
東京:黒澤明監督の映画『乱』で米アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した日本人衣装デザイナー、ワダエミさんが亡くなっていたと日曜日に日本のメディアが報じた。84歳だった。
関係者によると、ワダさんは11月13日に亡くなっていたという。死因は明らかにされていない。
ウィリアム・シェイクスピアの『リア王』に発想を得て、血なまぐさい陰謀と裏切りを描いた1985年の映画『乱』で、ワダさんは侍の衣装を手掛け、一躍注目を集めた。
1986年に米アカデミー賞を受賞した際は、オスカー像を手に「これには衣装は必要ないようです」とほほ笑んだ。
またワダさんは、大島渚やチャン・イーモウなど評判の高い映画監督の作品だけでなく、演劇やオペラなどの衣装も手掛けた。
衣装を担当してもらった経験がある演出家の宮本亜門さんはワダさんへ称賛を表した。
「あなたほど完璧さと本物を追求した人を私は他に知りません」と自身のフェイスブックに投稿した。
「あなたと一緒に作品を造ることができたことは一生忘れることができない私の誇りです」と付け加えた。
ワダさんは古都京都生まれ。自身によると、竹や木でできた建物や石庭がいたるところに見られる京都の街が、美的センスに影響を与えたという。
また、衣装の素材のテクスチャーを際立たせることに力を入れた。日本の美意識を大切にし、京都伝統の職人技を保存しようと、しばしば豪華な衣装に取り入れていた。
夫は演出家の和田勉さん(2011年死去)。結婚はワダさんが20歳の時。ワダさんが衣装の仕事を始めるのを夫が手伝った。
「60年以上飽きもせず、仕事がずっと続いています。これは私にとって本当にラッキーなことなんです」。ワダさんは2017年、東京国際映画祭へのビデオメッセージの中でこう語った。
2020年、ベネチア国際映画祭でプレミア上映されたアン・ホイ監督の『第一炉香(Love After Love)』の衣装を手掛けた。
葬儀は近親者で行なわれた。
AP通信