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世界銀行が指導者を非難する中、レバノン政府樹立の「最後の試み」

2020年4月28日に撮影。北部の町トリポリでレバノン兵士が銀行前の警備に立っている。この銀行は反政府抗議活動の参加者によって放火された。(AP)
2020年4月28日に撮影。北部の町トリポリでレバノン兵士が銀行前の警備に立っている。この銀行は反政府抗議活動の参加者によって放火された。(AP)
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03 Jun 2021 02:06:25 GMT9
03 Jun 2021 02:06:25 GMT9
  • 元議員、ハリーリ氏の首相指名辞任の可能性は低いと語る

ナジア・フサリ

ベイルート: 過去48時間、レバノンで新政府樹立のプロセスを救うための「最後の試み」と言われている件に関し、政治的な呼びかけや会談が活発化しているが、世界銀行は課題に対する指導者の政策対応は「非常に不適切」と語る。

世界銀行の代表団が指導者との会談のために訪問する木曜に向けて、組閣の取り組みが行われた。

「経済や財政の危機は、19世紀中期以降、世界で最も深刻なレベルであり、10位以内、場合によっては3位以内に入る」世界銀行はそう警告した。2019年末以降、レバノンは複数の課題に同時に直面してきたと述べられている。たとえば平時における最大の経済的・財政的危機、コロナウイルスの感染拡大、去年のベイルート港の大爆発などだ。

「課題に対するレバノン指導者の反応は公共政策の観点で非常に不適切であった」世界銀行はそう指摘した。

火曜日にはある程度の楽観論があった。会談はナビ・ベリ国会議長の仲介で開催され、大臣18名ではなく大臣24名での政府ということで承認される結果となった。

しかしミシェル・アウン大統領とその政党は内務大臣と司法大臣として2名のキリスト教徒を指名することにこだわっており、その点で障害物が残っている。

首相候補に指名されているサアド・ハリーリ氏のチームはこの立場を「8人の大臣と、さらに2名の大臣を指名することで『ブロッキング・サード(blocking third)』を確保しようとする試み」と称した。

月曜の夜、アウン大統領の義理の息子である自由愛国運動(FPM)のゲブラン・バシル党首と、ヒズボラおよびアマル運動党の代表者の間で会談が開かれた。この会談は、リークされた情報によれば、進展が得られなかったという。

情報筋は、バシル氏は大臣を2名、特に内務大臣を指名することにこだわりを見せており、ハリーリ氏に2名のキリスト教徒の大臣を指名させることを拒否したという。

ハリーリ氏の広報事務所によると、首相指名候補者のハリーリ氏は火曜、議会における自身の派閥に向けて、憲法の枠組みの範囲内で救済政府を樹立するために自分が申し出た内容についての概要を伝えたという。

未来運動党の副総裁であるムスタファ・アルーシ博士は、ハリーリ氏が首相指名候補者を辞任することは選択肢の1つではあるが、可能性は低いと語った。「新たな救済政府を待ち望んでいる人々に向けてハリーリ氏から一体何を伝えられるでしょう? 他の陣営が妥協しようとしないため、政府の樹立ができずにいるのです。我々は崩壊地点にまで到達してしまったとハリーリ氏は国民に言うでしょうか?」ムスタファ・アルーシ博士はアラブニュースにそう語った。「アウン氏の政党は、レバノンが政府無し大統領不在の状態になることを当てにしているのです。それによってアウン氏は自身の地位を維持することが可能となるのです」

「もし内部に『ブロッキング・サード(blocking third)』を確保しないまま政府が樹立された場合、アウン氏は来年の任期満了までに退任して官邸を去らねばなりません。一方、暫定政府と議会は、議会選挙を開催せずにアウン氏の任期が来年5月に終了した後は正当性を失うので、アウン氏と氏の政党は大統領官邸に居座ることができるのです。それは1980年代にレバノンが体験した崩壊の歴史を繰り返すことになるでしょう」

ハリーリ氏のメディア顧問であるフセイン・アリ氏は、自由愛国運動(FPM)は議会の集団辞職を行うと「脅迫」していたという。

「もし自由愛国運動党の議員らが辞職すれば、レバノン軍団の議員が後に続くでしょう。レバノン軍団は早期の議会選挙を要求している一派だからです」アリ氏はアラブニュースに語った。「早期の議会選挙を開催しても、当方は何も問題はありません。しかし、他の陣営はこのシナリオの準備ができているでしょうか?」

議会連合「Democratic Gathering」のメンバーであるビラル・アブドゥラ議員は、ベリ国会議長や進歩社会党のワリード・ジュンブラート党首によって取り組みが阻害された結果、ハリーリ氏の立場に「ある程度の柔軟性」が生じたことが、さまざまな兆候で示されていると語った。しかし、バシル氏とヒズボラおよびアマル運動党の代表との間で開かれた会談は否定的な結果に終わった、とアブドゥラ議員は付け加えた。

「現在起きていることは、国民が耐え忍んでいるレバノンの状況や、切迫した経済的・社会的状況の深刻さに対する認識が欠如していることを表しています」

AP通信によると世界銀行のレポートには、レバノンの2021年の国内総生産(GDP)は9.5%の縮小が予測されると書かれていたという。2020年には20.3%の縮小で、その前年には6.7%の縮小だった。

レバノンのGDPは2018年の約550億ドルから2020年には約330億ドルまで急落した。同時に、国民一人当たりのGDPはドル換算で約40%下落した。

レバノンの民間研究統計機関「Information International」は火曜のレポートに、約236万5千人のレバノン国民が貧困の影響下にあると書いた。

「約45%のレバノン国民が健康保険に入っていません。多くの地域が毎日10時間以上の電力不足に苦しんでいます」

レポートはさらに、95%の労働者が賃金をレバノンポンドで受け取っており、その価値が76%失われたことを明らかにした。2020年のインフレ率は85%に達し、2021年は最初の4ヶ月でさらに26%に達し、合計で111%となった。

去年10月22日、ハリーリ氏は新政府を樹立するよう指示された。当時のハッサン・ディアブ首相が8月4日の港湾地区での爆発事故後に辞職したことを受けたものである。

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