
山口廣秀前日本銀行(日銀)副総裁は、日銀は金融政策によって国民の認識に影響を与えることができるという考えを捨て、緩和長期化のコスト上昇について精査する「本物の」見直しを行わなければならないと述べた。
日銀は、その政策が債券利回りを押しつぶし、市場流動性を干上がらせ、株価を歪めているとの批判を受けており、来月、金融政策ツールをより持続可能なものにするための見直しを行う予定だ。
しかし、2010年に日銀が初めてETF(上場投資信託)の購入を開始した際に副総裁を務めた山口氏は、3月の見直しでは日銀の景気刺激策のコストがあまりにも大きくなり、緩和に至らないと述べた。
「日銀が経済や市場に大きな影響をもたらす事ができる可能性は低い」と同氏は月曜日のロイター通信のインタビューの中で語った。
「見直しはおそらく、コストに対処するために『何か』をしているという仕草を見せるだけになるだろう」と、現職の政策担当者に強い影響力を持つ山口氏は語った。
イールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みの下、日銀は短期政策金利をマイナス0.1%、10年物国債金利を0%前後に誘導している。また、インフレを引き起こすために、ETFなどのリスク資産を購入している。
日銀では、見直しで議論される可能性のあるアイデアとして、10年物国債金利が目標の0%からさらに乖離することを許容し、ETFの購入を機敏にして、株が好調なときには購入を遅らせることができるようにすることが挙げられている。
しかし、より大きな利回り変動を許容することは、イールドカーブに対する日銀のコントロールの限界を浮き彫りにし、YCCの実現可能性を損なう可能性がある、と山口氏は述べた。
「長期金利を長期にわたって狭い範囲内でコントロールするのは難しい」と述べ、YCCの見直しを求めたが、これは日銀の選択肢からは外されていることである。
山口氏はまた、日銀のETF買い入れを中止するよう呼びかけた。この刺激策が続けば、日銀は「株価を支えるために金融政策を使うことになってしまう」可能性があるからだ。
「せめて、日銀はETFの保有量が増え続けている現状をできるだけ早く終わらせなければならない。」
日銀が2010年にETFの購入を開始した際には、購入量が管理可能なレベルに留まるように、資金プールを利用していたと、その決定に携わった山口氏は述べた。
山口氏によると、2013年に日銀のトップに就任した黒田東彦総裁は、その慎重な姿勢を崩したという。黒田総裁は、利用可能なあらゆる手段を一挙に投入することを公約に掲げ、その年に「バズーカ」と呼ばれる景気刺激策を実施し、劇的に買い入れを拡大した。8年経った今も、インフレ率は日銀の目標である2%には程遠いままだ。
「日銀が自身の意思で国民の認識を誘導することは不可能だ」と言い、「今こそ日銀が『本物の』政策見直しを行い、その結果を政策の枠組みの修正に利用する時だ」と山口氏は述べた。
ロイター通信