富士川口湖:日本の雄大な富士山は約70万年の歳月をかけて形成されたが、ある蒸し暑い5月の朝、姿を消した。
少なくとも交通量の多い道路の片側では、日本のシンボルである標高3,776メートルの富士山と、その下にあるコンビニエンスストア「ローソン」の眺望が消えてしまったのだ。観光客の間で流行していた写真撮影スポットを遮るため、当局が20メートル×2.5メートルの防壁を完成させたからである。
地元の人々にとって、大量の観光客と、彼らがゴミのポイ捨てや駐車に関するルールを守らないことは、迷惑行為や交通の障害となっていた。
「富士河口湖町に住む勝又菊枝さん(73)は、「外国人がこの町に来てくれるのは本当に嬉しい。「でも、ローソンから写真を撮るとなると、道がちょっと狭いし、横断歩道を使わずにダッシュで渡られると危ないんです」。
3月と4月は、パンデミック後の需要の高まりと、円が34年ぶりの安値まで下落したことで日本が魅力的なバーゲンとなり、観光客の入国者数で過去最高を記録した。観光庁によれば、2024年1~3月の旅行者の消費額は過去最高の1兆7500億円(112億ドル)に達し、経済にとっても朗報となった。
富士山の眺望を遮るという思い切った決断は、日本が観光ブームの結末を見定めようとしている日本全体の緊張を象徴している。西部の大都市大阪や箱根の温泉街は、観光客の殺到に対処するために新たな観光税を検討している自治体のひとつである。
フランスから訪れた45歳のシリル・マルシャンさんは、ネットでこのフェンスのことを知り、この景色を見る最後のひとりになるために特別な旅をした。彼は地元の人々に共感したという。
「車を見ずに道路を横断する人々に問題があるかもしれないことを考えると、あのフェンスを設置することはそれほど悪いことだとは思わない」と彼は言った。
ロイター