
シェーン・マッギンレー
ドバイ:パンデミックの影響下、サウジアラビア企業が成長し競争力を高めるためには、潜在的な新規顧客をオンラインでターゲットにする必要があるという理由から、デジタルマーケティングの需要が「急激に高まっている」と、フェースブック社の小売・Eコマース部門の地域責任者は述べている。
フェースブック社の中東・北アフリカ地域、小売・Eコマース部門の責任者であるアナ・ゲルマノス氏は、フェースブック、メッセンジャー、インスタグラムなどの同社プラットフォーム上で、ユーザーが広告によって過剰な負担を強いられているとは考えていない、とも述べた。
ゲルマノス氏はアラブニュースの取材に対し、「今日、デジタル広告全般において、人々は選択肢を持っている」と述べた。
「消費者には、(製品)Xをクリックすることも、ビデオを止めたり、タブを閉じたりする選択肢もある」
ゲルマノス氏は、ユーザーには、広告をスクロールして見ないでパスするという選択肢もあるものの、それでも地域の企業が事業拡大を図るためには、フェースブック社が「ディスカバリー・コマース」と呼ぶ、常に新しい顧客を探し続ける努力を継続することが唯一の方法だと述べた。
「”ディスカバリー・コマース”とは、機械学習を利用して、商品と消費者をマッチングさせるプロセスです。本当にビジネスを成長させたいのであれば、新しい消費者のポケットを開拓する必要がある。そのためには、売りたい製品を新しい消費者に発見してもらい、消費者にインスピレーションを与え、ボタンをクリックして購入してもらう必要があります」
では、サウジアラビアの企業はどのようにこの手法を実践しているのであろうか?
ゲルマノス氏は、マーケティングキャンペーンの成功の70%はコンテンツにあり、残りの30%だけが適切な人々を対象とするために使用されるデータとアルゴリズムによると考えている。
キャンペーンを成功させるためには、「消費者であるお客様の十分な情報を得て、その情報の分析に基づいて、適切なタイミングで適切なメッセージを発信できるかどうか」にかかっている。
サウジ企業がこれを実現するひとつの方法として、ソーシャルメディアプラットフォーム上の特定のオンラインコミュニティをターゲットにする手法が挙げられる。フェースブックによる調査では、サウジ人回答者の70%がオンライングループのメンバーに属していることがわかっている。
今回の調査ではまた、ファッションや飲食系の企業にはインスタグラムが、ゲーム系にはフェースブックが広告媒体として適していることが判明している。
特定の層をターゲットにすることでも、成果が得られる可能性が高まる。フェースブック社の報告によると、ネッスル中東社はメッセンジャー上で特定のユーザーに商品を勧めるボットを作成し、キャンペーン期間中に売上が2.9倍になる成果を挙げている。
ブランドがサウジアラビアの消費者をターゲットにして、メッセージを確実に伝えるための新しい方法の1つが、AR(拡張現実)技術の活用である。これは、パンデミックの際に買い物客が店舗に足を運べなかった場合に特に有効だった。
フェースブックの調査では、サウジアラビアの回答者の88%がAR機能を利用したことがあると答え、その内インスタグラムの回答者の29%が週単位でARを利用してブランドとやり取りしていると答えた。
成功例として、日本の自動車メーカーのインフィニティは、昨年バーチャルな「未来のショールーム」を開設し、2020年の第2四半期に中東での販売台数を前年同期比32%伸ばしている。
このオンラインプラットフォームでは、ユーザーは車のエクステリアやインテリアを3Dで見ることができ、車体の塗装も様々な色を選択したり、エンジン音を聞いたり、実物そっくりの背景に車を置いて、自宅やオフィスの前でどのように見えるかを確認することができた。
デジタルマーケティングの分野で常に議論を呼ぶのが、インフルエンサーと、彼らが宣伝する製品についての透明性である。
ゲルマノス氏によると、この分野に関して、フェースブック社は非常に厳格であるとのこと。
「インフルエンサーは非常に重要で、インフルエンサー・マーケティングは有効でです。有名人がある商品を推薦すると、その人をフォローしている大勢のフォロワーがその影響を受け、勧めるものを試す可能性が高くなる」
「透明性という点で、我々のプラットフォームでは、インフルエンサーとの有料パートナーシップは明確に強調表示されます。つまり、インフルエンサーが提携商品について投稿すると、必ず『ブランドX、Yとの有料パートナーシップ』と表示され、非常にわかりやすくなっています。我々のプラットフォームでは、消費者に強調表示されない有償パートナーシップは1つもなく、非常に透明性が高く設定されています」
ゲルマノス氏はまた、インフルエンサーに透明性を保持させるため、常にフォロワーたちを欺かないようアドバイスしていると述べた。
「インフルエンサーが複数のブランドを紹介し、非常に商業的な活動を行うと、やがて消費者はそれに気付き、ブランドの価値が本当なのかどうか疑いはじめます。フォロワーから疑われるインフルエンサーとは、ブランドは仕事をするのをやめるでしょう」
他の組織と同様に、フェースブック社も広告を規制しており、各国の法的・文化的属性に準拠したガイドラインを設けている。これらのパラメータに準拠していない広告は、アルゴリズムによってブロックされる。
「一例を挙げると、パンデミックでは、私たちは新しい方針を打ち出しました。つまり、パンデミックの状況を広告主が悪用しないよう、広告やカテゴリーの制限を強化したのです。その方針に則り、マスクの広告は禁止しました」