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サウジアラビアによるニューカッスルの買収はただの利益目的ではない

PIFによる買収をニューカッスル・ユナイテッドが発表した際、スタジアム周辺に集まっていたファンたち。(ロイター通信)
PIFによる買収をニューカッスル・ユナイテッドが発表した際、スタジアム周辺に集まっていたファンたち。(ロイター通信)
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09 Oct 2021 12:10:38 GMT9
09 Oct 2021 12:10:38 GMT9
  • プレミアリーグがリーグ全体として税引前利益を計上したのは1992年の創設   以来、4度だけ
  • サウジアラビアにとって、より広範な事業とマーケティングへの機会は計り知れない

マシュー・ブラウン

ロンドン:サウジアラビアによる3億500万ポンド(4億1600万ドル)でのニューカッスル・ユナイテッドFCの買収は同国にとって健全な財政投資だが、この買収は、クラブの今後数年間の年間損益などを越えて判断されるべきものだ。

そもそもサッカーのプレミアリーグは、特に収益性の高い事業ではない。専門サービス企業のデロイトによると、新型コロナ感染症のパンデミックが起きる前の2018/19シーズンでさえ、収益が初めて50億ポンドを超えたにもかかわらず、リーグ全体で1億6500万ポンドの税引前損失を計上した。

当然のことながらパンデミックはリーグの収益に大きな影響を及ぼし、翌年には収益が45億ポンドにまで減少し、約10億ポンドの損失を抱えた。

プレミアリーグは1992年の創設以来、税引前利益を計上したのは4度しかない。そのすべてが2013年以後のことだ。

英国サッカー界の格差も広がっている。多くの大手クラブが利益を上げられている一方、小規模なクラブは苦戦を強いられている。アブダビのシェイク・マンスール氏がオーナーであるマンチェスター・シティは2018/19シーズンにおいて、5年連続の年間利益を計上し、その額は1010万ポンドだった。ライバルのマンチェスター・ユナイテッドは同シーズン、1888万ポンドを計上。両チームとも2019/20シーズンには損失を記録した。

一方、シティの利益というのも、マンスール氏が2008年の獲得以来、クラブに投資してきた10億ポンドを超える金額と比較すると、大海の一滴である。

アラビア湾岸国のサウジアラビアが英サッカー界に投資をする目的が利益でないとしたら、一体それは何なのだろう。

明白な答えの1つは、ブランディングだ。サウジアラビアは現在、新たな航空会社を含む多くのグローバル事業を構築している最中にあり、ニューカッスルFCのようなグローバルな名前は、サウジアラビアの観光事業における野心にとっての素晴らしい手段となる可能性があるのだ

公的投資基金(PIF)がサッカークラブのポートフォリオを作ろうと目論んでおり、インテル・ミラノとマルセイユが既に候補となっているという情報もある。そうした投資がもたらす関係性と企業の好意を通じた、さらなる協力関係構築のための機会は膨大だ。

しかし、今回の買収劇にはマーケティング以上のものがあるのだ。この買収を通してサウジアラビアは、ニューカッスルに関係する他の部門への投資の機会を得ることができ、その上、同国の「ビジョン 2030」の経済戦略にも合致する。

不動産(新たなスタジアム複合施設が建設されるのであれば)や物流事業、再生可能エネルギーなどが、相乗効果が期待される分野として想定される。洋上風力発電は英国北東部の海岸沖合で成長している産業であり、タイン川は急速に英国の風力発電産業のハブになりつつある。

ニューカッスルという街の港が、ジェッダ・イスラム港を中心とする、成長を続けるサウジアラビアの国際物流ネットワークの一翼を担うと想像するのは、行き過ぎでもないだろう。

PIFはニューカッスルへの投資を活用するわけだが、これは同時に、ポスト石油時代を見据えて経済を再構築するサウジアラビアにとっての素晴らしい機会を象徴してもいるのだ。

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