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「株式市場こそが重要なのだ、愚か者」 ― トランプ氏の主張が空虚に見える

ドナルド・トランプ氏は、来週末までにジョー・バイデン氏が大統領に選出されるかもしれないということをウォール街が懸念しているのだと反論するかもしれない。(APフォト)
ドナルド・トランプ氏は、来週末までにジョー・バイデン氏が大統領に選出されるかもしれないということをウォール街が懸念しているのだと反論するかもしれない。(APフォト)
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30 Oct 2020 03:10:57 GMT9
30 Oct 2020 03:10:57 GMT9
  • 任期中を通じてS&Pが最高値を更新するたびに同氏の能力の高さの証であり同氏個人が収めた勝利だとして宣言してきた現職大統領にとって、今回のウォール街の下落はあり得る中でも最悪のタイミングと言える
  • Apple、アマゾン、Alphabet、Facebookなどの第3四半期の決算報告が控えており、その数字の受け止められかた次第では指数が伸びる可能性がある

フランク・ケイン

1992年の米選挙を前に、ビル・クリントン候補は自分が大統領になるとしたらどんな理由になるかをまとめた。「経済こそが重要なのだ、愚か者」 有権者がジョージ・H・W・ブッシュ大統領の経済政策を見限りクリントン氏を選出したことで、同氏の正しさが証明された。

3月にCOVID-19のパンデミックによって米国経済が荒廃し始めるまでは、ドナルド・トランプ大統領も同じ主張ができたであろう。同大統領の就任から4年間、米国経済は前大統領が主導した2009年の世界金融危機からの回復に向けて歩みを進めてきた。

成長、雇用、インフレなど、ほとんどの指標でトランプ政権の数年間は好調であり、その恩恵を受けた人々は、同氏が政策の柱とした大規模減税に感謝する理由がさらに増えた。

パンデミックは、ロックダウン対策が経済に衝撃を与え、数週間の間にすべてを変えてしまった。雇用保険請求は過去最高を記録し、倒産や閉鎖はアメリカのビジネスの大部分に影響を与え、国内総生産は崩れ落ちてしまった。国際通貨基金は、今年の米国経済は4.3%縮小すると予測している。

しかし、トランプ氏は再選される場合の理由として、(クリントン元大統領のスローガンの)代わりに「株式市場こそが重要なのだ、愚か者」と主張できる。数兆ドル規模の財政刺激策を経済に投入したことが主な要因で、経済情勢に逆らって米国の株価指数が上昇したからである。

9月にはS&P500指数が史上最高値を更新し、自身の政権下で投資家や日々の暮らしが金融業界に依存している何百万人もの人々にとってS&P500指数がこれほどにも良くなったことはなかったとトランプ氏は胸を張ることができた。

だが今では、その最終的な主張さえも脆くなってきているように見える。ここ数日、米国と欧州の株式市場は、COVID-19感染件数の増加と多くの国での経済封鎖の再実施に投資家が恐怖を感じたために逆方向に転じてしまったのだ。

トランプ氏は、来週末までにジョー・バイデン氏が大統領に選出されるかもしれないということをウォール街が懸念しているのだと少し正当化して反論するかもしれない。確かに対立候補は、定義の上では、経済政策的には未知数の存在である。

同氏はまた、環境分野の規制強化、ヘルスケアへの支出増加、連邦政府のサービスやプロジェクトへの増税など、伝統的に「自由市場」アメリカの哲学に反するとみなされてきた政策を支持していることでも知られている。

特にエネルギー業界は、バイデン氏とその「グリーン」チームが支持しているとされるシェールオイルとガスの生産制限の可能性を懸念している。しかし、民主党の大統領候補は、一部の環境保護主義者が望んでいるようなシェールガスのフラッキングを禁止する考えはないと具体的に述べていることを指摘しておく必要がある。

興味深いサイドストーリーでは、選挙人団という観点で最大の州の一つであるテキサス州は、バイデンに関してエネルギー業界が恐れている話が本当ならば、他のどの州よりも失うものが大きいように見える。とはいえ世論調査によると、民主党と共和党の間の戦いは、過去数十年前で最も接戦となっている。

任期中を通じてS&Pが最高値を更新するたびに同氏の能力の高さの証であり同氏個人が収めた勝利だとして宣言してきた現職大統領にとって、今回のウォール街の下落はあり得る中でも最悪のタイミングと言える。この株高の主張すら選挙戦の最終週に否定されてしまうと、世論調査で明らかな苦戦がさらに厳しいものになってしまうだろう。

IT大手が救いの手となる可能性はある。Apple、アマゾン、Alphabet、Facebookなどの第3四半期の決算報告が控えており、その数字の受け止められかた次第では指数が伸びる可能性がある。今年前半に市場が大きく伸びたのも、上記各社によるところが大きかったのだ。

しかしトランプ氏にとっては、それもあまりにも小さく、遅きに失しているかもしれない。ウォール街とメインストリートがついに憂さ晴らしに間に合ったかのようにも見え、大統領にはどうすることもできないのだ。

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