
東京: 日本がデジタル化に向けた野心的な計画を打ち出してから20年が経過したが、COVID-19の危機は、政府の根深い技術的な欠点を露呈させた。各省庁は紙ベースの文化にいまだに囚われており、そうした文化は日本の生産性を損なっていると専門家は指摘する。
日本政府は今年の主要な政策方針として「デジタルトランスフォーメーション」を掲げている。だが各省庁の官僚がいまだに電話会議を行うことができず、事務作業のほとんどをオンラインで行うことができない中で、デジタルへの転換はそう簡単にはいかないかもしれない。
アナリストによると、政府のデジタル化が進まないことで、民間企業がデジタル化するインセンティブが低下し、日本の生産性向上への取り組みに悪影響を及ぼす可能性があるという。
第一生命経済研究所のシニアエコノミストである星野卓也氏は、「政府のデジタル化への投資が十分でないことが、民間企業の生産性と効率性を阻害している」と述べている。
中期政策戦略の中で政府は、デジタル化を加速させることを誓った。時代遅れの行政により、パンデミックによる影響から国民を守るための給付金の支給が遅れる事態となっている。
問題の大部分は、日本が役所での承認に紙の書類と印鑑を好むことに起因している。
「紙の書類と印鑑はいまだに一般的だ。また私が普段やりとりする政治家は、実際に会って話すことを重視している」と、ある政府関係者は匿名を条件にロイター通信に語った。
デジタル化の問題に加えて、日本の縦割りの官僚機構がある。例えば、各省庁や地方自治体は、お互いに互換性のない独自のコンピューターシステムを開発している。
内閣府のIT戦略担当者がロイター通信に語ったところによると、各省庁は現在、様々なベンダーと協力し、独自のLANネットワークを構築している。そのため、オンライン・セキュリティの方針の違いから、省庁間で電話会議を行うことが困難になっているという。
日本総合研究所によると、日本での事務処理のうち、オンラインで処理されているものは12%にも満たない。
政府の規制改革委員会は昨年7月に発表した報告書の中で、デジタル化が実現されなかったならば、年間3億2300万時間の労働時間が無駄となると試算している。これは人件費に換算した場合、およそ80億円に相当する。
デジタル化の遅れによる弊害は、世界有数の技術大国としての日本のイメージが幻であることを示している。実際、スイスのシンクタンクIMDが実施したデジタル競争力に関する調査によると、世界第3位の経済大国である日本は、シンガポール、韓国、中国などのアジア諸国に遅れをとっており、63カ国中23位となっている。
直近のOECDデジタル経済アウトルックによると、日本は31カ国の中でオンライン手続きの利用率が最も低く、官公庁でデジタル・アプリケーションを利用している国民の割合はわずか5.4%だった。この値は、デンマーク、エストニア、アイスランドの約70%を大きく下回っている。
元大蔵省職員で現在は与党の政調会長代理を務める木原誠司氏によると、20年前に彼がいた頃は、若い官僚たちが上司の印鑑を求めて書類の山を抱えて走り回っていたという。
「今もほとんど同じことをしている」と木原氏は語る。
ロイター通信