政府は29日、石破政権では初の総合経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案を持ち回り閣議で決定した。物価高対策の給付金など賃金や所得の増加につながる施策が柱で、一般会計の歳出総額は13兆9433億円。昨年度を上回る大型補正で、財源の半分近くを新規国債発行(借金)で賄う。借金頼みの財政が厳しさを増すのは必至だ。
石破茂首相は先の衆院選で「昨年度(13兆1992億円)を上回る補正予算を成立させたい」と訴えていた。政府は補正予算案を12月上旬にも今臨時国会に提出し、年内の早期成立を目指す。
歳出のうち経済対策費は13兆9310億円。分野別には「日本経済・地方経済の成長」に5兆7505億円、「物価高の克服」は3兆3897億円、能登半島の被災地支援など「国民の安心・安全の確保」に4兆7909億円を盛り込んだ。
歳入(財源)は半分近い6兆6900億円を国債発行で賄う。24年度の税収は3兆8270億円上振れし過去最大となる見込みだが、財源不足を補い切れなかった。
物価高に苦しむ低所得世帯向け給付金など「重点支援地方交付金」は1兆908億円計上。住民税非課税世帯に3万円を給付し、子ども1人当たり2万円を加える。ガソリン価格抑制補助金として1兆324億円、来年1~3月に再開する電気・ガス代補助に3194億円を充てる。
成長戦略では、半導体と人工知能(AI)関連産業に30年度までに10兆円以上の公的支援を行う仕組みを策定する方針で、補正予算案には既存基金などと合わせて1兆6000億円規模を計上。首相が重視する「地方創生2.0」には1兆8406億円を投じる。
今回の補正予算案の規模は東日本大震災後に匹敵する。加藤勝信財務相は記者会見で「財政健全化の旗を降ろさず、歳出改革などの取り組みを続ける」と強調した。
先の衆院選で自民、公明両党は少数与党となった。経済対策には国民民主党が主張した「年収103万円の壁」やガソリン税を含む自動車関係諸税の見直しを検討事項として明記したが、国会審議で野党側が予算案修正を迫る可能性もあり、先行きは不透明だ。
時事通信