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今後10年にわたり様々な機会がアラブ諸国を待ち構えている

経済大国としての中国の台頭が投資の拡大を通じて中東に戦略的優位性をもたらした。アナリストたちはこの地域がアフリカ、ヨーロッパ、アジアの架け橋としての歴史的役割に復帰すると予想している。 (シャッターストック)
経済大国としての中国の台頭が投資の拡大を通じて中東に戦略的優位性をもたらした。アナリストたちはこの地域がアフリカ、ヨーロッパ、アジアの架け橋としての歴史的役割に復帰すると予想している。 (シャッターストック)
メッカとメディナを結ぶ160億ドルの高速鉄道は、テクノロジーがスマートシティの台頭を促進するものであり、「モビリティ産業」における大きな変化を浮き彫りにする事業である。(AFP)
メッカとメディナを結ぶ160億ドルの高速鉄道は、テクノロジーがスマートシティの台頭を促進するものであり、「モビリティ産業」における大きな変化を浮き彫りにする事業である。(AFP)
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28 Dec 2019 04:12:19 GMT9
28 Dec 2019 04:12:19 GMT9

カリーン・マレック

アブダビ:中国の台頭からスマートシティの必要性に至るまで、中東は将来何が起ころうとも恩恵を享受できるポジションにある、とアブダビで最近開催された地域初のSALT会議に出席した数々の専門家が述べた。

こうした専門家らの評決は、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・アブドゥラ・アル・ゲルガウィ閣僚会議・未来省大臣が今月初め、ドバイのアラブ戦略フォーラムで行ったオープニングスピーチでの発言とも一致するものだ。アル・ゲルガウィ氏はここで「明るい未来」の可能性について語っている。ただし、アラブ諸国が今後やって来る機会を活用できるならば、という条件付きだが。

「我々の地域は依然として戦略的重要性が増しており、人材の大きな潜在能力も秘められている」とアル・ゲルガウィ氏は述べ、アラブでは今後10年間に1億人以上の若者が労働市場に参入すると見込まれているとした。

データやシナリオに基づいた戦略的グローバルアドバイザリー会社「FutureMap」のマネージングパートナーを務めるパラグ・カンナ氏は、アジア成長物語の文脈においての中東の見通しを語るにあたり、「西アジア」という用語を用いて説明している。

「パキスタンやインドといった西アジアの国々がほんの5パーセント成長しただけでも、これらすべてを合わせたGDPは、10年以内には中国の現在のGDPと同じになるでしょう」とカンナ氏は言った。

アジアの金融成長と改革を促進する主な要因として、カンナ氏は、貯蓄と消費、現地通貨の流動性、資本勘定の自由化、購買力平価といった要因を特定する。

「アジアは、経済および構造改革において正しいことを数多く行ってきました。日本と韓国がすでに行ったこと、そして中国はそれを資本勘定でやっていますから、多くの国々が自分たちも同じことをやり、国際収支をやり繰りしたいと思っているわけです。この模倣効果は今後も引き続き展開していくことでしょう」と氏は付け加えた。

「私たちは現在、北米、ヨーロッパ、アジアが非常に重要な柱となっている三極経済の世界に生きています」

「人の流動性と資本の流動性の増加は、密接に関連しています。中国は過去15年間にインフラストラクチャーに対するアウトバウンド投資(のペース)を加速させました」

「中国のアウトバウンド投資の恩恵を最も受けた地域は、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、東アジア、そして中東および北アフリカ、すなわちサウジアラビア、UAE、エジプトです」とカンナ氏は言った。

中国の「一帯一路(One Belt One Road=OBOR)」イニシアチブに言及したカンナ氏は、同イニシアチブに表されるトレンドは不可逆的であるとし、「シルクロード」精神において一心同体的だった地域は、何としてでも繋がりを復活させようと努力を続けるだろうと付け加えた。

「UAEとアブダビの地理的観点からいえば、歴史家が古代シルクロードや植民地時代以前の世界について語るとき、(私たちは)アフロ・ユーラシア大陸について話します」とカンナ氏は付け加えた。「アフリカとヨーロッパとアジアを含む大陸です。16世紀の世界はアフロ・ユーラシアでした」

「今日起こっていることは、このアフロ・ユーラシア大陸のシステムの復活です。ですから、UAEに拠点を置くのに今ほど良いときはありません。人口構成的にも経済的にも非常に重要なこの3地域をつなぐ橋渡し役となる方法を多方面から検討するのに最適な場所とタイミングなのです」

