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アラビア人の祖先の生き残りを助けた遺伝子が、現代人の命を奪っているかもしれない

26 Mar 2020
DDIの最高科学責任者を務め同研究の上席著者でもあるファハド・アル・ムラ(Fahd Al-Mulla)教授(写真左)と、DDIで遺伝学と生物情報学の専門家として務めるイーズワー・ムスクリシュナ(Eaaswar Muthukrishna)博士による今回の画期的な研究論文は、オックスフォードの学術雑誌Genome Biology and Evolutionに掲載された。(提供済み)
DDIの最高科学責任者を務め同研究の上席著者でもあるファハド・アル・ムラ(Fahd Al-Mulla)教授(写真左)と、DDIで遺伝学と生物情報学の専門家として務めるイーズワー・ムスクリシュナ(Eaaswar Muthukrishna)博士による今回の画期的な研究論文は、オックスフォードの学術雑誌Genome Biology and Evolutionに掲載された。(提供済み)
Dasman Diabetes Institute(DDI)は、クウェートに拠点を置く医療研究センターである。クウェートで、様々な研究、トレーニング、教育、健康増進プログラムを通じて、糖尿病や関連する疾患の予防と治療に取り組んでいる。(提供済み)
Dasman Diabetes Institute(DDI)は、クウェートに拠点を置く医療研究センターである。クウェートで、様々な研究、トレーニング、教育、健康増進プログラムを通じて、糖尿病や関連する疾患の予防と治療に取り組んでいる。(提供済み)
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Updated 26 Mar 2020
26 Mar 2020
  • 研究の結果、猛暑や食料不足に耐えられるよう進化した遺伝形質が、豊富な食べ物やエアコンに恵まれている現代の脅威であることが判明した
  • 遺伝子の適応に加え、日常生活で座って過ごすことがますます増えたことで、肥満や糖尿病といった代謝障害のリスクが増大した

Sarah Glubb

ロンドン:クウェートの研究チームが、アラビア半島の劣悪な環境の中で遊牧民の生き残りを助けたDNAのある部位が、中東で糖尿病や肥満の発生率が高くなった原因の一端を担っていることを確認した。

研究によると、同地域で代謝障害が増加している原因は、運動不足や不健康な食生活だけでなく、遺伝的な要因もあるという。

クウェートのDasman Diabetes Institute(DDI)による今回の研究では、数百人のクウェート人のDNAを対象とし、60万件を超える遺伝的変異が検査された。科学者からなるチームが、何世代もかけて進化してきたDNAの複数の部位が、高血圧や糖尿病といった健康障害に関係していることを発見した。

学術雑誌Genome Biology and Evolutionで最近発表された今回の研究結果から、研究チームは、劣悪な砂漠環境の中で狩猟採集民として暮らしていたクウェート人の祖先の生き残りを助けた遺伝的適応が、現代人の健康危機の原因の一端を担っていると確信している。

「祖先の遺伝子構造には、気候や食料不足から彼らを守り極めて低い代謝を実現した、他とはまったく異なる点があるはずだというのが私たちの見解でした。」と、DDIの最高科学責任者を務め同研究論文の上席著者でもあるファハド・ アル・ムラ(Fahd Al-Mulla)教授は言う。

Dasman Diabetes Institute(DDI)は、クウェートに拠点を置く医療研究センターである。クウェートで、様々な研究、トレーニング、教育、健康増進プログラムを通じて、糖尿病や関連する疾患の予防と治療に取り組んでいる。(提供済み)

「暑い気候で暮らし食べ物があまりなければ問題ありませんが、食べ物がたっぷりありエアコンのきいた部屋で座って過ごすような環境では、この遺伝子は命取りになります」

研究で取り上げられた遺伝的変異は、高血圧、肥満、2型糖尿病に関係するタンキラーゼ(TNKS)遺伝子内およびその周辺で見られた。

クウェートは肥満率が世界でもっとも高い国の一つだ。人口の約40%が太り過ぎとされている。他の湾岸諸国も後れを取っておらず、糖尿病や高血圧など肥満と関連する疾患の増加に悩まされている。

座って過ごしがちな現代の日常生活も原因として頻繁にあげられ、また要因の1つであることは疑う余地がないが、今回の研究によって、祖先の遺伝的適応が現代のクウェート人の健康に与える有害な影響が明らかになった。

「研究が標的を定めたゲノム領域は、クエート人の祖先にあたる遊牧民の代謝を活発化し高血圧を誘発した可能性があり、これが厳しい環境での生存に有利に働いたかもしれません」と、DDIで遺伝学と生物情報学の専門家として務めるイーズワー・ムスクリシュナ(Eaaswar Muthukrishna)博士は言う。

また同氏は、今回の研究は初の「アラビア半島の人類集団の自然選択を発見するための総合的な分析」だと付け加えた。

アル・ムラ教授は、健康上のリスクに対する認識を高めるだけでなく、リスクを負いやすい子供を特定し、食べ過ぎによって代謝障害を発症する可能性を抑えるにはどうしたら良いかを両親に助言する上でも、今回の発見が重要な役割を果たすとした。

今回の研究結果は、現代人に健康に関する警報を鳴らすと同時に、同地域における人の移動や環境の変化の解明にも役立つ。

「アラビア半島には、過酷で変動しやすい環境条件にも関わらず、何度か移住者の波が押し寄せている」と同研究論文の執筆者らは指摘している。「住民はやがて、暑くて乾燥した環境に適応していった。

「アラビア半島は考古学的に、アフリカから他地域へと現代人が分散した時期に、極めて重要な役割を果たしたと言われている….そのため同地域の居住者の進化史は長くて複雑だ」

現代のクウェート人の祖先の大半は、サウジアラビアから移住した初期の入植者で、漁業、真珠採取業、船乗り業を主な収入源としていた。

また同研究論文は、「以前の研究から、クウェート人の遺伝子構造は異質(多様)であり、3つの異なる祖先の遺伝的背景から成ることが判明している。これらの遺伝子背景は、おおまかに現代のサウジアラビア人、イラン人、ベドウィン族に関連付けることができる」としている。

ムスクリシュナ博士によると、研究チームは今後研究対象をさらに広げ、オマーン、イエメン、アラブ首長国連邦のアラビア人を調査する予定だという。

「アラビア半島におけるパターンを解明するため、現在データセットを分析中です」と博士は語り、現在進行中の調査ではサウジアラビア人もさらに詳しく調べる予定だとした。

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