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「SGIは人類の新時代を告げる」サウジ・グリーン・イニシアチブ・フォーラムは世界をどう変えていくか

サウジアラビアの首都リヤドの高速道路脇で植樹を行う作業員。(Getty)
サウジアラビアの首都リヤドの高速道路脇で植樹を行う作業員。(Getty)
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20 Oct 2021 10:10:34 GMT9
20 Oct 2021 10:10:34 GMT9
  • 「経済を守るか、環境を守るか、という間違った選択肢を、私たちは拒否します」とムハンマド・ビン・サルマン皇太子は語る。

ジョージ・チャールズ・ダーレイ

前世紀の初頭から、サウジアラビアのイメージと運命は、あるひとつの要素と密接に結びついてきた。「石油」の発見と開発は、サウジアラビアの生活を一変させ、石油を動力源とする世界経済の中でこの王国を中心に位置づけた。

しかし、この20年間で時代は変化した。石油、そしてプラスチックや石油化学製品などといったその派生物が、地球温暖化、汚染、環境破壊の主な原因であることが認識されるようになったのだ。サウジアラビアでは、温室効果ガスによる大気汚染によって平均寿命が1.5年短くなり、砂漠化や砂嵐によって年間130億ドルの損害が発生している。

このような状況は世界に対し、炭素を源とするエネルギーの利用や過剰な消費活動から、よりクリーンで持続可能な生活へのシフトを促す警鐘となっている。

数十年にわたりエネルギーのリーダーであったサウジアラビアは、今日、環境保護活動の先頭に立っている。この取り組みは、汚染や土地の劣化に対処し、植生を増やし、二酸化炭素排出量を削減し、海洋生物を保護するための国家プログラムである「サウジ・グリーン・イニシアチブ(SGI)」に集約されている。

「サウジアラビア王国は、気候危機への対策を進める上で、自らの責任を十分に認識しています。石油・ガス時代にエネルギー市場を支えたように、王国は環境に配慮した世界を構築するための世界的なリーダーになるでしょう」とSGIの後援者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子は述べている。

サウジアラビアは、昨年のG20サミット議長国として、循環型炭素経済の4つのR(Reduce:削減、Reuse:再利用、Recycle:リサイクル、Remove:除去)の概念を導入した。そして今回、11月23〜24日にリヤドで開催されるSGIフォーラムを主催することで、再び主導的な役割を果たす。

このフォーラムはその目的をこう表している。「地域的、国際的に協調した方法で気候変動対策を促進し、各国の首脳、政府関係者、ビジネスリーダー、学術的なパイオニア、環境の専門家が一堂に会します。そして、気候変動に取り組むための行動を促し、革新的なソリューションを生み出します」

このイベントは、湾岸地域を団結し、気候変動に立ち向かい、クリーンエネルギーの使用を促進し、化石燃料の影響を相殺、そして環境を保護することで、「合意された世界目標」を実現することを目指すためのロードマップの策定に貢献するだろう。

SGIの目標は非常に野心的である。今後10年間で王国内に100億本の木を植え、劣化した土地の約4,000万ヘクタールを修復、現在の緑地面積を約12倍に増やすことを計画している。これは、土地の劣化を抑制するための世界的な取り組みの4%に相当し、世界全体で1兆本の木を植えるという目標の1%に相当する。

また、サウジアラビアの保護地域指定の割合は、全国土の30%以上、約60万平方キロメートルに達し、これは世界の目標である17%を上回る。また、2030年までにエネルギーの50%を再生可能エネルギーでまかなう計画により、二酸化炭素の排出量は1億3,000万トン削減される。そして現在廃棄物の95%が処理されている埋立地は、廃棄物のわずか5%にまで削減される。

実際、「ゴミ」という概念はほとんど過去のものとなり、あらゆる形態の廃棄物が付加価値のある製品やエネルギー源の材料となり、「循環型経済」の概念の重要な部分を占めることになるだろう。

SGIは、GCC加盟国およびその他の地域諸国を含む、より広範な「中東・グリーン・イニシアチブ」と連携して活動する。全体的な目標は、中東全体で500億本の木を植えることだ。これは世界最大の森林再生プログラムであり、劣化した土地の2億ヘクタールを回復させることになる。この地域の二酸化炭素排出量は60%以上削減される予定で、これは世界全体の削減目標の10%以上に相当する。

サウジアラビアの人々は、大きな車と使い捨ての製品に囲まれた快適な生活に慣れているが、SGIがすでに文化的に大きな影響を与えていることは明らかである。

循環型経済を目指す代表的な機関であるサウジ・インベストメント・リサイクリング・カンパニー(SIRC)の最高経営責任者であるズィヤード・アル・シーハ氏は、アラブニュースの取材に対し「SGIは、人類にとってまったく新しい時代を切り開くものだと考えています」と述べている。

「今、私たちは転換期にあり、それは世界経済の大きな変化の始まりでもあります。私たちは、大企業、中小企業、そして個人など、循環型経済に貢献するあらゆる組織や人と協力し、投資を行っています」

サウジアラビアの「グリーン化」には、一般の人々の日常生活の変化や、まったく新しい考え方が必要となる。過去数十年の習慣から脱却して新しい道を切り開くのは、主に若い人たちだろう。

若きサウジアラビア人であり、プロの翻訳者であるファティマ・アフマド氏はアラブニュースの取材に対し「SGIは、サウジアラビアと中東の環境に優しい未来のために、政府が行っている取り組みです」と語った。

彼女はこう付け加える。「王国は、気候変動の危機から未来を守るために率先して行動しています。これは、私が個人的に期待している『ビジョン2030』のプロジェクトのひとつです。野心的でワイルドな夢であり、近いうちに実現すると確信しています」

石油の時代が終わり、地球環境に配慮した生活へと世界が移行することで、サウジアラビアの経済や生活水準に悪影響を及ぼすのではないかというシニカルな意見もあるだろう。

しかし、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、この取組をより前向きに捉えている。3月にSGIを発足させた際には「経済を守るか、環境を守るか、という間違った選択肢を、私たちは拒否する」と宣言した。

皇太子はこう付け加え、展望を語った。「気候変動対策は、競争力を高め、イノベーションを起こし、何百万人もの人々に対し、質の高い雇用を創出します。王国と世界の若者は、よりクリーンで環境に優しく、包括的な未来を求めており、私たちは彼らに、その未来を送り届ける義務があるのです」

SGIフォーラムは、サウジアラビアと世界の持続可能な未来に向け、より多くのアイデア、より高い意識、そして実践的なソリューションを生み出してくれるに違いない。

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