
日立製作所は16日、英国の原発建設事業から撤退すると発表した。2019年1月の計画凍結後も追加支援をめぐる英側との協議は進まず、採算の見通しが立たないと判断した。同日までに日英両政府に撤退方針を伝えた。
原発輸出は安倍晋三前政権が推進してきた成長戦略の柱の一つ。日立の撤退で日本メーカーによる原発輸出計画は事実上なくなり、政府の戦略も頓挫することになる。
日立は12年に英原発事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーを買収し、英中西部アングルシー島に原発2基の建設を計画していた。ただ、資金調達をめぐる英政府との協議が難航し、計画を凍結していた。
日立は19年3月期に凍結に伴う関連損失として約3000億円を計上しており、今回の撤退に伴う業績への影響は軽微となる見込み。今後は、英側と建設予定地の扱いなどについて調整を進める。ホライズン社については清算か売却を検討するとみられる。
原発建設をめぐっては、東京電力福島第1原発事故を受けた安全対策基準の引き上げにより、世界的に事業費が当初の見込みを上回る事例が相次いでいる。日立の英原発では2兆円から3兆円規模に拡大。三菱重工業がトルコで計画した原発建設でも事業費が2倍超へ膨れ上がっているとされ、同社は事業を断念する方向で検討している。
大手原発メーカーの関係者は「事故時のリスクに加え、安全対策の強化に伴う建設費用の増加により原発建設のメリットは薄れている」と指摘した。
JIJI Press