• ナーセル氏は、COVID-19感染拡大の第二波の影響という脅威はあるが最悪の状況は脱した兆候が見られると語った。
• ナーセル氏は来週のカンファレンスで、エネルギー業界幹部の年間ベストとして表彰される。

フランク・ケイン

ドバイ： サウジアラムコの社長兼CEO、アミ―ン・ナーセル氏は、国際的な石油市場はこれまでエネルギー業界で働いてきた中で見た最も難しい状況だったが、それを脱した。今後も状況は良くなっていくだろうと語った。

ナーセル氏は今週のカンファレンス前のエナジー・インテリジェンスとのインタビューで、世界的な経済封鎖によって石油ビジネスが激しく打撃を受けた過去6ヶ月の状況は、これまで起こった原油市場の循環的景気後退とも異なっていたと語った。

「これまでとはまったく違っていた。私の世代の人間はこんな状況を体験したことはない。世界のどこの国も、こんな状況を体験したことはないはずだ。経済的な影響や世界中で起こっていたことを顧みれば、一大事であることは明らかだ」と、ナーセル氏は言った。

だが、COVID-19の感染拡大の第二波の脅威はあるものの、最悪の状況は脱した兆候はあるとナーセル氏は話す。「現時点では、状況改善のペースは上がっている。だが、もちろんこれは、ワクチンができるか、いつ頃使用可能になるか、第二波が起こるかどうか、起こるとしたらどの程度の規模になるかなどの要素による。一進一退になることもあるだろう。だが、良い兆候は見えている。来年の第4四半期には市場は上向いていると予想している」

4月には一日の世界的な石油の需要は約1億BPDから7500万～8000万BPDにまで急降下し、アメリカの原油価格の指標となるWTI原油は短時間ではあるが1バレル－40ドルになった。つまり、生産者が顧客にお金を払って原油を引き取ってもらうという状況だ。

「最悪の状況は脱し、異常な低下を見せた需要が急回復しているのは心強い。国際エネルギー機関は、需要は今年の第4四半期までに9600万BPD、来年末には9900万BPDにまで回復しているだろうと予想している」と、ナーセル氏は言う。

需要の回復は特にアジアで顕著だ。「アジア、特に最大の市場である中国は力強い回復を見せている。中国ではほとんどすべての石油製品への需要はコロナ禍前のレベルに戻っている。ジェット燃料をのぞいてだが」

昨年、サウジ証券取引所に上場し、時価総額が世界一の石油会社となったアラムコ社は、原油価格の低下による収益減少の事実を踏まえ、自社の経済状況を監視している。

「原価統制を強化し、資本の融通性に重点を置いている。設備投資に関しては非常に堅実に、資本統制に忠実になるようにしている。プロジェクトはすべて監視し、ある程度裁量がきくものは必要があれば引き延ばし、1200万BPDの最大原油産出能力を維持している。また、ガス事業のポートフォリオの拡大も継続していく」と、ナーセル氏は語る。

「非常に注力しているのは資本統制と株主の利益最大化だ。第1、第2四半期にはそれを実現した。困難な状況ではあったが、配当金に関してはしっかりと義務を果たした」

既存の事業からも「より価値を絞り出す」機会があったとナーセル氏はつけ足した。特にダウンストリーム事業においてだ。パイプライン事業などの既存事業のスピンオフ、または再融資を提案したエネルギー専門家もいる。

「やるべきことをやり、この部（アラムコ社内の新たな経営企画部）の計画が我が社の長期的目標である、社内の主要事業とパートナーが最大限に活用できる要素を保持するという戦略に確実に沿うようにする。そのためには、慎重なレビューを行う必要があり、それにはある程度の時間がかかるだろう」と、ナーセル氏は言った。

来週のカンファレンスで、ナーセル氏はエネルギー業界幹部部門の年間ベストとして表彰される。「ナーセル氏はサウジアラビアと国際石油市場が大きな変動と混乱に見舞われた時期に世界最大の石油会社を導いてきた」と、エナジー・インテリジェンスは書いた。