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中東から見たジェンダー平等の進捗

1995年9月、北京の人民大会堂で開催された国連の女性NGOフォーラムのための歓迎セレモニー。このフォーラムが「女性の権利は人権」というフレーズを世に広めた。(AFP)
1995年9月、北京の人民大会堂で開催された国連の女性NGOフォーラムのための歓迎セレモニー。このフォーラムが「女性の権利は人権」というフレーズを世に広めた。(AFP)
03 Dec 2019 11:12:29 GMT9

 

  • 世界は2020年に迎える歴史的な北京宣言25周年を記念する準備を進めている。
  • 国連加盟193ヶ国中、ジェンダー平等な内閣を持つのは15ヶ国未満だという。

 

ジュマナ・カミス

2020年の北京宣言25周年記念に向けて世界が準備を進める中、世界中の政府がジェンダー平等や女性の権利拡大の分野における自国の進捗状況を見直す必要がある。

1995年9月に北京で開催された第4回世界女性会議中に公表され、その後189ヶ国の政府から署名を得たこの文書は、女性の権利を前進させるための歴史的な青写真として認識されている。

北京宣言および行動綱領は、生活の全ての分野における平等な参加から女性を遠ざけてきた体系的な障壁を取り除くことを目的とする。

宣言以降、多くの国が女性のためにハンディをなくすことを奨励する措置を講じてきた。より多くの女性が以前よりも教育を受けられるようになり、女性がリーダーシップの役割に就く可能性も高まっている。女性の政治参加率が高まったとの報告もある。多くの国で女性が労働力の大きな部分を構成し、多数の政府が女性の権利拡大を目指すプログラムに投資してきた。

それでも、女性のための国連プログラムを支援する独立非営利組織「国連ウィメン」米国のアニタ・バティア副事務局長によれば、最近のデータはジェンダー平等の分野における全体的な進捗が「単純に十分ではない」ことを示しているという。

「Time’s Up」や「Me Too」などのよく知られる運動が、「女性の権利の前進に関して(世界を)独り善がりにさせてきた」と、彼女は言う。

最近ドバイで開かれた世界寛容サミットのジェンダーギャップに関するパネルディスカッションに参加したバティアは、北京会議が「女性の権利は人権」というフレーズを世に広めたと指摘した。変化のための明確な枠組である行動綱領は、12の重大な関心分野について公約を示している。

またこの文書は、女性の教育や児童婚などの問題に加え、初めて「ガールチャイルド(女児)」に対する関心も集めた。それが触媒となってより大きな議論を促すことになったものの、活動家たちは進捗状況について、よく言ってもバラバラと感じている。

「現在でも1億3,000万人の女児が学校に通えずにいます」と、バティアは述べた。「年間1,200万人が18歳未満で結婚し、世界の国会議員のうち女性はたった25%しかいません」

政府におけるジェンダー平等の問題に話題が移ると、バティアは世界の国家元首のうち女性はたった6%にすぎず、ジェンダー平等な内閣を持つ国は13ヶ国だけであると指摘した。

「この状況は何かが間違っています」と、バティアは言う。「国連には193ヶ国が加盟しているのに、なぜ2019年においてジェンダー平等な内閣を持つ国が世界に15ヶ国もないのでしょう?人類の50%は女性で構成されているというのに」

バティアは、一部の国では女性の権利の「後退」が見られたと述べた。「非自由主義的民主主義」が女性の活動や言論の自由を抑圧しようとしているためである。「権利が現実に後退しているのを目撃しています。とりわけ性や生殖の権利の後退です」と、彼女は言う。「ジェンダー平等に関する限り、私たちは同じ場所にとどまるために走り続けています」

バティアの意見に、ポッドキャスト「女性が勝利する時」を主催するラナ・ナワスも同調する。同番組は自らを、「世界の女性上司がインスピレーションを得られる話や、専門職に就く女性が成功するのに役立つ実用的なツールを共有する」場所と称する。

