Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 特集
  • アラブの黙示録:ライブ配信されたサウジのホラー映画の内幕

アラブの黙示録:ライブ配信されたサウジのホラー映画の内幕

サウジのホラー映画「Yajuj: The Curse of Iram」(提供)
サウジのホラー映画「Yajuj: The Curse of Iram」(提供)
Short Url:
18 Dec 2020 12:12:22 GMT9
18 Dec 2020 12:12:22 GMT9

シャイスタ・カーン

バンガロール:全世界で7,100万人に感染したパンデミックの怖さが不十分なら、サウジのホラー映画「Yajuj: The Curse of Iram(ヤージュージュ:イラムの呪い)」は死のウイルスが犠牲者を暴力的で人肉を喰うモンスターに変えるパラレルワールドを観客に想像させる。

この長編映画はツーリストのグループを追う。一行はサウジアラビアの「空虚の地(ルブアルハリ砂漠)」で最近発見された埋没都市『 円柱のイラム』へ向かう。その途中で、人々を発狂させ暴徒化する、感染が速い謎のウイルスと遭遇する。

この長編映画は、ツーリストのグループを追いかける。一行はサウジアラビアの「空虚の地(ルブアルハリ砂漠)」で最近発見された埋没都市『 円柱のイラム』へ向かう。(提供)

あるツーリストにとって、これは終わりの時を告げている。ヤージュージュとマージュージュ(キリスト教でゴグとマゴグとしても知られる悪の力)到来の預言が現実のものとなったのだ。ウイルスには科学的原因があると主張するもの、バイオテロリストの攻撃と思うものもいる。彼らの理論に基づき、メンバーは祈り、用心し、黙示録に備える。その後では、ウイルスからだけではなく、戦っている派閥からも自身を守らなくてはならない。間違った判断は死に至るのだ。

ホラージャンルは映画の制作者兼監督のファハミー・ファルハト氏を常に魅了していたが、サウジ文化に関連したアイデアも同氏は探していた。「2012年にサウジのゾンビとバンバイアの台本を数本書きました」と同氏はArab Newsに語る。「でも、このようなキャラクターはアフリカやヨーロッパ文化からのものです。中東固有のジャンルやブランドを創作したかったのです。」

映画製作者兼監督のファハミー・ファルハト氏(提供)

MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルス(MERS-CoV) 大流行中に公衆衛生ビデオを制作するため保健省に雇われた2016年、ファルハト氏はひらめいた。「MERSコロナウイルス(サウジアラビアのヒトコブラクダ由来)を学ぶにつれ、ウイルスのアイデアが私を引き付けました。『現代に黙示録が出現したら、人々はどう反応するのだろう』と考えました。」

ファルハト氏と共同制作者兼ライターのムラド・ オールデン・ アマイレ氏は今年初めから「Yajuj: The Curse of Iram」に取りかかった。創作者が今までに類を見ないものと主張するリリースで、映画は先月末にInstagramでライブ配信さされた。オーソン・ウェルズ「The War of the Worlds(宇宙戦争)」の1938年のCBSラジオ網での生放送にインスピレーションを受け、映画製作者はソーシャルメディアを活用し、主にサウジアラビアの若い観衆に手を伸ばした。

共同製作者兼ライターのムラド・ オールデン・ アマイレ氏(提供)

「視聴者は映画のインスタグラムアカウントに合わせ、そこからあるキャラクター視点から物語を鑑賞できる別アカウントに連れて行かれます」とアマイレ氏は説明する。

視聴者は繰り広げらえる出来事をさまざまな視点を通して同時に見ることができ、俳優とやりとりができる。映画製作者はこのエクスペリエンスを仮想現実やゲームなどのメディアに例える。「キャラクターがウイルスの原因について議論すると、インスタグラムに行き考えられる原因は何と思うかと観客に尋ねるものがいました。」

型破りなメディア向けの脚本執筆には独自の課題もあったとアマイレ氏は言う。「観客には状況と文脈を与えますが、このようなパフォーマンスをアドリブでやるのは俳優の次第です。」

ファハミー・ファルハト氏とフセイン・アバス氏(提供)

映画はアハサーの緑のオアシスからライブ配信した。そのイベント準備は、集中的なキャラクター開発セッションと小集団リハーサルで始まった。劇場経験のあるイムラン・アンジュム博士役の俳優ファイズ・チョーダリー氏は、形式は舞台演劇に非常に似ているが、いくつか異なる場所で撮影せねばならないのでかなり複雑さが増したと語る。ライブイベント後、この種のパフォーマンスには、演技、観客との絡み、環境への没入など、さまざまなスキルセットが必要なことに映画製作者は気づいた。

映画の配役は、劇場、映画、ソーシャルメディアの経歴がある多様な俳優陣だ。しかし、全てのキャスト、クルーメンバーに共通することは、新しくやりがいのあるジャンルにトライする渇望であった。

「全員が何か違うものの一部になりたがっていました。10年前のサウジのステレオタイプから離れることです」とファルハト氏は語る。「今では、この国でアートをする難しさに不満を言うのではなく、やりがいのあるプロジェクトに渇望しています。」

映画の配役は、劇場、映画、ソーシャルメディアの経歴を持つ多様な俳優陣だ。(提供)

双方向リアルタイム通信のストリームは、映画のストーリー展開を決定せず、視聴者にはくつろいでの鑑賞や遊び、さらには啓示録の備えについての1、2の教訓の学習という選択肢が与えられた。

「イベント当日まで、みなピリピリしていました」とファルハト氏は語る。同チームはソ―シャルメディアのトロール(荒らし)を予想していたが、そのリスクは効果を上げ、映画製作者はライブ配信が生み出した関心と没頭のレベルに喜んだ。

ライブ配信は、メインアカウントで約600名の視聴者を集め、ライブ配信から保存されたビデオには平均1,500回の視聴があった。 ライブフィードを見逃した人は、映画のInstagramページ (@yajujfilm)で保存されたビデオを視聴できる。この2時間の映像を編集して、映画祭や動画プラットフォーム向けに間もなくリリースすることを同チームは希望している。

先月末、映画はInstagramでライブ配信された。(提供)

「Yajuj: The Curse of Iram」で生まれたバズ(口コミ)は一度だけのイベントではないことを制作チームでは希望している。同じ黙示録の世界の設定の第1回目を意図しているのだ。同チームは現在ヤージュージュの事件と一致する破局的な一連の出来事が起こる「The Tower of Bab(バベルの塔)」を計画している。第2作は、数千人が住み働く都市郊外で起こるため、その影響は更に大きくなるだろう。

「『Saw(ソー)』や『Lord of the Rings(指輪物語)』のようなシリーズで、サウジと認識できるブランドを思い描いた」とファルハト氏は語った。

特に人気
オススメ

return to top

<