
カタリーナ・クーファ―(名;固有名詞)
ドバイ:実用的なコミュニケーションの手段としての文字(書)は、文脈的にも、装飾的にも文化の提唱者として発展してきた。多角的で複雑な文字とは、歴史の層や意味、文化的価値を暴くと同時に覆う伝統である。
文字(書)の歴史は、紀元前3500⁻3000年頃のシュメール人のくさび形文字にさかのぼるが、7世紀からのイスラム教の広がりにより、標準的で地域ごとのスタイルを生み、より定義的なアラブ文字に発展した。
それぞれのスタイルには、独自の機能、時刻印、後援者(パトロン)、読者や背景、発祥の地、アリフ文字(Alif)やLaam文字のように分析により判明した詳細が含まれる。
しかし、ヒジュラ暦、1-2世紀には、文字(書)は、探求心あふれる学者に広い解釈の余地を与えた。破損しながらも保存されてきた多くの文書には、印刷・出版所の標章(コロフォン)や記載日、作者などの記載がない。代わりに、文書や対象の調査開始点を抜粋した炭素14や、イブン・ナディームの10世紀著“フィフリスト”のような書籍が取り入れられた。この“フィフリスト”では最古の4つの文字はMakki、Madani、Basri、Kufiであることを明らかにした。
明確な線上の進展や強い文体の類似がないまま、18、19世紀には、コーランを記載するのにヒジュラ暦1世紀に使用されていた巨大で、角ばった、点の付かない多くのアラブ語の文字(書)はクーフィー体として分類された。
「マダニはアラブ語の最古のフォントの一つで、サウジアラビアのマディーナ、マワリにちなんで付けられた。これらの地で、このフォントは発見され、国王間の伝達文書に加え、聖なるコーランやスンナを書き写すのに使われていた」とSharjahカリグラフィーミュージアム、アシスタント・キュレーター(学芸助手)であるFadhel Al-Ali氏は説明する。
マダニは、文字の完全性と柔軟さが特徴である。これは際立った特徴であると、書道家、Abdulaziz Al-Rashidi氏は語る。
前述の文字を強調するよう逆方向になり、丸みを帯びた右方向への傾斜と、最終点の輪郭が特徴。(Hijazi文字の共通の特徴)マダニは、後のフォントを生み、関連付けたビジュアル的な背景を担う基礎的なフォントである。その実質的機能は、特徴的なコンパクトさ、細長いストローク、子音を区別する文字上のダッシュ、ドッドや音声区分記号(発音記号)の欠如である。
コーランでは、羊皮紙の縦ページの1コラムであり、子音の欠如はコーランを朗読するよりむしろ、暗記した時代であったことを示す。
しかしながら、マダニは聖遺の伝統ではない。「マダニは、今もなお、文字(書)の歴史的起源の重要な視覚的参考資料(ビジュアル・レフェレンス)である」とAl- Rashidi氏は説明する。
King Abdul Aziz ヒストリカル・センター、King Salman・センター・フォー・ヒストリカル・マテリアル・レストレーション・コンサベーション所蔵のアラブ文字や文書、手稿の保存に意欲的であったAbdul Aziz王に従い、Faisal bin Salman王子は、展覧会での展示などを通し、マダニ手稿の保存に注力してきた。
エジプト国立図書館、パリ国立図書館、ライデン大学図書館、バーミンガム大学図書館、ベルリン図書館は、マダニ文字のコーランを所蔵しているが、2018年、Fahd Complex王は、コーランの印刷のため、古代フォントをデジタル化するイニシアチブを開始した。
「文字(書)の芸術は、我々のアイデンティティーであり、歴史的遺産である」とAl-Ali氏は語る。「文字を保存することにより、我々はアラブ人としてのアイデンティティーを守っているのだ」