ナワスは、過去20年にわたり、特に企業の世界で行われてきた女性の権利に関する議論の結果に「失望」させられたと言う。世界寛容サミットで彼女は、労働力「ピラミッド」の下層の50%は女性から成っている一方で、上層にはたった5%しか入っていないと指摘した。

世界銀行のデータは、世界の労働人口に参加している女性の比率が1990年の51%から、2019年は47.6%に下がったことを示す。また、世界経済フォーラムの報告によれば、労働人口に参加している女性の率が最も低い15カ国中、12の国が中東および北アフリカ(MENA)地域にある。

現在、「ジョン」という名前の男性が経営する大企業の方が、女性がトップを務める企業を合わせた数よりも多いとナワスは述べ、フォーチュン500企業のうち女性が経営するのはたった5%と付け加えた。

ナワスは17年前に企業の世界を離れ、女性の権利擁護に対する自らの情熱に従った。現在は「女性が勝利する時」の主催の他、多国籍企業に対し多様性と包摂性の戦略策定について助言している。

「多様性と包摂性に優れた企業は、業績もより優れたものとなります」と、ナワスは主張する。「そのような企業はチームの連携が57%、社員の定着率が19%向上し、市場シェアが上がる可能性が45%、新たな市場で成功する可能性が70%以上高まるとの報告があります」

ナワスは、女性が出世の階段を上ろうとする際に直面する共通の問題に対し、十分な産休・育休、柔軟な勤務方針、およびパートタイム勤務の選択肢の増加を可能性のある解決策として挙げた。

教育に関する限り、女性に関する状況はやや異なっていると彼女は言う。「以前よりも多くの女性が学位を取得しており、その数は男性よりも女性の方が上回っています」。しかし、そのような成功は全ての教科で見られるわけではない。調査によれば、最近の世界中のコンピューター科学の学位取得者のうち女性はたった19%と、1985年に報告された数字から半減している。

幸いなことに、湾岸会議加盟諸国における特定分野の見通しはずっと明るいと、ナワスは言う。「UAEではコンピューター科学の学位取得者の77%を女性が占め、サウジアラビアではSTEM(科学・技術・工学・数学)科目学位取得者の55%が女性です」

湾岸諸国にとってのより大きな課題は、女性に高い教育を受けさせるだけでなく、労働人口に参加させることである。調査によれば、MENA地域における労働人口のうち女性が占める割合はたった26%と、「世界平均の半分未満」である。

その主な要因は「文化的障壁」であることをナワスは示唆し、エジプト人女性の75%が結婚後も夫と同じように家の外で働く権利を持つべきと考えている一方で、それに同意する男性は31%しかいないことを示す国連の調査を引き合いに出した。

ナワスが言及したヨルダンのブルックリン研究所による別の調査では、女性が働くことに関する同国男性の意見は、その父親たちよりも保守的であることが分かった。

「それらの文化的障壁を克服するためには、私たちの地域の政府の役割が特に重要です。立法によって、法律に文化をリセットする役割を果たさせるのです」と、彼女は言う。

バティアとしては、北京宣言25周年をきっかけに始まったキャンペーン「ジェネレーション平等」を特に称賛する。国連ウィメンとメキシコおよびフランスの政府が主催する「ジェネレーション平等」は、「平等な未来のための平等な権利」の目標に向けた前進のペースを加速させることを目指している。

取り組んでいくことになる問題には、セクシャルハラスメント、平等な賃金、無報酬介護および家事の平等な分担、経済的・政治的生活における平等な参加が含まれる。

「第5次産業革命やデジタル革命によってもたらされた新たな問題にも注目し、それらが今日の世界中の女性や少女にどのような影響を与えているか確認する必要があります」と、バティアは付け加えた。

彼女は未来に目を向け、2020年3月に国連女性の地位委員会(UNCSW)、続いて9月に国連総会が開催される際に、活動家は再び主導権を握ることができると述べた。

活動家たちは北京行動綱領が25年近くも指導とインスピレーションの強力な源であり続けていることに同意する一方で、バティアやその他の多くの者たちは、ジェンダー平等を実現する全体としての意志には新たな切迫感が必要であると信じている。

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