
レイラ・ハトゥム
ベイルート:ベイルート港で起きた化学物質の大爆発の影響で、レバノンは最大150億ドルの再建費に直面する可能性がある。レバノン政府の上級顧問が明らかにした。
爆発現場から遠く離れたキプロス島でも揺れを感じたほどの大規模な爆発により、少なくとも100人が死亡、数千人が負傷したほか、30万人のベイルート市民が住む家を失った。
爆発の原因は、2013年に没収されて以来倉庫に不適切に保管されていた3トンの硝酸アンモニウムとみられてる。硝酸アンモニウムは農業用肥料として広く利用されているものだ。だが、経済苦境、通貨の崩壊、高まる社会不安といった状況が何か月も続くレバノンでは、爆発は政府の怠慢や財政管理の不行き届き、汚職が国中で何年も続いた結果として見られている。
大統領の財務顧問を務める経済学者のシャーベル・コルダヒ氏は、補償を含む爆発による損害の費用を約150億ドルと見積もった。
「レバノンの貿易の最大70%がベイルート港を経由しています」とコルダヒ氏はアラブニュースに語った。
「国内の空港やその他の港を使ってもこの貿易量のわずか30〜40%しか処理できません。シリアとの国境を開けばさらに20%が助かるかもしれませんが、つまり少なくとも50億ドル分の輸入品が国に入る道を見つけることができず、さらに20億ドル分の輸出品が今後8か月間は国に留まるということになります。これは約40億ドルの損失にあたります。国内総生産の15%が損失することになるのです」と述べた。
国際援助プログラムなしでは「レバノンはこの災害に立ち向かうことはできません」とコルダヒ氏は付言した。
爆発はレバノンの国民にとって、何か月にも及ぶ苦境をしのぐほどの被害を与えることになった。今や国民のほぼ半数が貧困線以下で生活するなか、広まるばかりの経済危機が新型コロナのパンデミックの影響でさらに悪化し、政府や政治階級に向けられた国民の怒りが高まっていた。
国の貿易玄関口であるベイルート港の損害を評価する取り組みはすでに始まっている。第二の優先事項は、食料安全保障を回復すること、そして穀物サイロが破壊された現在、国内の小麦不足を防ぐことである。さらに、自宅を失った住民に対しては、できるだけ早期に住む家を支給する必要もある。市当局の高官にとっては、医薬品を確保し、環境への影響を軽減することも優先事項となる。
ベイルートでは、まだ自宅に戻ることができない市民も多い。見た目には建物に損傷がなくても、マグニチュード4.5の爆風により構造に損傷が及んでいる場合があるからである。
「ベイルートの復興には他国からの支援が必要です」と高等扶助評議会のモハメッド・ハイル事務総長がアラブニュースに語った。「2006年のイスラエル侵略後の支援と同じように、ベイルートの通りや町内の再建にあたり、各国からご支援いただければ大変ありがたいです。それが最善の方法だと思われます」
ハイル氏はまた、政府が被害のあった全世帯に住宅を提供することができないかもしれないとして、仮設のプレハブ住宅に対する支援も訴えた。
ベイルートのマルワン・アブド県知事は、被害総額は30億~50億ドルに上るとし、国際社会およびレバノンのディアスポラに支援を求めた。
保健省当局者はアラブニュースに対し、医療機器、特に大手術に必要な機器が国内で不足していると語った。海外からの援助によって不足分が埋められることを望んでいるという。
爆風による環境への影響全体の評価にはまだ時期尚早だが、環境専門家のモスタファ・ラード氏は、爆風によって硝酸が充満した有毒な雲が陸地から外洋に運ばれたことから、さらに大きな災害は回避された可能性があると述べた。
「硝酸アンモニウムの残留物によって気温が下がり、酸性雨が引き起こされるのではと心配していましたが、大気サンプルをテストした結果は緑色で、雲は海の上に消えました」とした。