
フランク・ケイン
ドバイ―原油価格は9日、新型コロナウイルスのワクチン開発と、石油供給量の引き締めを維持するOPECプラス同盟の協調行動という2つの光明を背景に高騰した。
世界の経済停滞に終止符を打つ希望が出てきた中、世界的指標であるブレント原油の1バレルあたりの価格は9%上昇して43ドルとなり、世界の株式市場の株価も高騰した。
米製薬大手ファイザーとドイツの提携先であるバイオエヌテックは、4万人以上を対象にした治験の結果、両社の新型コロナウイルス向け新薬が90%の有効率を示したと述べた。両社は米国での導入に向けた最終関門を突破後、世界中で今年中に5000万回分、来年には13億回分を供給できる可能性がある。
「我々は世界中の人々に対し、この世界的健康危機の克服を支援するための待望の突破口を提供するべく、重要な一歩を踏み出している」。ファイザーのアルバート・ブーラ会長兼最高経営責任者はこのように述べた。
アブダビでのエネルギー会議の席上、サウジのエネルギー相であるアブドゥラジズ・ビン・サルマーン王子は以下のように述べた。「我々は、ワクチンという形でウイルスを抑制するという解決策と、そのワクチンの入手可能性の拡大が、最も意義深い現状の緩和をもたらし得ると期待している」
また、アブドゥラジズ王子は、石油供給を制御するため、さらなる行動を起こす可能性を示した。石油供給はこのところ増加してきており、価格を押し下げている。
アブドゥラジズ王子は、OPECプラスの主要な輸出国であるサウジアラビアとロシアが、現行の供給取引を変更する可能性があることを初めて公式に示した。
OPECプラスは来年1月以降、世界市場への石油供給量を日産200万バレルに戻す予定だが、そのタイミングを微調整するとの憶測も出ていた。
「微調整については、友好国と協議した上で、いわゆるアナリストが示唆しているようなレベルを超えたものにするかもしれない」。アブドゥラジズ王子はこのように述べた。エネルギー関連の専門家の一部はこれまで、現行の日産770万バレルの削減レベルが、さらに3ヵ月間維持される可能性があると予想してきた。
「我々は思考の柔軟性を維持しながら、市場を注視している。私は予想はしないが、そうした予想を投げかけている人々の一部は、驚くことになるかもしれない」と、同王子は述べた。石油取引業界は同王子の発言について、OPECプラスの現行の供給レベルが、来年以降もしばらく維持される可能性があることを意味していると理解している。
アブドゥラジズ王子は、欧州で新たなロックダウンが行われ、市場に予想以上のリビアの原油供給量が戻ってきている中では、OPECプラスの取引がなければ、石油価格はさらに下落するだろうと述べた。
同王子は米大統領選に勝利したジョー・バイデン氏を祝福する一方、イランの石油輸出がそのバイデン氏による制裁緩和で可能になったとしても、OPECプラスは“弾力性を保ちつつ”石油の追加供給に対処できるだろうと述べた。
また、バイデン新政権の優先事項のひとつとなる気候変動についてアブドゥラジズ王子は、国際的な協力が必要であるとし、「循環型炭素経済を志向するという点では、多くの人々が我々と同じ意見だ」と述べた。