
ファイサル・フェイク
原油価格は5週連続で下落を続け、過去1年で最安値に達した。
ブレント原油は1バレル54.47ドルまで落ち込み、WTIも1バレル50.32ドルまで下落した。
いま国際石油市場は2つのウイルスの間で身動きの取れない状態だ。
中国では致命的なコロナウイルスが発生し短期的な石油市場の需要に打撃を与えている。時を同じくして、サウジアラムコへのサイバー攻撃の試みも増えているのだ。
2つのウイルスは一方で供給を脅かし、他方で需要を脅かす。が、原油価格の下落傾向は究極的にはいまだマクロ経済の問題だ。
こうした逆風はあるが国際石油市場はおおむねぎりぎりの均衡を保っている。これは、従来とは異なる原油供給先が急増するなか、OPECプラスの4年越しの取り組みが実ったことによる。
2020年後半は世界経済の低成長が見込まれ、原油需要もやや落ち込むはずだ。
OPECによる生産抑制はなお全会一致で引き延ばす必要があろう。とりわけ中国が日量約300万バレルまで需要を減らしているという現実がある。この数字は中国の精製能力全体のほぼ5分の1となる。貯蔵量が徐々に限界にいたると需要の落ち込みもいや増すはずだ。結果として荷揚げが遅れ精製施設からの石油搬出が遅れ、それでなくてもわずかなマージンにあえぐことから、船主への滞船料が過大にかさむことになる。
こうした状況から、現物市場での原油価格も値下がりしている。
例えば、中国へパイプラインで届けられる唯一の原油であるロシアのESPO原油のスポット価格プレミアムは、過去5か月で最安値を記録した。これは独立系の山東省「ティーポット」製油施設でもっとも人気の高い原油グレードだ。
最大の影響を被ったのは中国東部の山東省で、ここは中国全体の原油輸入量の20%を占める。現地の精製稼働率は半減している。
中国でこのように需要が縮減し精製能力が弱まったあおりは海運業界にまで及んでいる。傭船業者は荷揚げが遅れた違約金を船主に払わざるをえないためだ。ここからタンカーの費用が暴落にいたっている。