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炭化水素セクターにとって極めて重要な週

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04 May 2021 05:05:18 GMT9
04 May 2021 05:05:18 GMT9

先週は、炭化水素セクターにとって重要な週となった。欧米の石油メジャー5社が決算を発表し、OPEC加盟国とロシアをはじめとする友好国10か国による連合体「OPECプラス」が月例の閣僚級会合を予定を早めて開催したのだ。

意外な結果、それもポジティブな意味での意外な結果が、いたるところで見られた。第1四半期の業績はあまり大きなニュースとはならなかったが、それはハイテクセクターの方に注目が集まったからでもあるし、シクリカルと銀行(クレディ・スイスと野村を除く)がパンデミックの安値から再浮上したからでもある。

それでも、石油・ガスセクターで起きたことは重要だったといえる。今年は今までのところ、原油価格が1月1日以降約30%上昇するなど、エネルギーはS&P500の中で最もパフォーマンスが良かったセクターのひとつだ。そんなわけだから、石油メジャーが好調だったのも不思議ではない。BP、シェル、トタル、エクソンモービル、シェブロンのすべてが予想を上回った。特にBPは好調で、基礎的純利益が26億ドルに達し、自社の昨年の第1四半期の7億9,100万ドル、第4四半期の1億1,500万ドルと比べても好調だった。同社は再び配当を行っており、バーナード・ルーニーCEOも安定した配当を行うという政策の重要性を強調、自ら配当を最優先事項のひとつにしていると明言した。同社は純負債も333億ドルまで削減させている。これはすなわち、パンデミックの最盛期以降180億ドル相当の負債返済を行ったのと同じことになる。

他の4社についても、同様にポジティブな傾向が見られた。4社そろって予想を上回り、シェルが32億ドル、トタルが30億ドル、エクソンモービルが27億ドル、シェブロンが14億ドルと、すべて黒字に転換した。

BPの配当金重視の姿勢によって思い出されるのが、アラムコの配当の約束だ。パンデミック中にこれを実行に移すのは容易ではなかったが、最終的には投資家の信頼を得て報われることになった。同様のやり方で、BPは余剰キャッシュフローの60%を今後の自社株買いに充てることを約束していたが、結局第1四半期はその額が5億ドルとなった。

欧州と米国の企業では、そのアプローチに違いが見られた。ネットゼロの目標は全社が重要事項としているが、欧州のメジャーは再生可能エネルギー、バイオ燃料、クリーン水素に重点を置いている。その最たる例がBPで、同社は2030年までに化石燃料の生産量を40%削減することを目指している。それはトタルも同じだ。同社は自社のことをもはや石油・ガス会社とは見なしておらず、今ではエネルギー会社と自称している。

米国の生産者、特にエクソンモービルは、よりクリーンな生産方法、特に炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)の方に重点を置いている。環境・社会・ガバナンス(ESG)の基準をますます重視するようになった投資家たちが、欧州のメジャーに大きな見返りを与えたのだ。また、年初来43%の上昇を記録したエクソンモービルの業績も評価された。だが投資家の中には、エンジン1のようにカーボンニュートラルの達成に向けた同社の進み方が遅いとかもどかしいと感じている投資家もおり、取締役会での口論をエスカレートさせている。

OPECプラスも同様の楽観姿勢に固執し、7月まで日量200万バレル以上の減産スケジュールを維持することで合意した。これはやや意外な結果だった。インドでは新型コロナの感染率が上昇しているからだ。世界人口の5分の1が極めて暗黒な健康危機に陥っており、ヨーロッパ大陸でも、程度は違いこそすれロックダウンは続いているのだ。言い換えるなら、OPECプラスはとりあえず米国、中国、英国の改善状況から手掛かりを得たということになる。そしてそれが石油メジャーの業績に反映されているのだ。

楽観姿勢がはたして妥当だったかどうかは、後になってみないと分からない。この場合も、主要地域や石油消費者がいかにウイルスを封じ込めることができるかにかかっているのだ。同時に、投資家層においてESGに注力する傾向が高まっていることも忘れてはならない。野心的なネットゼロ目標に即していると証明できる産油企業や産油国が、今後ますます有利になると考えられる。

とりあえずのところ、石油メジャーが戻ってきた!

  • コーネリア・メイヤーは博士号を持つエコノミストで、投資銀行や産業界で30年の経験を有している。ビジネスコンサルタント会社メイヤーリソーシズの会長兼CEOを務めている。

Twitter: @MeyerResources

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