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抵抗するゴーン氏、フランスの捜査に汚名返上の望みを託す

2021年5月25日火曜日、レバノン、ベイルート北部のドバイェにてAP通信の取材に答える元自動車業界の大物で逃亡者のカルロス・ゴーン氏。(AP通信)
2021年5月25日火曜日、レバノン、ベイルート北部のドバイェにてAP通信の取材に答える元自動車業界の大物で逃亡者のカルロス・ゴーン氏。(AP通信)
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26 May 2021 11:05:45 GMT9
26 May 2021 11:05:45 GMT9

ベイルート: 自動車業界の大物から一転して逃亡者となったカルロス・ゴーン氏は汚名を返上するために活動しており、 フランスの捜査官が同氏の逃亡先であるレバノンの自宅を訪ねることが、自己弁護の最初の機会になると期待している。これは一夜にして未来を見通す者から囚われの者となった突然の逮捕以来初のものだ。

AP通信の取材に対して、追い詰められた前ルノー・日産・三菱アライアンス社長は、日本、フランス、オランダにおける法律上の問題を分析し、いかにして大阪からの大胆な脱出を計画したのかを詳述し、経済危機に襲われているレバノンにおける、将来が見えない新たな現実を振り返った。

名誉を回復するのは困難なことになるだろう。ゴーン氏は会計上の不正行為の疑いで2018年11月に日本で逮捕され、その1年後にレバノンへと逃亡した。日本における告発がフランスにおける同氏の活動への注目を引き起こし、同氏は現在フランスにおける複数の法的な困難に直面している。

一方で、同氏の金銭的な活動や逃亡に関連する事件において、日本とトルコでは複数の関係者が投獄されたり裁判を受けたりしている。

「たくさんの二次的な被害がありました(中略)ですが、それは私のせいではありません。(私を追い落とすための)計画を企てた人たちのせいです」と火曜日にゴーン氏は述べた。
ゴーン氏は報酬の過少報告や会社資金の不正使用といった容疑を否認しており、日産自動車株式会社の業績悪化、並びに、日本の自動車メーカーがフランスのパートナーであるルノーに対して自主性を失うことへの抵抗に関連する、社内クーデターの被害者であると強く主張している。

同氏は来週ベイルートで、自身の財産のうち数百万ユーロが差し押さえられることとなったフランスにおける会計上の不正行為疑惑を調査するフランス当局の数日間の聴取を、自主的に受けるとしている。その結果、暫定容疑は同氏に言い渡されることになるかもしれないし、取り消されることになるかもしれない。

フランスの捜査官らはゴーン氏がベルサイユ宮殿で開いた時代物の仮装と大量のシャンパン付きの豪勢なパーティー、並びに、自家用飛行機とドイツの持ち株会社が開催したイベントに使用された1,100万ユーロ、オマーンの自動車販売代理店への補助金を調べている。ゴーン氏はすべての不正行為を否定している。

「日本では日本人に尋問され、私が読めない日本語で書かれ、日本語でサインするよう言われれました」と同氏は述べる。「今回は、私はフランス語で話し、弁護士にも同席してもらいます。もちろん、私は日本の法制度よりもフランスの法制度をずっと信頼しています」

日本でゴーン氏は妻と話すことも許されないまま、数か月間独房に監禁されていた。同氏は公平な裁判の可能性が「ゼロ」であると明確になった後で、国を脱出したと述べた。同氏の逮捕は国際的な注目を集め、日本の法制度とその有罪率99パーセントには批判が集まった。

2019年末、ゴーン氏は1,400万ドルの保釈金を払い、ハリウッド映画のようなやり方で保釈中に日本から逃げ出した。日本当局によればトルコ行きのプライベートジェットに積み込まれた箱に隠れるという嘘のような脱出劇により、同氏は日本当局に恥をかかせ、裁判から逃れることができた。

今やインターポールの手配書に載った国際的な逃亡犯である67歳のゴーン氏は、生まれ故郷であるレバノンで自らに課した逃亡生活を送り、毎週大学のビジネスコースで教鞭をとり、その他の法的な苦難と闘っている。

先週ドイツの裁判所が、アムステルダムを拠点とする日産・三菱アライアンスに対する同氏の不法解雇の主張を棄却し、2018年に同氏が受け取った500万ユーロ(600万ドル)近い給与を返還するよう命じたことに、同氏は「ショックを受けた」とAP通信に語った。この判決は、ゴーン氏が日産三菱BVによる解雇の取り消しと賠償金1,500万ユーロ(1,650万ドル)を求めた裁判で下された。

ゴーン氏は上訴を誓っている。

フランス人でありブラジル人でありレバノンの市民権も持つゴーン氏は、自分が日産と日本政府の共犯者及びフランスの協力者が主導する中傷作戦の被害者であると強く主張している。

AP通信の取材の中で同氏は、日産の前社長でありゴーン氏と同じ日に逮捕され、ゴーン氏の報酬の過少報告の罪に問われて東京地方裁判所で法廷に立っているアメリカ人のグレッグ・ケリー氏を断固として擁護した。同氏の逃亡を幇助したと伝えられている別の2名のアメリカ人、マイケル・テイラー氏とその息子のピーター氏については語ろうとしなかった。同2名はアメリカから引き渡された後、日本の拘置所で裁判を待っている。

彼らの法的な問題が気がかりかどうかを尋ねられたゴーン氏は「彼らには共感と同情を感じます、私も同じ状況ですから」と答えた。

ケリー氏の裁判で提出された証言と書類は、ゴーン氏が2010年に日産で給与カットに賛成した後で、日本は役員報酬の開示を求めるようになったため、ケリー氏がゴーン氏の報酬を増やす方法を探し求めたことを示している。ゴーン氏は火曜日に、いかなる追加報酬の取り決めも役員会に承認されていないと断言した。

「彼(ケリー氏)は明らかに無罪です」とゴーン氏は述べた。

ゴーン氏は脱出の細部を思い出しながら、実行は帽子や厚着で気づかれにくい12月を選んだことなども含めて、どのように作戦が立てられたのかをAP通信に語った。

「とても大胆でしたが、大胆であるがゆえに、成功するかもしれないと思いました」と同氏は述べた。ゴーン氏は楽器用の箱に入って脱出したと言われている報道については回答を拒否し、同氏の手助けをしたとして訴追されている人々のためにならないことは何も言いたくないと述べた。

ボディガードに付き添われ黒の日産SUVで到着した、かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだった元役員は、大きく失墜したにもかかわらず堂々とした態度をまったく失っていないように見えた。同氏はベイルートでの日々を、法的防御の準備をし、大学で教え、スタートアップを手助けし、本や記録を書いて過ごしていると述べた。

生まれ育った地中海沿岸国で暮らす逃亡者である同氏は、時差のないゆったりとしたペースを楽しみ、妻と一緒のコーヒーや子どもたちとの長話を楽しんでいると述べた。

そこには歴史的な財政的及び金融的な破綻に囚われた極めて不安定な国における生活も含まれている。ゴーン氏は、昨年夏のベイルート港爆破事件で被害を受けた家の修復をしながら6か月を過ごしたと述べた。また他のレバノン人同様に、2019年10月に当局がドル通貨の引き出しを取り締まるようになった後は、かなりの額の現金が銀行から引き出せないままになっていると述べた。

自身の失墜を思い返しながら同氏はこう述べた。「まるで、こう、何でしょうか、どこかで心臓発作でも起きたような、もしくはバスに轢かれたような。人生が変わりました」

「いきなり、まったく違った現実の中にいて、そしてその現実を受け入れなければならないんです」

AP通信

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