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インタビュー:Lucid Airが電気自動車の変革を次のレベルへと導く

イラスト:ルイス・グラニェーナ
イラスト:ルイス・グラニェーナ
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13 Sep 2020 07:09:17 GMT9
13 Sep 2020 07:09:17 GMT9
  • サウジアラビアが出資する自動車メーカーのCEO、ピーター・ローリンソン氏は「世界最高の車」を発売するにあたり、ガソリンエンジンにとって「不吉の前兆」があると考えている
  • Lucid AirはBMWやMercedesなどのドイツメーカーが支配する高級サルーン市場を、臆することなく狙っている

フランク・ケイン

Lucid MotorsのCEO、ピーター・ローリンソン氏は「あなたは、まだ何も見ていません」と言う。自ら「世界最高の車」と呼ぶ車を発売し、画期的な電気自動車(EV)技術について話していたことを考えると、それは随分な主張だった。

ローリンソン氏は、テスラSのデザインを担当する以前は、スポーツカーの伝説的存在であるロータスで自動車デザインのビジネスを学んだ。同氏は、Lucid Air (先週発売されて、オンラインで大きな話題になった)が、モータービジネスにとってだけでなく、世界にとっても大変革をもたらすと信じている。

「私たちは世界で最高の車を作りましたが、それ以上に、普通の人たちのために、より手頃な価格のモデルのラインナップを増やせる技術を持っていることに興奮しています。 それこそが世界を変えるものであり、単に高級車を売るだけではありません」とローリンソン氏はアラブニュースに語った。

それをさらに魅力的にしているのは、この地球を変える技術を可能にしたのが、過去1世紀にわたって従来型の炭化水素産業の世界的なハブとして知られてきたサウジアラビアであるということだ。もしガソリン車が電気自動車に道を譲ることになった場合、あるいはその時には、サウジアラビアは損をする立場にある。

サウジアラビアの政府系ファンド(PIF)は、Lucidの過半数の株式を保有し、2018年に同プロジェクトに10億ドル以上を投資した。「私たちはPIFの信頼を得ています。PIFの信頼を得たことで、今日の私たちの成長があります」とローリンソン氏は言う。

同氏は、Lucid Airの発売は、電気自動車市場が本当に飛躍する瞬間になると考えている。来年春に米国でデビューする予定のこの車は、現在、電気自動車市場で販売されているどの車よりも優れた性能、長い航続距離、快適なデザインを誇り、早ければ来年には中東でも販売される可能性がある。

Lucid AirはBMWやMercedesなどのドイツメーカーが支配する高級サルーン市場を臆することなく狙っており、価格はモデルや仕様によるが、1台あたり約9万~17万ドル。生産初年度以降には、値下げが予定されている。

また、電気自動車生産分野で疑う余地のないリーダーであり、世界で最も価値のある自動車会社であるテスラとの対決は避けられないが、ローリンソン氏はその見通しを恐れていない。

「テスラのモデルSは、美しくデザイン・設計されていて、間違いなく大きな影響を与えていますが、高級車市場を狙ったものではありません。モデルSは最初の試みとしては良いものですが、私たちはこれを別のレベルに引き上げることができると感じていました」と同氏は語った。

経歴

出身地:イギリス、南ウェールズ

学歴:理学士(工学)インペリアル・カレッジ・ロンドン

職歴

  • ジャガー、主幹エンジニア
  • ロータス・カーズ、チーフエンジニア
  • Corus Automotive、車両エンジニアリング責任者
  • テスラ、モデルSのチーフエンジニア
  • Lucid Motors CEO

「まだまだこれからです。世の中には私のことを正気ではないと不信感を抱く人がいるかもしれませんが、私はモデルSを設計した人間です」と同氏は付け加えた。

ローリンソン氏は、テスラはライバルだが、電気自動車市場では「どちらか一方のみが生き残る」ケースとは考えていない。市場には2つのメーカーを受け入れる十分な余地があり、特にLucidが選択した市場は高級車市場だ。

「私たちは明白に、通常、ガソリンエンジンを搭載しているヨーロッパの高級ブランドをターゲットにしています。これは1,000億ドル規模の市場であり、私たちがその表面をこすり取って、テスラから顧客を一人も奪わなければ、私たちのビジネスは成功するでしょう」と同氏は述べている。

同氏は、既存のガソリンエンジンが大勢を占める業界による電気自動車分野での取り組みはうまく行っておらず、ポルシェやアウディのようなメーカーは、同氏がLucid Airで実現した航続距離や性能の効率性を実現していないと考えている。

Lucid Airの鍵は、同氏によると、電気自動車をゼロから開発できたことにあり、電気自動車に関する部分以外の設計はすべて既存のガソリン車の在来技術を念頭に置いて開発してきたという。Lucidは、バッテリーサイズからパワートレイン、車載技術に至るまで、これまでの自動車業界では見られなかった範囲で電気自動車を小型化してきた。

