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サウジアラムコが、「かつてない困難な一年」であったにもかかわらず、750億ドルの配当を発表

世界最大の石油会社アラムコは、2020年の純利益が44.4%落ち込んで490億ドルとなったと報告した。(他社供給)
世界最大の石油会社アラムコは、2020年の純利益が44.4%落ち込んで490億ドルとなったと報告した。(他社供給)
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22 Mar 2021 01:03:37 GMT9
22 Mar 2021 01:03:37 GMT9
  • 他の大手石油会社らと同様に、アラムコも原油価格の低迷と精製業務からの利幅減少による打撃を受けた

フランク・ケイン

ドバイ:世界最大の石油会社サウジアラムコは、CEOアミン・ナセル氏の言う「かつてない困難な」この一年に、500億ドル近くの収益を計上した。

コロナウィルスのパンデミックで需要が落ち込み、世界の石油市場が一気に下落した2020年の年間決済を発表するナセル氏によれば、アラムコの純利益は490億ドルにのぼり、「世界のあらゆる公開企業の収益額のうちで最高金額の一つ」となったと言う。

ナセル氏は、「アラムコは石油業界にとって最も困難を極める時期に、財政上強力な回復力を発揮した。この一年は原油価格と販売高の低迷、精製業務や化製品からの利幅の減少により、歳入が打撃を受けた」と述べた。

2019年、石油価格が崩壊し、サウジアラビアをはじめとするOPEC プラス加盟国が需要の落ち込みに対応して減産を行う以前は、アラムコは882億ドルの純利益を計上していた。

グラフ

収益減少にもかかわらず、アラムコは株主に750億ドルの配当を払うという新規株式公開時の誓約を守ることができた。アラムコは配当をそのレベルに維持するよう計画しており、一部のアナリストたちが考えるような配当金の上乗せは、全く計画になかった、とナセル氏がアラブニュースに述べた。

「当社は750億ドルと宣言しており、あくまでもそれが我々の今年の計画だ。750億ドルの配当にさらに上乗せするつもりはない。これらは常に取締役会によって査定され、取締役会の承認に基づいて行われる」と彼は言う。

資本的支出については、2021年度は約350億ドルに削減され、540億ドルという以前の目安よりも小さくなる、と彼は述べた。

「当社が、COVID-19 による多くの困難にもかかわらず、その財務上・業務上の目覚ましく機敏な対応ぶりを通して独自のバリュープロポジションを示すことができたことを誇りに思う」と彼は語った。

ナセル氏は、世界経済が回復していくにつれてエネルギー需要も回復するはずだと言う。「2021年には石油需要が増大すると見込んでいる」と彼は続け、原油に対する世界需要は、来年には1日当たり約1億バレルというパンデミック以前のレベルに戻るだろうと  言う。

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「石油と天然ガスのポートフォリオを最適化するという当社の長期戦略は軌道に乗っており、マクロ環境が改善するにつれてアジアでの需要が増加し始めており、その他の地域でも前向きな兆しが見られる。パンデミックを乗り越えて力強く台頭していくことへの当社の自信に変わりは無い」とナセル氏は言う。

しかしヨーロッパについては、現在コロナウィルス感染拡大の第三波に直面して新たなロックダウンが課せられており、ヨーロッパからの需要はアジアや米国での需要回復に遅れを とっている。

最近起きたサウジアラビアの石油生産施設に対する攻撃によって生じたアラムコビジネスへの影響についてナセル氏に尋ねると、安全こそがアラムコの最優先事項であり、サウジ政府は攻撃が国内へ至る前に見事にそれを阻止してくれたと言う。そして「最も重要なことは当社の従業員たちに備えができていることだ」と述べた。

「我々はどんな状況にあっても、施設の機能を元どおりに回復させる能力がある」と言い、先週リヤドの生産施設を襲った攻撃で小規模の火災が発生したが、すぐに消し止めて供給への影響は出なかったことに言及した。

