
Frank Kane
ドバイ:サウジアラムコはSABICの70%株式を 691億ドルで買収する手続きを完了し、世界の石油化学産業における新たな巨大勢力が生まれることとなった。
この買収は世界の石油化学業界における史上最大級のもので、これによってアラムコは高付加価値をもたらす下流戦略と生成能力を向上させることが可能となった。
サウジアラビアのソブリン・ウェルスの投資会社パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)への売却条件は昨年中に合意されていたが、6月17日(水)に正式に売買が成立し、サウジ・タダウル証券取引所へ発表された。
PIFのYasir Al-Rumayyan理事は、「これはサウジアラビアの最も重要な三企業にとって大変意義深いマイルストーンだ」と述べた。
コロナウィルスのパンデミックによる景気後退と石油価格の低迷で評価額が下がっているにも関わらず、アラムコはSABIC 株を昨年合意された時のままの現金価格で買収を完了した。
アラムコの社長兼最高経営責任者(CEO)Amin Nasser氏はこう言う。「COVID-19 のパンデミックによって多くの企業が長期戦略の見直しや変更を余儀なくされたにもかかわらず、当社が長期的にフォーカスしている強靭な財務体質と回復力によって、我々はこの歴史的な取引を完了することができた。当社の上流生産と化学製品供給原料の下流生産をSABIC の化学製品プラットフォームと戦略的に統合することよって、選択的な統合の相乗作用を生み出すことができ、それが当社のビジネスを支えると共に、株主にとっても価値を増大させると考えている。」
世界第4の石油化学企業SABICはこうツイートした。「サウジアラムコという企業グループに参入することを誇りに思う。これから共に目標を達成し、意義あるケミストリーを作り出していくことを期待している。」
PIFのうまみとしては、サウジアラビア国内の変革的プロジェクトに投資をするというその大胆な企業戦略のための資金源となる流動資産が得られることになり、海外でのバーゲン資産の買収にも有利になる。
さらにAl-Rumayyan理事は、「PIFはサウジアラビアの経済変革と成長を推進しており、この取引によってPIFの長期投資戦略のための資本が提供されてサウジ市民にとってもさらなる恩恵が生まれることになるだろう」と述べた。
SABICの会長兼最高経営責任者(CEO) Yousef Al-Benyan氏は、SABICの世界的企業規模と存在価値がアラムコへ「多大な進展」もたらすと述べた。
「化学製品の成長プラットフォームとしてSABIC は、エネルギーおよび化学製品の総合的生産というものにアラムコがもたらす規模の拡大、テクノロジー、投資チャンス、そして成長の機会から恩恵を受けることを期待している」とAl-Benyan氏は続けた。「我々は世界の化学製品の発展に貢献し、同時に今後ともサウジビジョン2030年の支援を継続していくことを嬉しく思う。」
この売買取引は昨年合意された通り1株当たり123.39リヤル(32.90ドル)で成立した。一方6月17日(水)のサウジ・タダウル証券取引所での市場価格は89リヤルだった。アラムコへ買収されなかったSABIC株の30%は引き続きリヤドで取引されることになる。
アラムコは株の支払いを2028年までの9回分割による約束手形の発行で賄う。最初の支払いはこの8月で、70億ドルとなっている。またアラムコは、石油市場における何らかの不特定条件に応じて2022年4月に30億ドルの前金を支払い、さらにPIFからのローン返済として20億ドルを支払うことにも同意している。
アナリストたちによると、この段階的支払い条件は、変動する石油市場におけるアラムコのキャッシュフローの負担を軽減できるように、また、アラムコの昨年の記録的な新規株式公開による多額の配当金の支払いを考慮して設定されたものだという。
アラムコは大株主としてSABIC の新たな取締役会の大半の役員を指名する権利を有して いる。
特別な6人体制による協働・統括委員会がAl-Benyan 会長の下に設置され、アラムコからは3名の委員が加わる。
SABIC 取締役会の3名は役職から退き、財務部シニアバイスプレジデントのKhalid Hashim Al-Dabbagh氏を含むアラムコの重役たちがその後任となっている。.