




ニューヨーク:世界各地の航空会社で火曜日、大規模な破産に対する不安が急増し、政府への緊急支援要請が相次いだ。そんななか米国の高官が、航空業界にとってコロナウイルス危機は9・11よりさらに深刻な打撃となるかもしれないと警告した。9・11(アメリカ同時多発テロ事件)の際には、米国空域が完全に閉鎖された。
イタリアでは政府が倒産したアリタリア航空の買収に動き、スウェーデンとデンマークでは、両国政府がスカンジナビアのフラッグキャリアであるSASへのてこ入れとして2億7500万ユーロの保証を提供した。
米国では、政府が経済全体に対する支援として8500億ドルの経済対策を準備したと伝えられるなか、航空会社の諸会社が政府に500億ドルの支援を要請した。
「航空業界にとってこれは9/11よりもひどい。— 業界はほぼストップ状態だ」とスティーブン・ムニューシン米財務長官は述べた。
業界関係者によると、航空会社のほとんどが3か月以内に現金が底をつきるという事態に直面するという。
さらに航空会社は、世界中の185,000便の旅客便の欠航や運航休止により、極めて重要な航空貨物が影響を受ける可能性もあると警告した。
5月末までには「世界中の航空会社のほとんどが破産するでしょう」と市場情報会社のCAPAは警告した。
「現在の窮状がこのインパクトで今後も続くとすれば、業界再編を見るのは明らかです」と国際航空運送協会(IATA)のアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック事務局長兼CEOはジュネーブで述べた。
新型コロナウイルス感染拡大阻止の目的で自主隔離を求める国や入国制限を実施する国への旅行をキャンセルする旅行客が何百万という数に上るなか、火曜日にはさらに多くの航空会社が減便を決定した。
ベルギーに本拠を置き48機の航空機を運航するブリュッセル航空(独ルフトハンザ航空の子会社)は火曜日、全便を少なくとも1か月間運航休止にすると決定した。ルフトハンザ航空はすでに90%減便している。
オーストラリアでは、政府がウイルス感染拡大対策として海外からの全入国者に14日間の自主隔離を義務付ける決定を出したのを受け、カンタス航空が火曜朝、国際便を90%減便した。
イタリア政府は、アリタリア航空を買収すると表明した。イタリアの元ナショナルフラッグキャリアであるアリタリア航空は、2017年の破産申請以来、交渉のぬかるみに陥っていた。
「こういうときにこそ、ナショナルフラッグキャリアがあれば政府はより多くの自由裁量を得られます」とローラ・カステッリ経済副大臣は述べた。「私たち皆が、イタリア帰国の際に同胞が直面した困難を目の当たりにしました。政府の決定はこの経験に基づいています」
だが買収後も、アリタリア航空の11,000人の従業員のうち4,000人の解雇が計画に入れられている。
ロシアでは、ロシア連邦航空運輸局(RosAviation)のアレクサンドル・ネラドコ局長が、同国の航空会社も窮地に陥っていると述べた。新型コロナウイルスの元々の震源地である中国への渡航便の欠航により2月始めからすでに打撃を受けていたという。
「厳しい財政状況にある航空会社では、破産のリスクが高まっています」とネラドコ局長は述べた。
「政府では航空会社の支援対策について積極的に議論を重ねています」とロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は述べた。
IATAのエコノミストであるブライアン・ピアース氏は、同協会では3月上旬に世界の航空産業の損失の見積もりを1,130億ドルと出したが、今ではこの額は低すぎるかもしれないと見ている、と述べた。
「当局が調査した航空会社のうち75%で、3か月以内に現金が底をつき固定費を支払えない状態になります」とピアース氏は語った。
こうした数値を見ると、産業のなかでもおそらくトップに位置づけされる航空産業が、救済を必要とすることになる。2008年の金融危機の際には、銀行が同じような境遇に見舞われた。
「連結性が命運を左右します」とIATAのドゥ・ジュニアック氏は言う。
「世界はこの危機を乗り越えるでしょう」とドゥ・ジュニアック氏。「そして、そうするには、航空輸送セクターが必要になり、このセクターが機能している必要があります。財政的救済なしで。国からの救済が保証されているわけではありませんから」
さらに、空港も脅威にさらされているという。国際空港評議会(ACI)欧州支部は、航空交通の「ほぼ全面的な崩壊」を覚悟しているところだ、と述べた。高い固定費を抱えるなか、収益が一掃されてしまう状況だという。
ACI欧州支部のジョスト・ランマーズ総裁は火曜日、欧州連合(EU)に対し緊急の経済的支援を求める書簡を送った。
「この資金は、航空会社に検討される条件と同様の条件の下で支給される必要がある」とランマーズ総裁は書簡の中で表明している。
だが米国では、2008年の時と同じように、企業に危ない橋を渡らせた高給取りの幹部や産業を救助するために国民の税金が使われることに憤りを示す人が再び現れている。
反対者によると、米国の航空会社は近年、ほぼすべての利益をキャッシュリザーブの蓄積にではなく株式の買い戻しに使い、それで株価を支えているのだという。
ブルームバーグ・ニュースによると、過去10年間、米国の航空会社はフリーキャッシュフローの96%近くを株式の買い戻しに使っており、それを最も強引に行っているのがアメリカン航空で、125億ドルを株式買い戻しに支払ったという。
コロンビア・ロー・スクールのティム・ウー教授は、ニューヨークタイムズ紙の記事で次のように述べている。「コロナウイルス危機を乗り切るための救済措置という名目であろうとなかろうと、アメリカン航空やその他の航空会社に連邦政府救済金の使用を許可することはできません。危機を乗り越えた後はどうせまた元のいい加減な状態に戻るだけだからです」
AFP