
日米両政府は28日、電気自動車(EV)向けバッテリーに使われるリチウムなど重要鉱物資源の安定調達に向け、サプライチェーン(供給網)強化を目指す新たな協定を結んだと発表した。資源を貿易相手国に対する経済的威圧の手段に用いる中国への依存度を低減させる狙いで、同様の枠組みを先進7カ国(G7)にも拡大したい考えだ。
また、新協定により日米は自由貿易協定(FTA)を締結した扱いとなる。これを受け、米国のインフレ抑制法に明記されたEVの税額控除の対象に、日本で採取または加工された重要鉱物を使ったバッテリー製品が含まれる見通し。日本メーカーも恩恵を受けそうだ。
西村康稔経済産業相は28日午前の閣議後記者会見で、「日米さらには同志国との連携による強靱(きょうじん)なサプライチェーン構築を目指す」と述べた。
新協定では、リチウム、コバルト、ニッケルなど5種類の重要鉱物資源の安定確保へ連携する。具体的には、中国などの第三国が意図的に供給網を途絶した際に日米が協調行動を取ることに加え、日米間で対象資源の輸出関税を控えることやリサイクル促進などを明記した。経済安全保障の確立に向け、中国資本による資源権益買収の制限を念頭に、対内投資審査を厳格化することも盛り込んだ。
バイデン米政権は今月、欧州連合(EU)とも同様の協定交渉に着手。日本が議長国を務める5月のG7首脳会議(サミット)で協力枠組みの拡大が主要議題になる見通しだ。アフリカやアジア、南米を含む「グローバルサウス」の資源大国に生産拡大を働き掛けることも視野に入れている。
時事通信