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インフレの影響で、114年間愛された日本のキャンディーの歴史に幕

2022年11月9日、佐久間製菓株式会社のサクマ式ドロップス(ロイター)
2022年11月9日、佐久間製菓株式会社のサクマ式ドロップス(ロイター)
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10 Nov 2022 02:11:38 GMT9
10 Nov 2022 02:11:38 GMT9

東京:年代を超えて愛され続け、人気のアニメ映画にも登場するほど有名な日本のキャンディーが、原材料やエネルギー価格高騰を受け販売終了に。

2022年11月9日水曜、東京に本社を置く佐久間製菓株式会社が、原材料の価格上昇や人員不足、また主力商品である「サクマ式ドロップス」の売上減少を理由に、来年1月に廃業することを発表した。

同社を代表するキャンディ(赤いスチール缶に入った、硬くてカラフルなフルーツ味のドロップ)の販売終了のニュースで、日本中が悲しみに包まれた。

「小学生の頃、家にはいつもあの赤い缶がありました」と菓子店を営むワタナベ・ナオエさん(53歳)は、10円玉を使って缶の蓋をぽんっと開けていたことを思い出しながら語った。発売から114年、街角の菓子屋で人気の商品だった。

「時代を物語っているようです。私が子供の頃と比べ、今は選択肢がたくさんありますから」とワタナベさんは言う。

イチゴ、レモンなど8種類の味を楽しめるこの商品だが、佐久間製菓によると、長い間、価格を上げることはしなかったという。多くの日本企業は顧客を失うことを恐れ、価格を上げたり高騰する製造コストを価格転嫁することを躊躇する。

同社の代表者によると、100名ほどの社員の今後についてはまだはっきりしておらず、これ以上のコメントは差し控えるとしている。

菓子の製造をしていた佐久間惣治郎氏が1908年に設立した佐久間製菓は、第二次世界大戦の空襲の中でキャンディーを製造した。アニメ制作会社大手のスタジオジブリにも影響を与え、1998年公開の映画『火垂るの墓』に登場し、時代を超えて愛されることとなった。

映画では、戦時中に兄と共に生きながらえようとする幼い女の子が、家が焼けた後の数少ない持ち物の一つとして、サクマ式ドロップスの赤い缶を持ち歩いている。

有り余る選択肢

東京で人気の商店街で菓子店を営むマツザワ・ヒロシさんは、サクマ式ドロップスは年配客に人気の一方、子供たちは無数の新商品がある中で、選ぶのに迷うほどだという。

駄菓子屋(昔から子供達が学校帰りに立ち寄る店)を夫婦で営んでいるイシグロ・テルヨさんは昨年、サクマ式ドロップスの取り扱いを止めた。購入するのは50代以上が多かったという。

60年以上お菓子の販売をしているという80代の人物は、ロイターの取材に対し「長い間親しんだものが無くなるのを見るのは、とても寂しいです」と語った。

ほぼ2桁の卸売物価のインフレ率と円安により、多くの食品メーカーの利益が圧迫されている。 2022年1月には、人気のコーンパフスナック菓子「うまい棒」の販売メーカーが1979年の発売以来初めてとなる値上げを発表し全国的な見出しを飾った。

信用調査会社、東京商工リサーチによると、佐久間製菓は2021年度に1億5000万円(100万ドル)余りの純損失を計上している。東京商工リサーチは、2022年11月9日水曜日に佐久間製菓の廃業を最も早く伝えた。

それでも、ファンにとって全てが失われるわけではない

戦後、佐久間製菓と袂を分かち設立されたライバルであるサクマ製菓株式会社は、緑の缶に入った類似商品で、混同しやすい商品名の「サクマドロップス」を引き続き製造する。

佐久間製菓の廃業について、サクマ製菓の広報は「競争相手として悲しいです。しかし、当社は新しい方法、新しい商品ラインアップを試すことに、より一層努力をしたのだと思います」と語った。

ロイター

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