「より大きなバッテリーを詰め込んで大きなスペースを取ることは、だれにでもできます。 それは3Dパズルを解くようなもので、小型化によってパズルのルールが変わります。 エンジンや電子機器を非常に小さくすることができるので、乗客のためのスペースを大きく確保することができます」とローリンソン氏は説明する。

同氏は、Lucid Airをイギリスのテレビシリーズ「ドクター・フー」のファンにはお馴染みのタイムマシン「ターディス」に例えた。「外見は小さくても中は驚くほど広々としています」

小型化はまた別の展望を切り開く。より効率的で航続距離の長いバッテリーは、はるかに高い性能を発揮する。LucidのAtievaバッテリーは、サウジアラビアのモータースポーツイベントで披露されたフォーミュラEの車両に電力を供給している。しかし、小型化は電気自動車の大衆市場への導入の鍵となる可能性もある。

「その利点は、コンパクトさ、効率性、そして大量生産が可能であることです。輸送につきもののコストを下げることができれば、本当に面白いことになります。だれが3万ドルの車を作るのか? 私たちではないかもしれませんが、私たちの技術をホンダやトヨタにライセンスすることは可能です」とローリンソン氏は述べた。

すべてが計画通りに進めば、環境問題研究家や経済学者の間で話題になっている「エネルギー転換」への道に沿った次のステップになる可能性がある。エネルギー転換に取り組む社会では、化石燃料は世界の主要な交通手段として電気自動車に徐々にではあるが必然的に取って代わられる。

エネルギー転換の中で、世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアが果たす役割は、一見、反直感的かもしれない。PIFは、Lucid Airプロジェクトを結実させるためにLucidに資金を投入した。そして、次の大きな取り組みである2023年に計画されているSUVを生産に移すために、より多くの資金を要求される可能性がある。「表面上それは矛盾していますが、もう少し詳しく掘り下げれば、それは明らかです。サウジアラビアにはビジョン2030があり、サウジアラビアとPIFは知的な集団です。 彼らは石油がいつか枯渇し、太陽の光はそれよりもずっと長く存在することを知っています。彼らは、ガソリンエンジンにとっての不吉の前兆を認識していると思います」とローリンソン氏は語った。同氏は「彼らは、将来世代のために未来を守ろうと先を見据えています。私たちは皆同じ空気を吸っているので、世界全体が恩恵を受けると思います。気候変動は現実に起きています」と付け加えた。

ローリンソン氏は、同氏のエネルギー貯蔵システムは、サウジアラビアのエネルギー産業、特に太陽エネルギーの分野で、今までの仕組みを変えるような結果をもたらす可能性があると考えている。 

同氏は「サウジアラビアにとっては素晴らしいことでしょう」と言う。ローリンソン氏は「サウジアラビアでは十分に太陽の光を得ることができ、実際に太陽光を利用するべきです」と主張し、効率的なバッテリー電源は、農業、鉱業、重機の電源やドローンなどの産業の多くの分野で利用できることに言及した。

サウジアラビアはビジョン2030戦略の一環として、地元の雇用を増やし、自国の技術を向上させるために、産業とハイテクの成長を望んでおり、ローリンソン氏はすでにサウジアラビアに生産能力の一部を置くことでこれを支援することを約束している。

「私たちは、サウジアラビアの自動車産業の創立を支援したいと考えています。 純粋な電気自動車産業を誕生させるというのはパラドックスのように思えるかもしれませんが、それだけ彼らは未来を見据えているということです」と同氏は述べた。 

同氏はまた、航空ビジネスについて考え始めている。航空機は、多くのエネルギー専門家によって電化の最終的な目標とみなされているが、バッテリーの効率と航続距離の要因に大きな問題がある。長距離飛行用のジェット燃料に代わる本当に実現可能な代替手段はまだだれも思いついていない。

「私は電動航空機に乗りたいと思っています。完全に狂っているように聞こえるので、とても口に出して言えませんが、今後10年以内には、比較的短距離の電気飛行機の開発が爆発的に進むと思います。私たちには、電動航空機に必要なバッテリー技術と統合されたパワートレインソリューションのすべてがあります」と同氏は述べた。

10年はそんなに遠い未来ではない。そして、ローリンソン氏は今のところ、アリゾナ州の生産施設を完成させて、Lucid Airの販売を開始することに注力している。Lucid Airは、来年の春にまず米国で、その後、ヨーロッパと中東では来年後半、あるいは2022年初頭に販売を予定している。中国という巨大市場への参入は、最後になるだろう。

「最初の車の生産を開始することは非常に大きな意味があります。失敗すると良くないので、仕事の大変さは自覚していますし、それなりの謙虚さを持って取り組んでいます。しかし、これは非常に特別なことです。私たちは電気自動車の可能性を再定義することができ、その技術は画期的なものです。他のだれも私たちに近い技術を持っていません」と同氏は語った。

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