将来に焦点を当てたアラブ戦略フォーラムでの発言のなかで、アル・ゲルガウィ氏はさらに、(アラブ)諸国の方向性という重要な問題も提起した。

厳密に都市開発の観点からみれば、その答えはスマートシティにある。

概念的にいえば、スマートシティは情報通信技術とモノのインターネット(IoT)ネットワークに接続されたさまざまな物理的デバイスを統合して、各種の運用およびサービスの効率を最適化し、市民とコネクトする。

近年、小売および娯楽部門のオンラインへの移行、気候変動、高齢化社会、都市人口の増加、財政への圧力といった技術的、経済的、環境的変化と歩調を合わせるかのように、スマートシティへの関心も高まってきた。

プラグアンドプレイ・スマートシティのディレクターであるトーマス・バルダウィル氏によると、2050年までには世界人口の60%(55億人)が都市に住むことになると予想されるため、スマートシティへの段階的な移行は避けられないという。

しかし、現在のような都市づくりのやり方では、交通量や汚染、不動産価格といった現存する問題に見られるように、都市は「持続不可能」なものになるとバルダウィル氏は述べた。「かっこよさそうだからスマートシティに移行するのではありません。必要だから移行するのです」

バルダウィル氏は、SALT会議の際に行われたアラブニュースとのインタビューのなかで、インフラストラクチャがもうすでに築き上げられているヨーロッパではスマートシティ開発に関してはあまり期待できない、だが中東には未使用の土地が広大にあるため、将来有望だと語った。

したがって、サウジアラビアやUAEを含む湾岸協力理事会(GCC)地域の都市に最初のスマートシティが台頭するのではないかと氏は予想する。このほか、「有望な」作業が現在進行中の中国も有力候補だ。

バルダウィル氏は、スマートシティの発展に不可欠であり、自らもスマートシティのバリューチェーンの一部として密接に連携する3つの産業として、モビリティ、エネルギー、不動産を挙げた。

「モビリティ産業には大きな変化があり、新世代の若者は自動車を所有したいとはもはや思っていないようです。そのためモビリティは、特に自動車メーカーにとって、モビリティ産業に大きな混乱をもたらすサービスと見なされています」

「モビリティとはもはや自動車を生産することではありません。むしろ、可能な限り最も効率的な方法で車を移動させる方法が大事になってくるのです」とバルダウィル氏は付け加えた。

エネルギーに関する限り、業界では現在革命が起こっており、バルダウィル氏は次のように述べている。「今日、1キロワットの再生可能エネルギーを生産するには、従来のエネルギー源で生産するのと同じくらいの費用がかかります。太陽や風力を利用すれば、再生可能エネルギー生産の限界費用はゼロに近づきます」

「ですから、誰もがグリーンエネルギーを自分で生産し、そのエネルギーをネットワークと共有することになると予想されます。オフグリッドでエネルギーが売買されるようになるのです」

「一言で言えば、垂直統合されたこれらすべての電気会社や、市民の連結を妨げていたすべての仲買人をバイパスすることになるのです。これが我々言うところの『パワートゥーザピープル(民衆へ力を)』ということなのです」

持続可能性の影響を受け、人々のライフスタイルも進化したため、不動産といった産業もそれに追随する必要があるとバルダウィル氏は付け加えた。さらに、イノベーションのおかげで人間とのやり取りが減り、コミュニティを中心とした新技術や複合用途ビルが定着することになると氏は予想している。

「我々はイノベーションのためにエコシステムを構築するのです。すべてのプレイヤーを集結させ、コネクトし、情報やベストプラクティスを提供します。なぜなら、結局のところ、知識がすべてだからです」

「スタートアップ、政府、規制当局、企業が必要となりますが、大事なのはチームとして行うことです。ネットワークがすべてなのです」

バルダウィル氏は、木材を使用した、より効率的で、耐性があり、持続可能で安全な建物の建設がすぐに現実のものになると指摘した。

「私たちは実際に木材をスマートにできるテクノロジースタートアップに取り組んでいます」と氏は言った。「スマートシティとは、人々の幸福を損なうことなく、効率的で持続可能で、人口の増加に適応できるように、徹底的に考えられた都市なのです」

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