ベイルート:レバノンに入国するシリア難民の急増は、レバノン国内での反移民感情の高まりによる敵対行為をエスカレートさせている。一部の自治体はシリア人経営の商店のボイコットや非正規労働者の追放を呼びかけている。
キリスト教徒が多数を占める地域では、自治体が政府にレバノンの労働法の施行を要求し、シリア人経営の商店を閉鎖した。
シリア難民に対する市民の敵意が懸念される中、レバノン軍は北部国境ワディ・ハレド地域での不法越境の実態調査のためのメディアツアーを企画した。
高度に組織化された密入国ネットワークの助けを借りて、何百人ものシリア人がこの地域を通ってレバノンに渡っている。
ツアー中、軍は国境潜入の実態について詳細なプレゼンテーションを行った。
提示された写真や動画には、シリア人がどのように入国しているかが記録されていた。
その映像は、密入国ネットワークの周到さと、レバノンに逃れるシリア人が直面する危険を紹介していた。
クリップには、石の山の間に隠れている若いシリア人や、密入国あっせん業者からの屈辱に耐えているシリア人の姿が映し出されていた。
エリアス・アド准将は言う。「この地域の平坦な地形は密入国あっせん業者の動きを容易にしており、彼らが作った何百もの密入国ルートから忍び込む潜入者を捕まえることを難しくしている」
第一陸上国境連隊は、北部国境の110キロメートルの区間と、レバノン・シリアの東部国境区間に配備されている。
約1200人の隊員がレバノン領内にある31の拠点に駐留している。
駐屯地には、最新のカメラと暗視センサーを備えた監視塔が10カ所ある。
陸軍司令部によると、国境を守るためには10倍の人員が必要であり、連隊の任務を遂行するためにさらに1050人の隊員が必要だという。
陸軍の資料によると、連隊が配備されている区域には、約9万人のレバノン人が住む57の町と、約8万人のシリア難民の居住地、15の難民キャンプが含まれている。
チャドラの町の郊外にある監視塔だけでも、毎日少なくとも100人のシリア人の入国情報を確認している。
レバノンの治安当局と政治当局は、同国には200万人近いシリア難民がいると予測している。
この数値には、登録されたシリア人、合法的な労働者、合法的に居住しているシリア人家族、そして、不法にレバノンに入国した難民が含まれている。
レバノン・シリア国境ではここ数週間、不法移民の流入が急増している。
経済的要因がシリア人の大量移動の主な原動力となっている。
ある情報筋がアラブニュースに語ったところによると、シリア難民に対する国民の怒りと、メディアによるプロパガンダはこの1年で激しさを増している。
ここ数週間、レバノンの有名な報道機関による報道、声明、政治番組、毎日の新聞の見出しが、国民の反移民感情を煽っている。
これらのプロパガンダは、難民や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの国際機関を標的にしている。
ジアド・マカリ情報相は6日、レバノン国民にシリア難民による「脅威に立ち向かうために団結する」よう呼びかけ、論争に火をつけた。
彼は「シリア難民の問題に関しては、事態は限界に達している。レバノン人は団結してこの脅威に立ち向かうべきだ」と語った。
マカリ氏の発言は、ベイルートの東約8キロに位置するダウラ地区で5日夜に起きた自動車事故を受けたものだ。この事故により、多数のレバノン人とシリア人男性との間で争いが起き、その結果、この地域からすべてのシリア人を追放するよう求める声が高まった。
ある軍情報筋によると、地元住民に対して拡声器によるアナウンスが流れ、工業団地に住むシリア人労働者に対する集会と抗議を呼びかけたという。
労働者たちは、事故に巻き込まれた同胞への支援を示していた。
治安部隊が介入し、8人のシリア人を逮捕した後、事態を掌握した。
シリア人たちの書類は違法であることが判明し、彼らは治安総局に引き渡された。
レバノンの一部のデモ参加者は、シリア難民に対し、アパートからの立ち退きを要求している。6日、何人かのシリア人は標的にされるのを恐れ、店を閉めた。
ベイルートの東に位置するジェダイデ(Jdeide)、バウチリ(Bauchrieh)、アルサド(Al-Sad)地区の各市長は治安総局に書簡を送り、「レバノン人以外が営業しているすべての違法店舗を閉鎖」するよう要請し、その通知を自ら引き受けることを伝えた。
また3人の市長は、シリア人が経営する店に関する情報を提供することも申し出た。
UNHCRのダラル・ハーブ報道官は次のように述べた。「レバノンのUNHCR事務所に正式に登録されているシリア難民の数は79万5332人である。レバノン政府によるシリア危機への対応計画によると、その数は150万人、さらに200万人の脆弱な状況にあるレバノン人と約20万人のパレスチナ難民がいると推定している」
同委員会は、「レバノン政府および国際社会と非常に緊密に協力し、レバノン人および難民に恩恵をもたらしている」ことを強調した。
UNHCRは次のように述べた。「これらのプログラムの下で、UNHCRはレバノン政府と協力し、難民を第三国に再定住させるなど、難民の解決策を見出すことを目的として活動している」
「2011年以来、UNHCRだけでもレバノンの機関やインフラに3億7290万ドル以上を投資し、複数の危機に対応することで公共機関やインフラを支援してきた」