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ビジネスを紡ぐ日本の柔道着メーカー

大阪府柏原市の工場で、柔道着を製造する年代ものの織機をチェックする、日本の武道用具メーカー九櫻のスタッフ。2020年2月25日撮影。(AFP)
大阪府柏原市の工場で、柔道着を製造する年代ものの織機をチェックする、日本の武道用具メーカー九櫻のスタッフ。2020年2月25日撮影。(AFP)
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16 Jul 2020 06:07:57 GMT9
16 Jul 2020 06:07:57 GMT9

柏原:柔道着は世界中で作られているが、柔道の国際連盟によって指定されているサプライヤーはほんの一握りだ。中でも自社製の生地を使っているメーカーとなると1社しかない。

創業は1世紀以上も前にさかのぼる、大阪の柏原市の九櫻(くさくら)は、織布だけでなく裁断や縫製を一貫して行う、手間と時間のかかる工程にこだわってきた。

同社の三浦正彦社長は、そうした手間はそれだけの価値があると語る。

「説明するのはとても難しいが、単に織布の設備の問題だけではなく、創業以来の魂」だと彼は言う。

「柔道着を作る限り、織布の工程を手放すことは決してありません」

柔道のユニフォームである柔道着は、帯(おび)と呼ばれるベルトを締めた白い上着と白いパンツのセットだ。

1918年に縫製会社として創業した九櫻では、最高級の柔道着の生地は、縦糸に素早く糸を交差させる木製のシャトルで生地を織る、何十年も前に造られた織機で製造されたものだ。

由緒ある機械は同社の長い伝統の一部だが、その機械はもはや製造されていないため、設備の稼働を継続させることも簡単なことではない。

九櫻のスタッフは常にスペアパーツを手元に置いておく必要があり、繊維メーカーが廃業する話を聞きつけると、部品を入手するために駆けつけるなどということもよくあるという。

製造主任のハヤカワ・ヨシフミ氏によると、年代ものの機械で織られた生地の品質は際立っており、顧客からその繊細な質感を称賛されることも少なくないという。

「今後10年、20年さらに100年と、この伝統ある生地を作り続けていきたいと思っています」と彼は言う。

綿で織られた生地が完成すると、汚れや凹凸などがないか従業員が手作業でチェックし、丁寧に裁断して1ミリ単位で縫い幅を調整しながら縫製する。

日本の国花である桜を表すSマークをロゴに使う同社は、年間15万着もの柔道着を製造しているが、伝統的な機械と現代の設備で作られた生地を使用して日本で製造されているのは、わずか1万7千着あまり。伝統的な機械だけで織られた生地を使っているのはほんの一握りだ。

得道した人を意味する「道人」というブランドの、こうした高級柔道着の販売価格は1セット50,000円(470ドル)。一方、同社の中国製の柔道着は、より消耗の激しい用途向けのセットで10,000円から23,000円の価格帯だ。

同社の製品は日本の柔道着市場の約30%を占め、約20か国に輸出しているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で出荷は伸び悩んでいる。

九櫻の東京ショールームでは、何十着もの柔道着が試着用に展示されており、生地の縮み具合もわかるように3回以上洗濯したサンプルも用意されている。

ショールームを担当するエビサワ・アツシ氏によると、相手が掴む部分を小さくするためにタイトなフィット感を好む顧客が多いが、国際柔道連盟は長さ、幅などの詳細に関して厳格な規則を定めているという。

ショールームを訪れたスペイン人のハビエル・パレジェロさん(32歳)は、指導者である「先生」が九櫻の柔道着を着用しており、他社の製品よりも軽いと感じると言う。

「この軽さは試合中に技をすばやくかけるのに有利だと思います」

九櫻の一部のスタッフにとっては、柔道着の製造と販売は単なる仕事以上の意味があるようだ。

10歳の時から柔道に親しんできたベテラン営業マンのオオヒラ・カズナリさん(44歳)は、今も仕事を終えると、スーツから柔道着(もちろん九櫻製)に着替え、子供たちに柔道を教えている。

彼はまた個人的に、柔道着を販売した地元の高校の柔道部に通い、大会に参加する生徒たちを見守っている。

「20年以上この学校の生徒たちに関わっています」とオオヒラさんはAFPに語る。 「ちゃんとしたサイズの柔道着を納められたかどうかは、実際に試合を見るまではわかりませんからね」と彼は言う。 「気持ちの問題です… 試合を見に行かなくなくてはならないというのは職業病みたいなものです」 尊敬の心は柔道の重要な精神あり、生徒たちは柔道着にも、それを買ってくれた両親にも、さらには自分たちが強くなるのを助けてくれる相手に対しても尊敬の心をもつことを期待されているのだとオオヒラさんは説明する。 「床に置かれた柔道着や帯をまたぐだけでも醜い行為と考えられています」と彼は語る。 「日本では、柔道はやはり単なるスポーツというよりも『武道』そのものです」 

AFP

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