
ソフトバンクグループがコーエーテクモの襟川恵子会長を取締役に任命した。株式運用の腕利きで有名なゲーム業界のベテラン経営者を加えることで、往年の業界有力者を失った後の同社に権威ある声をもたらす。
CEOの陽一氏と共に『三国志演義』シリーズを裏で支え経営を務める襟川氏(72才)は、ソフトバンクの孫正義CEOと長年の付き合いがあり、2016年のインタビュー時には、親しみを込め、「孫ちゃん」と呼んでいた。
「襟川氏は、孫氏に対して自分の意見を言うのに遠慮するような人ではない。彼女ははっきりと物を言う」と、エース経済研究所の安田秀樹アナリストは述べた。
取締役の変更は金曜に発表された。それより前に、ソフトバンクは近年の日本で最も歯に衣着せない2人の企業リーダーを失っていた。ユニクロの親会社ファーストリテイリングの柳井正氏と、日本電産の創業者永守重信氏である。
2人を失ったのは、63才の孫氏が自分の会社を事業会社から、純粋な投資会社へとシフトした後のことだった。この変化に、経営手腕に加えテック株への投資に精通していることでも有名な襟川氏は適していると目される。 3月末時点のコーエーの貸借対照表上の投資有価証券は1,130億円(10.4億ドル)と、1年前の710億円から増加している。
「私は孫氏と並んで、有名なプロ投資家である彼と時々比較されます。彼はスペシャリスト。私はよく冗談で、片手間にやっている程度ですよ」と、襟川氏は今年初旬に行われた日経ヴェリタスのインタビューで述べている。
昨年、COVID-19パンデミックが企業の評価額の低迷を示し、ソフトバンクと変化を待つ投資家の間には調整期間があった。ソフトバンクグループは230億ドルの自社株買いを開始し、取締役会の構造を改革した。
その後、評価額が回復してからは、孫氏に外部の声に耳を傾ける気があまりないことを、投資家たちは心配している。
退任を迎える早稲田大学の川本裕子経営学教授は、他人の意見を聞こうとしている孫氏の意欲を称賛したが、「ソフトバンクグループとそのユニークな本質を真に表す、より良いガバナンスの形を追求する」ことを同グループに求めている。
(1ドル=108.9400円)
ロイター