
アラブニュース:ドバイ
サウジアラビアの航空部門の成長は、湾岸協力会議(GCC)諸国全体の観光市場の成長にとって不可欠な触媒となる。ドバイ空港会社のポール・グリフィスCEOは、政策立案者やビジネスリーダーとのインタビューを特集するアラブニュースのトーク番組「フランクリー・スピーキング」の司会者ケイティ・ジェンセンとのインタビューでそう語った。
サウジアラビアの巨大都市ネオム(NEOM)が今月初め、ネオム湾空港(NUM)からの世界初の商業便を6月末に就航させると発表した。計画ではドバイを最初の目的地とし、ロンドンも「間もなく」これに続くという。同氏の発言は、この発表を受けたものである。
ドバイ国際空港をその旅客数において世界一の港に変貌させた立役者であるグリフィス氏は、次のように語っている。「多くの人が、『サウジアラビアが競争相手になる』と私が言うことを期待していると思います。実際、サウジアラビアはドバイにとって非常に重要な市場です」
「サウジアラビアはドバイにとって3番目に大きな市場であり、より多くの路線を確立することが非常に重要なのです。ここ数年でサウジアラビアは大きく発展しました。そして、サウジアラビアが観光産業を発展させることは、ドバイにとって良いことなのです」
先週ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会でも、同様の感想が述べられた。
サウジアラビアのハーリド・アル・ファーリハ投資大臣は、「サウジの展望」をテーマにしたパネルディスカッションに参加し、次のように述べた。「満ち潮はすべての船を持ち上げます。地域統合は、サウジアラビアにとってというよりも、小さくとも非常に重要な近隣の経済国にとって価値があることなのです……ですから、私は、王国の経済的・競争的パフォーマンスの上昇は、実際に彼らの競争力の増加に寄与すると信じています。それらの国の企業や会社、政府が、より大きな世界経済と統合することができるようになるからです」
同じセッションの別の講演者、サウジアラビア観光省戦略・執行担当副大臣のハイファ・ビン・ムハンマド・アール・サウード氏は次のように述べている。「この地域全体が移動の拠点となります。一度この地域に到着すれば、さまざまな目的地を訪れるということが可能になるのです。目的地としての地域間の競争は、確実に私たちの利益になるのです」
このメッセージに、グリフィス氏も同意する。「ヨーロッパやアメリカなどの旅行が盛んな地域では、1つの都市を訪れて、そのまま帰国するといったことは、ほとんどないでしょう」
「旅行の選択肢が増え、中東の訪問都市が増えることはサウジアラビアの都市を含むGCC諸国にとって非常に有益です。ドバイに来て、サウジアラビアやオマーンに行くなど、地域の他の都市を訪れる。ヨーロッパで多くの人がしていることを、この地域でも行うことができるようになるからです」
「せっかくロンドンに来たなら、パリにも行きたいでしょう。マドリッドにも、ローマにも。ですから、観光の選択肢が増えることは、地域全体にとって、とてもプラスになると考えます」
ドバイ空港会社の初代CEOとして、グリフィス氏は15年以上そのポストについており、ターミナル3の立ち上げや、ドバイ第2の空港であるドバイ・ワールド・セントラル国際空港(DWC)の開港を成功させている。
先日、同空港が発表した数値によると、2022年第1四半期に同空港を利用した乗客は360万人を超えた。これは、2020年初頭以来最も忙しい四半期であったことを示している。
また、2024年には、予測より1年早く、空港の稼働状況が新型コロナウイルスによるパンデミック前の水準に戻ると予想している。では、これだけ堅調に成長している今こそ、IPOのチャンスなのだろうか。
グリフィス氏は、ドバイ空港会社は「IPOの魅力的な候補になるでしょう」と控えめに答え、前述の数字を上げながら「パンデミックの間でも実績があることは、そのような動きに対して好材料になるでしょう」と付け加えた。
また、「近い将来、ある段階で、そのような決定がなされるかもしれません」と楽観視しつつ、「最終的には、ドバイ政府が決定することです」とも付け加えた。
今年、ドバイ政府は10社の政府系企業をドバイ金融市場(DFM)に上場させる予定である。ドバイ電力水道公団(DEWA)は今年初め、世界第2位の規模のIPOを行った。この種の上場としては地域初であり、2019年にサウジ石油大手アラムコが記録的な新規株式公開を行って以来、最大規模となった。
次は、ドバイの有料道路運営会社サリク(Salik)と地域の冷房会社エンパワー(Empower)がIPOの対象になるかもしれないという噂がある。エミレーツ航空もDFMへの上場を検討しており、ドバイを拠点とするこの航空会社のシェイク・アハメッド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム会長はCNBCに対し「将来的にエミレーツ航空が市場に出ることは間違いないでしょう」と語った。
4月にマンチェスターで行われた航空サミットで、エミレーツ航空のティム・クラーク社長は、「世界中のあらゆる銀行家が、『あなた達にお金を預けたい投資家がいる』と連絡してくるので、電話の電源を切らなければなりませんでした」と述べている。
グリフィス氏は、次のように語る。「この地域の多くの都市が、力強い成長、優れた業績、優秀な財務管理、健全な戦略という素晴らしい実績を持つ段階にまで来ています。これは、成熟の証しです。そして……これらはすべて、IPOのための良い要素となり得るのです」
