
東京:ドナルド・トランプ大統領が日本の大幅な対米貿易黒字を批判しているにもかかわらず、日本が米国から意図的な円高圧力に直面する可能性は低いと、元外交トップの浅川雅嗣氏がロイターに語った。
トランプ大統領は米国の貿易赤字への対応に重点を置いており、日本が円安を維持することについても発言していることから、対ドルで円の価値を調整し、米国の製造業者に競争上の優位性を与えるよう日本に圧力に圧力をかける可能性があるとの憶測を呼んでいる。
浅川氏によれば、世界の基軸通貨としてのドルの地位は依然として堅固だが、 トランプ大統領が4月2日に発表した徹底的な「相互」関税措置を受けて、ドルは売り圧力にさらされやすくなっているという。
「ドル安が進めば、米国のインフレが加速する。このリスクは(スコット)ベッセント米財務長官も十分承知しているだろう」
「私の理解では、ベッセント財務長官と加藤(勝信)財務大臣との間で、貿易協議の中で通貨に関する具体的な話し合いは行われていない」と浅川氏は語った。
米国がG7先進国を率いて通貨安に動いた1985年のプラザ合意のような、協調的なドル安の可能性について尋ねられたが、彼はその可能性を否定した。
同氏は、中国と欧州の合意が必要であることを理由に、「第2のプラザ合意の可能性は低い」と述べた。浅川氏は現職の政策立案者と緊密な連絡を取り続けている。
2015年から2019年まで財務官として、浅川氏は2017年からのトランプ氏の大統領第1期において、日本の対米貿易・通貨交渉に深く関与した。
トランプ氏が大統領に就任した最初の任期中、日本の安倍晋三首相(当時)は、為替レートの問題を財務長官に任せるようアメリカ大統領を説得することに成功した、と浅川氏は語った。
「それ以来、為替問題は財務長官に任せるべきだという考え方が、 米政権内に定着したようだ」と浅川氏は語った。
加藤氏は、4月に初めて直接会談した際、通貨政策について「建設的な」対話を続けることでベッセント氏と合意したと語ったが、通貨目標の設定や円の動きをコントロールする枠組みについては議論しなかった。
他の6つの通貨バスケットに対するパフォーマンスを反映するドルインデックスは、1973年以来最悪の上半期を経て、約11%下落した。今年に入ってから、ドルは円に対して7.5%下落している。
浅川氏は、二国間の貿易交渉の結果を予測するのは難しいと述べた。トランプ大統領は、自動車関税に関する譲歩を得ようとする東京の努力に耳を傾ける気配はほとんどない。
トランプ大統領は月曜日に貿易戦争を激化させ、8月1日を新たな期限として14カ国に関税の大幅引き上げを通告した。
日本はワシントンとの貿易交渉で、対米投資の促進、国内自動車安全基準の見直し、アラスカでの液化天然ガス(LNG)プロジェクトへの貢献など、使えるカードをいくつか持っている、と浅川氏は言う。
「段階的に提示するのではなく、ひとつのパッケージとして提供する方がいい」と彼は言った。
浅川氏は2月までアジア開発銀行を率いた後、現在は東京に本部を置く国際通貨研究所の理事長を務めている。
ロイター