
12月の日本の鉱工業生産は、自動車工業がわずかに上昇したものの機械工業の低下がそれを上回った。低下は3ヵ月ぶりとなり、景気回復の先行きに暗雲が立ち込めている。
小売業販売額は、新型コロナウイルス感染状況が落ち着いていたことから客足が増え、3ヶ月連続で前年を上回った。しかし、1月は変異型のオミクロン株により感染者数が過去最高となり、消費者心理に悪影響を及ぼすことが予想される。
経済産業省が31日発表した12月の鉱工業生産は前月比1.0%下がった。製造業で使用されるチップ製造装置やエンジンなどの汎用・業務用機械、生産用機械の生産が減少したことが響いた。
鉱工業生産の低下は3ヶ月ぶり。ロイターのエコノミスト調査では0.8%の低下予想であったが、これを上回る結果となった。
農林中金総合研究所の南武志チーフエコノミストは、「特に資本財メーカーで生産が落ち込んでいる。おそらくチップ不足の影響を強く受けたことが原因だ」と指摘した。
「自動車産業がフォーカスされていたが、チップ不足の影響は拡大していることを示している」
自動車メーカーは、中国などの主要市場の需要が回復しても生産抑制を余儀なくされており、また、家電業界における半導体需要の高騰にも対処しなければならない状況となっている。
販売台数世界首位のトヨタ自動車は1月、チップ不足の影響を受け、生産が今期(3月まで)の年間目標である900万台を下回る見込みだと発表した。
モーター製造の日本電産は先週、材料価格上昇と半導体不足が利幅を圧迫し、第3四半期の営業利益が減少したと発表。
12月の自動車生産台数は前月比1.5%増。11月の43.7%増、10月の15.9%増よりはるかに低い伸びとなった。
政府関係者は、自動車業界の企業の中にはチップの供給競争を他企業に比べてうまく乗り切った企業もあると述べた。
「調達量は増えているが、状況は企業によって異なる」と同関係者は述べた。
経済産業省(METI)の調査では、1月の生産高は5.2%増、2月は2.2%増と予想されている。
同関係者によると、この予測には1月10日の調査締め切り後に行われた減産は含まれていない。
見通しに関するリスク
ロイター調査によると、世界第3位の経済大国である日本の今四半期の経済成長率は4.5%(年率換算)と予測されている。しかし、一部のエコノミストはこのバラ色の予測に下振れリスクを唱える。
第一生命経済研究所の新家義貴チーフエコノミストは、第一四半期は新型コロナウイルスの蔓延による個人消費の打撃と自動車生産の減少に直面していると言う。
新家氏はレポートでこう述べている。「感染状況にもよるが、1-3月期はマイナスになる可能性がある」
一方、12月の小売業販売額は前年同月比1.4%増となった。予想の2.7%増には届かなかった。
前年同月比の増加率は鈍化したものの、3ヵ月連続の増加となった。一般消費財と食品・飲料の堅調な需要が牽引した。
日本ではここ数週間、変異型のオミクロン株による新型コロナウイルス感染症患者が急増している。政府は7割の都道府県に対して厳しい規制を展開せざるを得ない状況となっている。
政府の調査によると、消費者信頼感指数は1月に2.4ポイント低下し、8月以来の低水準となった。これは、オミクロン株による記録的な感染状況が消費者心理に打撃を与えていることを示している。
ロイター