東京:日系コングロマリットのソフトバンクグループは、最大1兆円(88億ドル)をかけて自社株の約15%を買い戻すと発表。9日に最初の取引が行われ、同グループの株価は10%もの上昇を見せた。
ソフトバンクは、投資先企業の株価下落や中国での規制強化の影響を受け、四半期業績が赤字に転落したことを明らかにした後、かねてより市場で噂されていた自社株買いを発表した。
今回の取引により、ソフトバンク株は11ヶ月ぶりの日中上昇率となった。
今回の買い戻しは、ソフトバンクにとって、昨年の新型コロナウイルスのパンデミック時に実施した2兆5000億円の記録的な買い戻しに次ぐ、2番目の規模となる。ソフトバンクグループの株価は、その買い戻しの際に4倍になったが、その後、5月のピーク時から40%下落している。
ジェフリーズ証券アナリストであるアトゥル・ゴヤル氏は、ソフトバンクグループ最大の資産であるアリババに言及した上で、「買い戻しの履歴を分析したところ、SBG株は買い戻しの際にパフォーマンスを発揮する(インデックスやBABAを上回る)ことがわかった」とレポートで述べた。ソフトバンクはアリババ株の約4分の1を所有している。
中国のEコマース大手の株価下落と規制強化の影響により、孫正義社長が「ソフトバンクの成功を測る主要な指標」と述べたソフトバンクの純資産は570億ドル減の1870億ドルとなった。
今回の買い戻しの期間は来年11月8日までとなっており、昨年のような早いペースでの買い戻しよりも長期化する可能性があることを示唆している。
ライトストリーム・リサーチのアナリスト、ミオ・カトウ氏は、スマートカルマ上で、今回の買い戻しは「素晴らしい支援だが、ロケット燃料ではない」と投稿し、さらに「広範な技術、特に不採算の技術が低迷した場合、重大なダウンサイドリスクがある」と付け加えている。
資産価値と株価が乖離し、安値をつけていたことに経営陣は不満を募らせ、投資家は自社株買いを求めていたことから、ソフトバンクが自社株買いを開始するのではないかという憶測が数ヶ月前から流れていた。
当面の懸念材料には、チップメーカーのアームをエヌビディアに400億ドルで売却することに対する規制当局の承認が得られるかどうかがある。
レッデキスリサーチのアナリスト、カーク・ブードリー氏は、売却が遅れたことにより、「ソフトバンクは後に株式購入を強化することを期待して、このタイミングで自社株買いを発表するという柔軟性を得たのではないか」と分析する。
ソフトバンクは、トレーディング部門であるSBノーススターの活動を縮小する一方で、グループおよび孫氏自身が400億ドルの資金を投入しているビジョン・ファンド2への投資を強化している。
S&Pグローバル・レーティングのアナリストは、「ソフトバンクが一定の規律を持って財務管理を行っていたとしても、自社株買いが実行されれば、財務バッファーが浸食される可能性が高い」と指摘する。
ソフトバンクグループの9月末時点での現金および現金同等物の保有残高は5兆円を超え、半年前に比べて9%増加している。
ロイター