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経済学者らによると、GCCの改革はパンデミックにもかかわらず軌道に乗っている

湾岸地域では昨年中頃にウィルス感染者数がピークに達し、その対応策としてGCC諸国では厳しいロックダウン体制と渡航規制が課された。(Shutterstock)
湾岸地域では昨年中頃にウィルス感染者数がピークに達し、その対応策としてGCC諸国では厳しいロックダウン体制と渡航規制が課された。(Shutterstock)
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11 Feb 2021 11:02:47 GMT9
11 Feb 2021 11:02:47 GMT9
  • 国際通貨基金のサウジアラビア使節団団長:「2020年にはマイナス成長であったが、2021年には回復が見込まれる」

サラ・グラブ

ロンドン:ペルシャ湾岸諸国が直面する経済課題としてコロナウィルスのパンデミックが際立っているが、彼らの経済の方向性を変更させるものではなかった、と専門家たちが2月10日(水)のバーチャル会議で述べている。

このコメントはロンドンのチャタムハウス主催による湾岸協力会議(GCC)の経済見通しに関する会合からのものだ。

国際通貨基金(IMF)の中東・中央アジア部門のアシスタントディレクター、ティム・キャレン氏によると、GCC 諸国は2020年に二つの重大な打撃に直面したと言う。COVID-19 のパンデミックと石油価格の暴落だ。

同地域では昨年中頃にウィルス感染者数がピークに達し、その対応策としてGCC諸国では厳しいロックダウン体制と渡航規制が課された。しかし、感染者数が減少し始め、ロックダウンが緩和されると、昨年後半には経済が回復し始めた。

「GCC当局は経済的打撃を低減させるために一連の適切な対応策を実行し、財政刺激策、金融・マクロプルーデンス体制の緩和、銀行制度への流動資産の投入などを行った」とIMF の報告書に記されている。同報告書は昨年12月に発行されたもので、湾岸諸国による前述の二大課題への取り組みについて報告されている。

2021年に入ってから再びCOVID-19感染の急増がみられ、特にアラブ首長国連邦において顕著となっている。それによって一段と厳しい予防策がとられ、経済活動にさらに影響を及ぼしている。一方、同地域の諸国の中には、ワクチン投与の普及率が世界の他の地域を上回っているところもある。

ほとんどの国において2020年前半の経済成長率は大きく低下し、第2四半期にその打撃が最大となっている。しかし、ほとんどの場合、第3四半期には回復を見られている。2月10日(水)にサウジアラビアが発表したデータによると、第4四半期に入ってもその回復基調が継続していることがうかがえる。

IMFのサウジアラビア使節団長を務めるキャレン氏は、「2020年にはマイナス成長であったが、2021年には回復が見込まれる」と言う。

石油価格は先頃パンデミック前以降最高レベルに達し、これはサウジアラビアの生産削減によるところが大きいが、その一方で、長期的にみると石油歳入は減少し、政府支出は緊縮を強いられることになるだろうとIMF は予測する。

「朗報として、一部の国ではすでに財務調整に取り組んでいる」とキャレン氏は言う。しかし、政府の財政緊縮には「公共部門の人件費、制度、非石油、税収ベースなど、すべての側面を網羅する財政改革を持続させていくことが必要となる。また、今のところすべての国で付加価値税が導入されているわけではない」と語っている。

アメリカン・エンタープライズ研究所の常勤研究者カレン・ヤング氏は、「2020年に見られた政策変更は、2015年以降行われていることの続き」であり、軌道から外れたものではないと言う。

 

さらに、「COVID 禍によって経済の多角化政策が生まれ、それは渡航、観光、ロジスティクス、エンターテイメント、新たなタイプの投資などを含めた革新的なものであったが、同時に実行がさらに困難なものだった」とも述べている。

 

キャレン氏はGCC諸国によって実施されている「ビジョン」プログラムについて賞賛し、そのプログラムは順調に進行していると述べたが、一方で、石油にあれほど大幅に依存している経済をいかに多様化させていくかが大きな課題だと言う。

国連の西アジア経済社会委員会のローラ・ダシティ事務局長は、現行の改革も重要だが、追加的な改革も必要だと言う。

「GCC諸国の経済は、国の支出に依存する中流階級を生み出している」とクウェートの元閣僚、ダシティ氏は言う。「この状態を持続していくことは不可能であり、社会契約というものが将来的な国家の安定に関する重要課題となる」

彼女によると、ほとんどのGCC諸国において、政府支出の約83%が人件費や補助金といった経常支出として出ていくが、「今後は、石油収入から支払われていたこのような経常支出が、石油収入だけでまかないきれなくなる」という。

「中流階級が政府の支出に依存するのに対して、国の経済へ富をもたらすような中流階級をつくり出していく方法を考える必要がある」とダシティ氏は言う。「中流階級に対し、外貨を生み出すような経済活動を行う機会を創出していく必要がある、特にGCCは非常に多くの輸入を行っているのだから」

経済については、GCC 諸国は物資よりもサービス部門に優れており、金融サービス、テクノロジー、イノベーション、起業、グリーンテクノロジー(環境技術)といった部門における世界市場でも競争力を発揮することが期待される、とダシティ氏は言う。

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