「COVID-19による中断はあったものの、アラムコは2020年に 99.9%という信頼性をもって原油および他の製品を供給し、安定供給の優れた記録を継続させた」とナセル氏は言う。

アラムコは2020年に二つの歴史的快挙を成し遂げた。一つは、4月にOPECプラスの減産が一時的に停止されて、1日の生産量として最大規模の1,210万バレルの石油を生産したこと、二つ目は、天然ガスについても1日当たりの生産量107億立方フィートを達成したこ とだ。

アラムコは2020年に例年以上の負債があり、その一部は700億ドルのSABIC買収資金に充てられ、それは「下流部門業務を拡大させるというアラムコの野心を推し進める重要なステップ」であったという。

アラムコの最高財務責任者カーリド・アル=ダバー氏によると、負債のさらなる詳細については3月22日(月)に財務上の数字の明細が出版されるが、そのギアリング比率、つまり負債対株価の比率は、第3四半期末に発表された21.8%を若干上回るだろうという。

2020年の業務活動からのキャッシュフローは760億ドルで、一方フリーキャッシュフローは490億ドルに達した。

第4四半期におけるアラムコの国際債券の発行は過去50年間で最大の需要があり、新規株式公開時の規模に比べて10倍の募集超過となった。この世界的な投資家意欲はアラムコの長期戦略や業績見通しに対する市場の自信を表すものだ、とアラムコ側は言う。

「柔軟性のある設備投資プログラムと慎重な財務管理を通して、アラムコは支出を調整し、ハイリターンの投資機会に的を絞ることができた。

2020年の資本的支出は、最適化および効率化プログラムの実施によって270億ドルにとどまり、2019年の330億ドルの資本的支出から大幅削減となっている」と言う。

ナセル氏によると、石油と天然ガスのポートフォリオを最適化させるというアラムコの長期戦略は軌道に乗っており、ある特別法人部門では、ビジネスの一部売却や海外の提携先とのジョイントベンチャーの可能性について検討中だという。

アラムコはよりクリーンなエネルギー部門におけるイニシアチブについて取り上げた。「テクノロジーとイノベーションこそが、より少ない排気ガスでより多くのエネルギーを供給するための鍵となる。アラムコは最先端テクノロジーを追求し続けており、2020年には683の米国特許という企業記録を達成した。これは業界最高の記録だ」とアラムコは言う。

アラムコは掘削時カーボンフットプリントについて業界最低レベルを維持しており、2020年には掘削時推定炭素強度が石油換算バレル当たり二酸化炭素10.5kgを達成させた。アラムコの掘削時推定メタン強度は0.06%だった。

「こうした達成事項は、高度なテクノロジーの活用や排気ガスとフレアリングの最少化などをはじめとする何十年間もの我が社の油層管理と生産アプローチの産物だ」と同社は言う。

その規模、インフラストラクチャ、低コスト、低レベルの掘削時炭素強度などを考えると、アラムコが水素開発へ投資しても不思議はない。

一つの有望分野は炭化水素から水素、さらに水素からアンモニアへの転換で、その過程で発生する二酸化炭素は外へ放出させない。8月にアラムコは、世界で初出荷となるハイグレードブルーアンモニアを日本へ輸出した。その使用目的はゼロカーボン電力発電で、これは持続可能な水素使用へ向けた重要な第一歩となるとアラムコは言う。

リヤドのタダウル証券取引所でのアラムコ株は、パンデミック中の上場石油会社の株価として最高値がつき、終値が発表された時点では0.57%上昇の35.40サウジリヤル(9.44ドル)となった。

ナセル氏はこの厳しい一年におけるアラムコ社員たちの働きを称賛した。「このような試練の時期における当社のたぐい稀な業績は、当社社員の揺るぎない不屈の精神に負うところが大きい。彼らは業務上の記録を打ち立て、世界のエネルギーニーズを一貫して安全に満たし続けている」

 

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