• バイナンス・ホールディングス　地域での事業展開の第一弾として投資家に商品を提供へ

ダナ・アルオマー

ドバイ：業界最大手の暗号資産（仮想通貨）取引所バイナンス・ホールディングスは、ドバイにおける運用の第一弾として、トップ機関や認定投資家に製品を提供する予定だ。MENA地域責任者のリチャード・テン氏はアラブニュースに語った。

「私たちは、より迅速に暗号資産取引の浸透を進め、地域のお金の自由を改善するためのツールを構築するプラットフォームになることを目指しています」とテン氏は述べ、同社はより多くの製品を提供することによって、より多くの顧客にサービスを提供する予定であると続けた。

見通しは明るい。先週、暗号資産取引所はドバイの暗号資産規制局から正式なライセンスを取得した。これにより同社は、UAEのデジタル資産市場に関する“テスト・アダプト・スケール”モデルのもと、同地域でのサービス運営と拡大が可能になる。

「これはドバイ政府による極めて革新的なアプローチです。政府は、暗号資産が証券、デジタルトークン、その他の投資商品とは全く異なるものであることを認識しています。そして、バリューチェーンのさまざまな部分に対応し、リスクを管理し、イノベーションをサポートできる専用のフレームワーク構築を目標としているのです」

テン氏の自信に満ちた表情は、生まれつきの楽観主義に基づくものではない。彼は20年間、規制の世界で過ごし、この地域のことをよく理解している。世界最大級の暗号資産プラットフォームの地域責任者を引き受ける前には、彼は6年間アブダビ・グローバル・マーケットのCEOを務めていた。

「ドバイ政府と一緒にビジネスを進めると、この国がイノベーション、暗号資産の採用、ブロックチェーンの開発をいかにうまくサポートしているかを実感します。これらの要素は、将来的に経済のいくつかのセグメントの柱になり、国益に貢献するでしょう」

暗号通貨は最近、ロシアとウクライナの戦争において、前例のない役割を果たしたことで話題になっている。ウクライナ政府は侵略に対抗するための資金として数百万ドルを調達し、トークン（仮想通貨の一種）にスポットライトを当てた。インターネットとコンピューティングデバイスさえあれば、取引は可能だ。

「仮想通貨は、金融と金融サービスの未来です。国境を越えた決済において、重要な役割を担っています」とテン氏は言い、「国境を越えた決済の手数料は驚くほど高く、現在はそれが大きな課題になっています」と付け加えた。

その課題に対し、バイナンスは、暗号資産の取引に適した、包括的で透明性が高く、安全なエコシステムの実現に向けて取り組んでいる。昨年12月、同社はドバイ世界貿易センター庁とパートナーシップ契約を結び、国際的な暗号資産のエコシステムの構築と規制ルールの策定を支援した。これは、デジタル空間における官民パートナーシップの優れた事例となった。また、同社は地域における勢いを維持するため、UAEで100名の雇用を進めている。

「私たちは、次の世代が暗号資産、ブロックチェーン、トークノミクスに対応できるように、機関と密接に連携しています」と彼は語る。同社は近々、適切な暗号資産取り引きに関するトレーニングプログラムを地域の市場に導入する予定だ。

また、仮想通貨への信頼を浸透させる取り組みの一環として、バイナンスは「セキュア・アセット・ファンド・フォー・ユーザーズ」（SAFU）という、顧客を保護するための緊急保険ファンドを運営している。2018年に開始されたこの基金は、現在10億ドル超に達している。ハッキングなどの違法行為で損失を被ったユーザーがいた場合、その損失を補償するものだ。

分散型の金融の世界というコンセプトとそのボラティリティ（価格の変動性）の高さから、潜在的な投資家の間でも、暗号資産に対する懐疑的な意見は多く存在する。とはいえ、成熟した企業や国家が、暗号ビジネスの生来の強みを受け入れ、利益を得るのは時間の問題だろう。