航空業界、特にドバイの見通しについて強気な姿勢を見せる一方で、グリフィス氏は、世界的な地政学的・経済的な懸念が残っていることを認めている。UAEでは、ドバイの空港が全旅客輸送量の60~70%を占めている。同氏は「一部の乗り継ぎ市場、特にアジア、中でも中国の低迷が懸念されます。しかし、乗り継ぎ市場はおよそ50%回復しており、今後数カ月の間に改善されると予測しています」と述べた。
燃料価格の高騰は「明らかな懸念材料」ではあるが、UAEの立場は「現時点ではかなり強い」と述べた。
「業界は、多くの市場、特に欧米での力強い回復を利用しています。そして、今後数カ月間の回復について、心配するようなことは何もないと思います。いくつかの兆候から判断すると、世界的にインフレが進行し、年末には状況が一変しているかもしれません。しかし、今のところ、業界の回復と旅行需要は極めて好調で、近い将来において弱まる兆候は見られません」
ドバイ国際空港は、世界で最も利用客の多い国際空港である。今年は5830万人がターミナルを通過すると予測されている。しかし、北側滑走路の改修工事のため、現在は滑走路1本で運営している。
そのため、週に約1000便のフライトが影響を受け、そのほとんどがドバイのもう一つの空港であるDWCに迂回することになる。グリフィス氏は、滑走路が予定より早く開くことは「ありえない」が、「予定通り」6月22日に開くことは「間違いない」と述べた。
改修のほとんどは技術的なものであり、「乗客が気づくようなものではありません」と同氏は説明したが、「新しく改修された駐機場では、航空機のタッチダウンが少しスムーズになるかもしれません」と述べた。
グリフィス氏は、UAEの高給取りの顧客を満足させるため、格安航空会社をDWCに振り分ける、ということを意図しているのではないとして、UAEの旅客便のうち「それほど多くは」DWCに送っていないことを付け加えた。
「実際にはほとんどの便がDXB(ドバイ国際空港)の利用を継続しています」と同氏は述べた。「UAEは路線の量を減らすことで対応しています」
グリフィス氏によると、改装は「今のところ非常にうまくいっている」一方で、同氏は空港が直面している別の継続的な問題、サイバーセキュリティについて強調した。「現在、これは大きな問題になっています。悪意ある攻撃の数はほとんど日に日に増えています」
「例えば、悪意のある電子メール――ビジネスとは無関係のトラフィック――の数を見てみると、70%も増えています。つまり、業務の要請でもなんでもない、空港の運営に関係のないトラフィックが、全体の中で膨大な量を占めているのです」
今年初めにアブダビ空港を襲ったフーシ派によるドローン攻撃などの物理的な攻撃よりも、サイバーセキュリティに対するハッキングやサイバー攻撃の方がより大きな脅威なのかという質問に対して同氏は、空港は「独りよがりの判断をしている余裕はありません」と述べた。そのためにドバイ国際空港は「変化する脅威への対策として、トレーニングとテクノロジーに常に投資しています」と付け加えた。
グリフィス氏によると、ドバイ空港は持続可能な取り組みにも多額の投資を行っているという。太陽光パネルによる発電や駐車場内の車両の冷却、使い捨てプラスチックの禁止、業務車両には電気自動車やハイブリッド車を使用していると語った。
「消費者は、持続可能性に真剣に取り組んでいない空港や航空会社を利用したがらないでしょうから」と、同氏はこの課題への取組みは重要であると述べている。
この航空拠点はまた、エミレーツ航空とともに、今年の第3四半期に「持続可能な航空燃料(SAF)」の使用を試験的に行っている。国際航空運送協会(IATA)の試算によると、SAFはフライトによる二酸化炭素排出量を約80%削減することができる。
グリフィス氏は、SAF開発の可能性を妨げているのは、供給と流通の問題であると言う。世界中の空港が着陸時にSAFを供給できなければ、航空会社は出発地から燃料を運ばなければならず、「多くのメリットを失うことになる」と言う。
彼は、解決策として、SAFをできるだけ製造元の近くで飛行機に注入できるようにすること、また、「何らかの形で補助金を出し、ジェット燃料のサプライチェーン全体でSAFの製造コストを吸収できるようにし、個々の航空会社が“他社よりも環境に優しくあるための”苦痛を感じないようにすること」を挙げた。
「私たち全員がコストを分担し、全員が報酬を得ることが理想です」と述べた。
燃料費の高騰は、「航空券の値段の上昇に転嫁せざるを得ないかもしれませんが、持続可能性は実現しなければならないし、そのための費用も何らかの形で支払わなければなりません」と、同氏は消費者が持続可能な選択のために高い費用を払わざるを得ない可能性を示唆した。
グリフィス氏は、今後1年間の見通しについて、非常に「ポジティブ」だと感じている。「経済や政治的なイベント、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復について未知数な部分はあります。しかし、ドバイの航空宇宙セクターについては非常に強気です」と述べた。
また、同市の観光・接客インフラを「世界でもトップクラス」と称し、「ドバイの需要は絶対に急増します」と強調した。
「私たちは昨年末のパンデミック前の訪問者数を111%上回った実績を持っています。そして現時点では約100%となっています」と同氏は語り、こう続けた。「これはかなり強い数字といえるでしょう」