
モナ・アラミ、サルマ・ワエル、アキラ・アルアサイード
リヤド:紅海開発会社とAMAALA、およびNEOMやキディアなどその他のサウジアラビア国内の開発プロジェクトによる建設活動の急増が、昨年と今年初めにパンデミックのために需要が縮小したセメント業界の回復を促すと予想されている。
「宅地開発や、紅海プロジェクトによる北部での建設の回復は、業界にプラスに作用するだろう。効果がすぐに出るわけではないが、2030年にかけて長期的に影響が及ぶだろう」と、サウジアラビアのコンクリート製品メーカー、SACEPでゼネラルマネージャーを務めるオマル・ハトゥーム氏がアラブニュースのインタビューに応じて語った。
同氏によると、宅地開発に関しては、サウジアラビア王国は過去数年に多くの施策を打った。「これは、新たな開発がこのセクターに与える影響が今後の数年間に分散されることを意味する。これらのプロジェクトはセメント業界に緩やかな成長をもたらすだろう」
資産運用会社であるアル・ラジヒ・キャピタルが3月下旬に発表したセメントレポートによると、同社の調査部門責任者を務めるマゼン・アル・スダイリ氏は、今年に入って商品価格が大幅に急騰していることを受けて、建設活動が活況を呈すると予想している。
「インフレ傾向がセメント需要に歯止めをかけることも予想される。2022年のセメント販売量は2021年比で横ばいから減少となり、セメント価格の上昇が抑えられると予想される」
アル・スダイリ氏は、セメントセクターの財務実績が改善していると見ているが、需要の弱さや価格の低迷のために改善は限定的になると予想している。
TRSDCの労働者村での建設作業
フル稼働していない生産能力
Argaamによると、サウジアラビアのセメント市場では、市場プレーヤーは17社に集約されている。
サウジアラビアに本社を置くアル・エマール・グループのアブドゥルラティフ・サレハ・アルシェイク会長は、同国のセメント企業が現在、総生産能力の約6割で操業していることを指摘している。そして、「そのため、企業にはフル生産能力に達するまでの成長余地がある」と付け加えた。
同氏は、新たな需要を満たすために北部に支店を設けるところはあるだろうが、新たなセメント工場がすぐに出現することはないと予想している。
アル・ラジヒ・キャピタルが昨年発表したレポートによると、2021年8月までの8カ月間のセメント生産量は、前年同期比4.5パーセント増とわずかに増加した。
Argaam投資会社の数字を元にアラブニュースが算出したところ、セメント業界の平均年成長率は3.3パーセントであった。
昨年、市場には新型コロナウイルス感染症関連の規制と、開発プロジェクトの減速が重くのしかかった。徐々に規制が緩和され、建設の動きがとりわけメガプロジェクトにおいて回復していることにより、今年、セメントセクターに勢いがつくことが予想されている。
昨年9月に発表されたレポートで、アル・スダイリ氏は、2022年にセメント業界が回復すると予想している。同氏はその寄与要因として、国内各地域のさまざまなメガプロジェクト、ギガプロジェクトの実施に伴う支出増が予想されることを挙げている。「これらは建設用製品の回復に寄与する可能性が高い。ただし、セメント生産量に波及するまでには時間がかかるだろう」と述べている。
マゼン・アル・スダイリ氏
2021年にセメント業界は、4月と5月を除いて成長鈍化と収縮を経験した。
アル・スダイリ氏によると、2021年4月と5月のセメント生産量はそれぞれ前年同月比で41パーセントと65パーセントの伸びを示した。
「この2カ月の成長の主な理由は、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンと移動規制のために、前年の基準月の数値が低かったことだ。この2カ月を除いて、セメント販売量は前年比で減少するだろう」と、同氏は昨年発表されたレポートで強調していた。
遅々とした回復
