• 株式販売による約300億ドルが、向こう数年間に投資される

ダボス（スイス）： 1月21日（火）サウジアラビア財務大臣によると、同国は、先月の巨大石油企業サウジアラムコの上場による収益金を、向こう数年にわたって国内経済へ投入し、イランとの緊張が高まる中、国内の防衛産業強化などに充てると　いう。

モハメッド・アル・ジャダーン財務相がロイターに語ったところによると、米国の空爆でイランの最高司令官が殺害され、イランがイラク内の米軍基地へ報復のミサイル攻撃を行った後、米国とイランの間には敵対感情を低減するための「真剣な働きかけ」があったという。

「歴史を振り返ってみると、中東における我が国は、実際の武力戦争など、もっと深刻な地政学的緊張状態を乗り　切ってきました」と同財務相は世界経済フォーラム会場でのインタビューで語った。

「我々サウジアラビアは経済と改革に注力する必要があります... 紛争は対話によってしか解決できないと確信しています」

昨年ペルシャ湾で起きたタンカーや世界最大の石油精製施設を始めとするサウジアラビアの石油施設への一連の攻撃で、サウジの防衛は大きな影響を受け、石油産業から経済をもっと多様化させようという改革指標の挫折が危ぶま　れた。

サウジと米国はその攻撃についてイランを非難しているが、イランは関与を否定している。しかしその一方で、原油の輸出に課された西洋大国による制裁措置への報復として、ホルムズ海峡航路を閉鎖すると脅しをかけている。

米国はサウジアラビアへの軍隊を増強、フランスはレー　ダーシステムを配備してサウジ空軍を支援している。

昨今の緊張状態以前から、サウジアラビアは国の公共投資基金（PIF）で賄われている軍事産業経費の50%をローカライズする動きを開始していた。

アラムコの現地株式募集から先月約300億ドルがPIF へ投入され、防衛やテクノロジーなどの新規および既存の地元産業は財源が潤うことになるだろう、とジャダーン財務相は言う。

さらに、「我々はPIF による投資を始め、軍事産業と協力して中期的な自国の軍事資産を増強し、そうしたリスクに対応しています」と述べた。

サウジアラビア経済はアラブ諸国中最大であり、多様化計画はあるものの、現在も炭化水素鉱床からの収益がその大半を支えている。近年は原油価格の低迷や多額の赤字予算を縮小するための緊縮財政のため、困難に直面してきた。

ジャダーン財務相によると、堅実な需要と産出量の削減、交易上の緊張関係の低減によって、2020年はより健全な原油価格が見込まれると語る。

また、赤字についても、年末までには先月発表された数字よりも縮小が予測されるという。先月の発表では、今年サウジアラビアは500億ドル近い赤字となる可能性があるとされていた。

しかし、サウジアラビアがOPECプラス産油国グループと先月産油量の削減に合意したことにより、経済成長率が今年1.9％に達するであろうことを踏まえ、国際通過基金が1月20日（月）にその赤字予測を引き下げた。サウジアラビアとしては2.3%の成長率を見込んでいると言う。

「我々は非石油GDP 成長率の向上にしっかりと焦点を定め、観光業、娯楽、スポーツ、テクノロジー、金融関係に注力していきます」とジャダーン財務相は言った。

また彼は、今年のG20の主催が中東問題解決への重要な足がかりとなったと述べた。

「世界の注目が中東へ向けられることが非常に重要です」とジャダーン財務相は言う。「中東問題の一部が解決できれば、それは全世界にとっての安堵につながるからです」

ロイター