあるところではイノベーションや成長も力強く伸びる。国際労働機関(ILO)によれば、4社に3社の割りで、性多様性イニシアチブにより5~20%の利益率増大が見込めるという。つまり、せっかくそこにある価値をわざわざ多様性の低い環境に置き去りにしているのだ。

女性の企業トップへの参入もなお伸び悩む。

世界の企業首脳に占める女性の割合は、2012年のおよそ21%から2019年の29%と、わずか8%程度の伸びでしかない。男女同権への一里塚と目される30%という転換点となる数字にはなお及ばないのだ。2019年時点でフォーチュン500の企業リスト中女性CEOはたった33人だ。

組織の指導体制に多様性があれば招来される才知や新たなアイデアも、女性がそこにほとんどいないため発現しないということだ。

アクセンチュアの調査が示すところでは、平等でやりがいのある労働環境では、女性の昇進も4倍は促進される見込みがあるのみならず、男性にも不利にはならず昇進が早まるという。

BCGの分析が見積もるところでは、男女平等に起業機会があるなら世界のGDPは最終的にほぼ3~6%伸張する可能性があり、世界経済も2兆5,000億~5兆ドル押し上げるという。

女性の就業条件はここ20年30年の間に改善されてはいるが、各国政府や各企業が女性の価値を完全に解き放つうえで、スピードアップしたさらなる改革・行動が必要だ。

女性の就労や管理職への登用に障壁があれば取り除くべきだ。と同時に、女性が家庭に戻ったり職場へ復帰したりすることには支援を増強すべきだ。

将来性のある仕事(デジタル分野やSTEMなど)で不可欠なスキルの構築や、キャリアアップのできる企業文化の促進を補佐する手立ても当然ここへ含めるべきだろう。

特に各国政府は、年少の女子を企業へ供給する道筋を構築する機会を逸してはならない。これは多くの国々でなお無視できない課題なのだ。

金銭・社会・教育・文化でだれも疎外されないよう、法的枠組みの強化・拡大が必要だ。

女性がその持てる能力をフルに解き放つうえで重大な阻害要因となる、ハラスメントや性差別には、いじめや家庭内暴力も付け加えるべきだ。

賃金を公平公正にするには、次のことをすればよい。同一賃金の原則の適用をさらに拡充、職種職域差別の退治、「垂直的分離」打倒へのイニシアチブの監視、固定観念の打破、賃金格差にまつわる透明性の強化、だ。

女性経営者による企業を増やすには、財政面・非財政面での特別な政策といった措置が必要になる。大企業はもっと、中小零細企業や女性起業家をふくめた女性経営企業との取引拡大を模索してもよかろう。

政府・企業とも、女性の昇進、女性のもつ潜在的統率力を間然するところなきまで解き放つべきだ。それには、改革を断行し、開かれた環境をはぐくみ、フレキシブルな働き方もふくめた新たな就労の方途をうながすことだ。

  • ラーニヤー・ナッシャール氏は、B20サウジアラビアでビジネスにおける女性実行会議議長を務めた。サンバ・フィナンシャル・グループCEO
特に人気
オススメ

return to top

<