さらに、セメント業界は2021年の最終四半期に大幅に収縮した。たとえば、Argaamのレポートによると、サウジアラビアのセメントメーカー17社の2022年1月の総販売量は、前年同月の520万トンから6パーセント減少して490万トンだった。
2021年12月の総販売量は、前年同月の520万トンから7パーセント減の480万トンだった。2021年11月のセメント販売量は、前年同月の490万トンから5パーセント減の470万トンだった。10月の減少幅はさらに大きい10パーセントであり、前年の490万トンが450万トンに落ち込んだ。
この右肩下がりの傾向はサウジ企業の利益に反映されており、販売価格の下落を受けて売上高が減少し、サウジアラビの上場セメント企業14社全体では2021年に29パーセントの減益になった。
はやわかり
アル・ラジヒ・キャピタルが昨年発表したレポートによると、2021年8月までの8カ月間のセメント生産量は、前年同期比4.5パーセント増とわずかに増加した。
セメントメジャー全体で、2021年の利益は25億サウジアラビア・リヤル(6億6700万ドル)で、前年の36億リヤルから減少した。
たとえば、業界大手のサウジセメントは、2021年に売上高が10パーセント減少したために、利益は27パーセント減の3億3200万リヤルとなった。
同様に、ナジュラーンセメント、ヤンブーセメント、カシムセメント、シティセメント、ウム・アル・クラ・セメント、イースタン・プロビンス・セメント、サウジ・プロビンス・セメント、タブークセメント、ヤマーマセメント、ヘイルセメントはいずれも減益になった。
ただし、ノーザン・リージョン・セメントは別の動きを示し、売上の減少にもかかわらず、利益は1億700万リヤルとほぼ不変だった。他方、アル・ジャウフ・セメントは2021年に損失が1億5000万リヤルと、前年の9800万リヤルから拡大した。
売上の減少だけが、企業の収益性の要因ではなかった可能性がある。
リヤドセメントとアラビアンセメントは売上高がそれぞれ14パーセント増と19パーセント増であったが、減益になった。
ヤマーマの場合は、国内市場へのセメント納入量は、2020年の460万トンから2021年には522万トンに増えたが、売上高は前年比23パーセント減の7億3500万リヤルだった。
ヤマーマセメントのこの下落傾向は、直接的な言及がなされていないセメント1トン当たりの工場出荷平均価格が、2020年のトン200リヤルから2021年にはトン140リヤルへと3割ほど下落したことを示唆している。
アル・スダイリ氏はレポートの中で、「当社の見解では、セメント需要の前年割れは、労働力不足と新規建設許可に関連した新たな規制のために、建設活動が低下したことが原因の可能性がある」と付け加えている。
操業のボトルネック
サウジアラビアのセメント業界への影響が予想されるその他の主要な市場課題と新たな動きとしては、外国人人頭税と、工場の電力消費量を低減するための環境に配慮した新技術の採用を挙げることができる。
『サウジアラビアのセメント市場―予測と分析レポート2021-2025年』と題する論文によると、外国人人頭税は、サウジアラビアのセメント市場にとって大きな課題であると考えられている。
同論文には、「この外国人人頭税は、サウジアラビア人より外国人の従業員の方が多い企業にとって特に負担が重い」と記されている。
新たな動きとしては、サウジアラビアのセメント業界は、燃料やエネルギーの費用が通常、総生産コストの3、4割を占めるため、より環境に優しい低消費型工場に目を向けていることが、レポートで言及されている。
「その結果、この地域のセメントベンダーは、エネルギー価格の上昇に起因する生産コスト増が予想される状況への対処として、代替方法の採用に力を入れている」とも記載されている。
その他の動向としては、セメント価格の見通しについての変化を挙げることができる。サウジアラビアのベンダーは、セメント輸出の解禁後に、新製品の発売をさらに推し進め、顧客基盤を拡大している。輸出規制の緩和は、建設業界の回復を促すことを目的としていた。ハトゥーム氏は、「禁止令が再実施された場合、セメント価格は再上昇する可能性がある」と述べている。